ダームエル
「くくく……見てたぜ」
家の外に出ると俺より5歳くらい上の男が笑っていた。
玄関を開けていたので見られていたのだろう。
まあ気付いていたけど害はなかったので無視していた。
「なあお前さん俺と組まないか?」
「どういう意味だ?組むって何だ?」
そんな言葉知らない。
「お前さんさっきの話から察するに捨てられて常識……いや、いろいろな事を知らずに生きて来たんじゃないか?」
「そうかもな。俺は5歳の時に森に置き去りにされ、5年かけてやっと帰って来たしな」
「なら俺がいろいろ教えてやるぜ」
俺は無言でナイフを向けた。
「待った待った。いきなりそんな事言われても信用できないってんだろ?」
「だったら?」
「まずは銀行を教えてやる。今奪った金を置いておける場所だ。そうすればお前は俺に取られる物がないから損はしないだろ?」
「……命」
「いらねーよ。お前さんを殺して何の特になるんだ?」
「わかった。じゃあ教えてくれ」
こうして俺はこの男に着いて行く事にした。
男はまず服を買って来た。
「盗んだのか?」
「お前さんと一緒にするな。金さえあれば大抵の物は買える。これは俺からプレゼントだ」
「何の?俺の誕生日はとっくに過ぎてる」
「何でも良いよ。俺達の出会い記念とかで。それより早く着替えな。返り血がひでぇぞ。これじゃあ銀行に行けないぞ」
「わかった」
言われた通り着替えて、銀行に案内して貰った。
さっき足と腕を斬り裂いたナニカから貰ったお金を預ける。
「そのカード……えっと銀行で貰った四角い板無くすなよ?」
俺にわかるように話してくれるのはありがたい。
さっきも常識とか意味のわからない言葉を言っていたが言い直してくれたし。
「わかった」
「それがあればお金をおろせる……返して貰える。で、例えば俺がそれを盗んでもお金は手に入らないから安心しろ」
「ああ」
「じゃあメシでも食いに行こう。これも盗むじゃないからな?今回は俺が出してやる」
「今回は?」
「次回があるならお前さんも出してくれって意味だ。勿論俺が気に入らないなら今回限りでも良いぜ」
「そうか」
で、俺はこの男に連れられ、食堂に入った。
「森に置き去りなったって言ってたが、どうやって帰って来たんだ?いろいろ教えるにもお前さんがどこまで知ってるか知りたいからな」
ご飯を食べながら語った。
「……だいぶ偏ってるな」
ポツリそう漏らす。
「で、さっき組まないかって言ったけど、つまり一緒に仕事しないかって事だ。どうだ?」
「必要無い。今まで一人で問題なかった」
「かもな。でも毎回危険だろ?」
「気にしない」
「例えば毎回毎回追われたり危険があるのと、1回だけ危険な事しただけで1週間はメシ食えるとしたらどっちが良い?」
「1回だな」
「だろ?」
だけどその為に、この見知らぬ男と仕事をするのか?
「それに町を追い出されたのだろ?そのうちどこの町にも入れなくなるぞ?良いのかそれで?」
「良くない」
「だろ?まあ試しに一度やってみようぜ」
「一度だけな」
一度だけなら悪くないっか。
「よし決まりだ。俺はダームエル。お前さんは?」
「アークス=アローラ」
「じゃあアークス。最初に言っておく。もう殺しや盗みはするな。その場だけは良いがあとでめんどうになる」
「わかった」
「仕事では殺しや盗みをしたりするが、さっき言った通り1週間はメシ食えたりするから毎回毎回しなくて良いぞ」
「ああ」
「そんじゃメシ食ったらお前の武器を見繕ってやる」
武器?
「いるのか?」
「そりゃ仕事によっては殺しとかあるからな。アークスはナイフで毎回殺すのか?」
「問題無い」
「まあお前さんの腕なら問題ないかもな。でも覚えておきな。仕事するなら、それに見合うものを先に用意するものだ」
「そういうものか」
「そういうものだ」
そうして俺は今度は武器屋に連れて行かれた。
とりあえず言う事聞いておくが、こいつ何考えてるんだ?
