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Ed1 エドワード=フィックス

物資の搬入の立合いの為に港町ニールに訪れていた。

私の名はエドワード=フィックス

フィックス領を治めている。

こうしてちょくちょく他の領地に足を踏み入れて立合いしてるのは、我が国を安定させる為だ。



この大陸では、いろいろな資源が失われた。

ラフラカがもたらした精霊大戦の傷跡が今でも根強く残っているからだ。

このユピテル大陸は崩壊こそ免れたがそれでも酷いもんだった。

あの戦いは、この大陸の大地を引き裂き、地形を歪め、水を汚染し、緑を蝕んだ。



結果、様々な資源が失われる。

しまいには、この大陸から魔法が消えてしまう有様。

魔法は戦争に使われはしたが、本来は生活を豊かにする為に生まれた。

だが、肝心な時に失われてしまったのだ。

資源は無く、魔法で代用する事も叶わない状況である。



それでも人々は懸命に生きていた。

私も一国の王として、国民を守る義務がある。

そんな私を支えてくれると言ってくれた弟アルフォードは半年前から帰って来ない。

まぁあいつの事だ、引き裂けられた大地に挟まれようと、自らの肉体で身を守っているだろうから心配はしていない……。



話は変わるが港町ニールのワインは格別だ。立会いが終わると必ず酒場に寄り、ワインを嗜む。


「エドワードさん、また来てくれたのですね。いつもありがとうございます」


ウェイトレスのレディはにこやかにワインを運んで来てくれた。


「いや、君みたいな美しいレディがいたら毎日でも来たくなるよ」


いつものように返す。

レディが目の前にいたら口説くのは礼儀である。


「エドワードさんったら相変わらずお上手ですね」


初めて会った時は初々しかったのに、今では普通に返されてしまう。

それが少し寂しい。



「また殺られたらしいぜ」

「マジでぇ?」


とその時、隣のテーブル席で物騒な話が聞こえて来た。

それが耳に入ったウェイトレスのレディの表情が曇る。


「最近多いんですよ」

「何かあったのかい?」


私は聞いてみる事にした。


「最近魔物が活性化しているようなのですよ」

「魔物が?」

「はい。特に北の洞窟から来る魔物達が」

「北?」


はて、そんな所に洞窟なんてあっただろうか……。


「最近浮上して来たのです」


ウェイトレスのレディが説明してくれた。

なるほど…浮上したのか。

私は胸中納得した。

半年前から島や、洞窟等が沈没したり、または浮上したりと変わった現象が起きるようになったからだ。

挿絵(By みてみん)

「その洞窟から来る魔物が狂暴化してると?」

「ええ」


ウェイトレスのレディが暗い顔で答える。


「恐らく…それらを束ねる魔物が、その洞窟に潜んでいるな」


私はそう推測した。


「はい。この町の者もそう読んでます。ですから今、その魔物に懸賞金が懸けられているのですよ」

「わかりました」


私は残りのワインを一気に飲み干し立ち上がった。



「エドワードさん…まさか!?」

「そのような魔物を野放しにするわけには行きませんからね」


お代をテーブルに置き、酒場の出口に向かった。


「一人で行くなんて危険です。せめて…・・・」


「ち、ち、ち……」


ウェイトレスのレディの言葉を遮り、指を立てて左右に振った。


「レディにそのような辛い顔をさせる輩は、断じて許しませんよ」

「え!?」


ウェイトレスのレディが言葉を詰まらせてる内に私は外に出た。

あのような暗い顔をしたレディを見てるのは気が引ける。



ウェイトレスのレディは恐らくせめて複数で行った方が良いと言おうとしたんだろうな……。

だが魔物退治だけなら私一人で十分だ。

魔物など所詮ラフラカが狂化させられていたに過ぎない。

そう……ラフラカが自然の動物を魔物に変えたのだ。

ラフラカが倒れた今でも、人を襲い続けている。



仲間がいたといえ、精霊王を吸収したラフラカを退けた私にそんな魔物など恐るるに足りん。

ちなみに精霊王とは、精霊達を統べる王だ。

従って魔物退治だけ(・・)なら私一人で問題無い。

ただ気掛かりなのは……。










・・・・・・・


「やっぱりこういうのがあったか」


おでこに手を当て、頭を抱えた。

私はどっかの冒険家ではないのだぞ……。

仕方無い。

戻って誰か手伝ってくれる人を探そう。


「は~」


私は溜息を一つ溢し、出口を目指す。



出口の近くまで行くと、一人の男が此方に向かって来た。


「やぁ…君も魔物退治かい?」


右手を挙げて軽い挨拶をすると男は思わぬ言葉を返してきた。


「……エド」

「ん?何故私の名を?」

「いや……フィックスの王だからな」


有名だからと言いたい様子だが、目を反らしてるし何か動揺している感じだ。

そもそもこの男はエドワードではなく私をエド(・・)と呼んだ。

親しい間柄でなくては呼ばれない愛称だ。

そして私は確かに一国の王だが顔が漏れているわけではない。

従って彼の挙動や言動は何かやましい事があるように思えた。



「ははは……それは私も有名になったものだな」


深く詮索せずおどけた言葉で返し、直ぐ真顔に戻し、先程の問いを繰り返す。


「それで、君も魔物退治で来たのかい?」

「……ああ」


随分無口だな。

まぁそれでも腕立つ……気がする。

感だけど。


「じゃあ一緒に行かないかい?」

「……それは俺を雇うという事か?」

「はぁ!?」


心の底から呆れてしまった……。

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