N3 ナターシャという女
やっとヒロインの番が来ました
ここまで長かった気がします
ヒロインなのに出番がない(笑)
あたいは失敗した。
失敗した。
失敗した。
失敗した。
失敗した。
失敗した。
失敗した。
何故あの時、手を離してしまったのだろう……。
……あたいはまた失敗した。
あたいにも昔、婚約者がいた。
精霊大戦が起きる何年も前。
まだあっちこっちに町や村があり自然があった。
今は亡き町の領主の子と恋仲になり、将来を約束した。
……なのにあたいは裏切った。
最初は些細な嫌がらせ、やっかみ、妬み。
町の女達から領主の子と付き合ってるのを良しに思われていなかった。
最初は些細なイタズラ。
だけどそのうち、その領主の子の良からぬ噂を流される。
あたいと引き離そうと画策されたんだ。
……でもあたいは彼を信じれなかった。
あたいはその噂を信じ彼から離れた。
彼の手を最後まで取らなかった。
結果、彼は悲観し町を出て行った。
そして跡取りがいなくなったその町は潰れた。
その直前に真相を知った。
……もう遅過ぎた。
それからあたいは人を信用できなくなった。
町から離れた海辺に一軒の家を建て暮らす。
たまに親から受け継いだ薬剤知識を活かし生活していけるギリギリのお金を稼ぐ。
そう世間一般的に見ればあたいは変わり者さ。
そして何年もそう過ごしていたら出会った。
……アークに。
だけどまたあたいは繰り返す。
最後まで信用しなかった。
最後まで手を取らなかった。
最後まで抱きしめていなかった。
……あたいはまた失敗した。
確かにアークはダークと名乗った。
でも、それはあたいをただ引き離す為だけのもの。
もしかしたらまた暗殺者に戻るつもりだったのかもしれない。
そんな危険な事にあたいを巻き込めない。
そう思ったのかもしれない。
だってアークはあんなにも……。
アークが暗殺者をしたいならやらせれば良い。
それは手を離す理由にならない。
もう殺しをさせたくないのであればさせなければ良い。
それは最後まで信用しない理由にはならない。
それにアークはきっと暗殺が好きってわけじゃない。
だってアークはあんなにも……。
だから今度という今度こそ失敗しない。
次捕まえたら絶対離さない。
それがあたいって女さ。
そうなったらまずは情報収集だ。
アークの足取りを必ず掴んでやる。
そうしてあたいはエド城までやって来た。
「アークまたはダークと名乗る者がこの城に来ませんでしたか?」
門番をしている兵に声をかけた。
「仮に来ていたとしても個人情報なのでお伝えできません」
そうなるか。
次はどうやって情報を集めるかあたいはその場で逡巡した。
そしてたら野生的な恰好をした人が城を訪れていた。
「これはガッシュ殿ではないですか?国務大臣に御用ですか?」
野生的な恰好をしてる人に恭しくしてる。
「ござるござる。ござるにあいにきた」
話し方まで野生的ね。
「しばしお待ちを」
門番の兵が城へ引っ込む。
そして野生的な人があたいを見る。
「……スンスン」
匂い嗅がれている?
あたいって臭いかな?
「おまえ、ダークのにおいするにおいする」
えっ!?
まさか……。
「アー、いえダークを知っているの?」
「しってるしってる」
「詳しく教えて」
「待たせたでござる」
とそこに侍風の男が現れる。
彼が国務大臣だろうか。
「ござるござる」
「ガッシュ殿、今日は如何したのでござる?」
「サラというおんなここにあんないした。そのついでにきたぞござる」
「サラという者が誰か知らぬでござるがそうであったか……ところでこの御仁は?」
あたいに視線を向けて来た。
「ダークのにおいするにおいする」
「ダーク殿のお知り合いでござるか。拙者はムサシ=ガーランドでござる」
「えっ!?え、あたいはナターシャ=プリズン」
急な展開にビックリ。
「してナターシャ殿は何故こちらに?」
「ダークを探してる。居場所知っているなら教えて」
「ロクリスを紹介したでござるから、そっちには向かったと思うでござるがそれ以降はわからぬせござる。力になれず申し訳ないでござる」
ロクリス?
世界を股にかけるトレジャーハンターだったわね。
「たぶんエドのとこだぞエドのとこだぞ」
ガッシュと呼ばれた野生的な人がなんか言ってる?
エド?
「エドってここよね?」
「エドワード国王の事でござるよ」
ムサシが補足してくれた。
「じゃあフィックス領?」
「だが何故わかるのでござるか?ガッシュ殿」
「まものまほうつかったまほうつかった」
「なんとそれ本当でござるか?」
ムサシが慌ててる。
確かにそれが本当になら大変……なのか?
再び魔法が使えれば暮らしが豊かになるのでは?
「ほんとほんと。サラをあんないしたついでにそれいいにきたいいにきた」
「なるほどでござる。ダーク殿もそれに気付いていればエド殿とこへ向かっているでござるな」
「魔物が魔法を使うと何故ダークはフィックス城にいる事になるんだい?」
「ダーク殿がラフラカを倒した11人の1人でエド殿もまたその1人だからでござる」
え?やっぱりアークが11人の勇者の1人だったの?
「だからあんな大怪我をしていたのね」
「ん?ナターシャ殿でござるか?ダーク殿の治療したのは」
「え?ええ、あたいよ。でも何で知ってるんだい?」
「1年治療をしていたとダーク殿から聞いていたでござる」
このムサシとアークは昔馴染みか何か?
いやもしかしたらガッシュも含め11人の勇者なのかも?
「それよりも由々しき事態でござる。拙者もできればフィックス城に行きたいでござる」
「何が深刻なんだい?」
「魔法が復活したって事は、またラフラカみたいなのが利用してる可能性があるでござる。また精霊大戦が起きるかもでござる」
それは由々しき事態ね。
「なら行きましょう。あたいも案内してもらいたい。フィックス領には行った事はないんでねぇ」
「そうしたいのは山々でござるが拙者は腰を壊してあまり動けぬでござる」
「それならあたいに見せな。あたいはこれでも薬師よ」
「それは有難い。可能なら治療薬を作ってくれぬでござるか?お金は払うし、効き目があればエド殿のとこへ案内するでござる」
こうしてムサシの腰を診察して薬を調合した。
魔法が復活してるってなら薬にあたいの魔力を混ぜれば効果倍増。
ってわけで本人に言わなかったが魔力を混ぜた。
その甲斐あって効果覿面。
あたいとムサシとガッシュはフィックス城を目指す。
そしてやっと会えた……。
「……アークやっと会えた」
「……ナターシャ」
思わずあたいとした事が涙を流してしまったよ。
「何故来た?」
だけど冷たく言われる。
「あんたに会いたかったからじゃいけない?」
「おい、ダーク。この奇麗な人誰だよ?お前も隅に置けないな」
バンナナの男がニヤニヤしながらアークをつつく。
照れるじゃないかい。
そんな事あたいの前でやられたら。
「黙れっ!!」
「「「「「「「「「「っ!?」」」」」」」」」」」
アークが怒鳴った。
初めてみた。
皆も似たような感じなのかな?
皆驚いている。
「……エド」
「え?……ん?あ、何だ?」
エドと呼ばれた人。
この人が国王かな?
国王がたじろんでる。
「……客間を借りる。進展があったら教えてくれ」
「ああ、わかった……だが良いのか?」
国王があたいに視線を向けて来た。
しかしアークは何も言わず、あたいの脇を抜けて王間から出て行ってしまった……。