俺のようなガキを連れ回して仕事も一緒にするとか言ってるし。
警戒しておくに越した事はないな。
「お前さんは俺の直感だが小太刀が良さそうだ。森で気配察知を身に着け、逃げる為に俊敏さを身に着けた。きっと小太刀を活かせるだろう」
「何故2本?」
「予備にしても良いし、二刀流にしても良い。好きにしな」
「二刀流?何だそれ?」
「右手と左手両方に1本づつ持つんだ」
ダームエルはいろいろ教えてくれた。
最初に言ってた常識というのを教えてくれるらしい。
「で、仕事は?」
「俺の護衛?」
「護衛って何だ?」
「俺を守れば良いんだよ」
「ダームエルは剣が腰にあるが使えないのか?」
「使えるが、たぶんアークスより弱い」
「そうか」
「で、今日の夜、とある貴族の屋敷に忍び込む」
貴族?忍び込む?
またわからない言葉だ。
つまり金持ってる人の家に無断でこっそり入って行ってお金を盗むらしい。
その時に危険があれば俺はダームエルを守る仕事らしい。
「夜中の仕事だが眠くなったりしないか?」
「問題無い。今まで寝ない時もあった」
「OK……って、わかったって意味な。じゃあ今晩俺達の初仕事だ」
そうして貴族の屋敷とたやらに忍び込んだ。
「待て」
「どうしたアークス?」
「そっちの方角から誰か近付いて来てる。殺すか?」
「凄いなお前さん。殺すの最終手段だ。なるべく見つからないように盗み出す。もしどうしても殺さないと盗めない時は殺すという事で」
「わかった」
金庫……お金が大量に入ってる箱らしい。
そうして俺の気配察知を利用し、人に見つからず金庫がある部屋に来た。
「これ開けるのに時間がかかる。人が来たら教えてくれ」
「わかった」
ダームエルが金庫とやらをカチカチ動かし始めた。
「来た」
「まだ時間かかるな。殺してくれ。なるべく相手に騒がれる前にやってくれ」
「わかった」
プッシューンっ!
言われた通り、その部屋に来た者が部屋に入った瞬間死角から首を斬り裂いた。
「アークス凄いな。本当に有無言わさずやっちまうとは」
「有無?」
「一言も喋らせないで……じゃあその調子で頼む。こっちはもう直ぐ終わる」
「わかった」
その後、二人程殺した。
「よし!終わった。アークス逃げるぞ。なるべく人と会わないルート……えっと道を辿って外に出てくれ」
「わかった」
言われた通りそそくさと気配がしない方へ走った。
「ちょっと待てっ!」
だけど止められた。
「なんだ?」
「あくまでアークスは俺の護衛な。俺より速く行ったらダメだ。俺に合わせて走れ」
「わかった」
そうして俺達は屋敷から出た。
そしてダームエルは真っ直ぐロータスの町の宿屋に向かう。
「よし!今日の稼ぎは……」
ダームエルが盗み出したのを調べ出した。
キラキラ光る石とかゴロゴロある。
何だこれ?
「換金すれば20000Gだな」
「換金?」
「この宝石……石だな。この石をお金に変える事だ」
「そうか」
「じゃ半分分け前な。本来は換金してから山分けだが、今回は俺が先に払っておく」
10000G渡された。
「今日はやりやすかったぜ。アークスは気配察知が凄い上に殺すのも一瞬だったな」
「いやこの小太刀ってのが扱いやすかった」
「そりゃあ俺の直感もなかなかだったって事だな。で、どうする?これからも俺と組むか?」
「組む……一緒に仕事するかって事か?」
「そうそう」
「ああ……またいろいろ教えてくれるなら頼む」
「それは任しておけ。お前のクソったれな親が教えなきゃいけなかったのは教えて行くつもりだ」
こうして俺はダームエルと組む事になった。
やがて相棒と呼べる存在となり長年連れ添った……。
地図は参考程度の物です




