A10 2人のアーク
俺が北の砦に戻って来るとカルラ城奪還の作戦が開始しようとしていた。
それまでは小競り合いが続いていたが、次こそは取り返すらしい。
その調度良いタイミングで俺が帰った来たのだ。
作戦としては単純で陽動部隊が派手に暴れている間に少数精鋭でカルラ城に乗り込むらしい。
俺は陽動部隊の方へ配属される。
そして作戦を聞いた翌日、俺は陽動部隊として出撃した。
そこで再び奴と出会ってしまった。
師匠と同じ威圧感を感じ、俺と同じ灰色髪の男に……。
俺は真っ先にそいつに飛び掛かった。
おそらくこいつは強い。
だから俺が抑える。
その間にカルラ城を奪還してくれよ……。
「よー。また会ったな」
最初の一合の剣を合わせて語り掛けた。
「沙耶をやった奴か」
仲間が殺られたというのに淡々と言いやがる。
まるでつまらなそうに……。
感情抑制の訓練でもしているのだろうか?
まぁどっちにしろやる事は同じ。
2撃目を繰り出す為に剣を引き……一閃!
「おっと」
俺の横一文字……とは言え曲線を描いているので真っ直ぐというわけではない。
それをギリギリ防いできた。
剣の腕はさほどでもないようだな。
なら、連続で繰り出すだけ。
師匠のように全て曲線をで繰り出す事はできなくても、スピードで早々遅れを取られる事はない。
上段から繰り出す3撃目……。
スっ!
半歩下がられギリギリのとこで躱された。
俺は踏み込みつつ返しの刃で下段から攻撃。
今度は左に半歩移動し躱される。
こいつ速い。
剣の腕は大した事ないが足捌きが尋常じゃない。
おそらくまだ全力じゃない。
なら……。
『ファイ』
炎系初級魔法で剣を燃やす。
相手が驚きに目を見開く。
仮に躱されたとしても火花が飛び、多少のダメージが通るだろう……。
おそらくそれを相手も感じ取ったのだろう。
『ブリザー』
何っ!?
相手の剣が氷を纏う。
ブリザーとは何か知らないが、おそらく氷系初級魔法と同等の魔法だろう……。
こいつも魔法剣が使えるのか。
それでこいつ驚いたのか。
俺と同じように、こいつも魔法剣を使えるのか、と。
「はっ!」
剣を打ち合う。
ジュ~。
炎と氷がぶつかり水蒸気が少し上がる。
俺はバックステップを踏み、様子を伺う。
良い足が持ってるし突っ込んで来るか?
え? 来ない?
氷を纏った剣を構えているだけだ。
何故だ?
足の速さで翻弄して来ないのか?
何かを狙っているのか?
「俺はアーク。お前の名前を聞かせてくれ」
奴が驚き目を見開き、口が大きく開く。
「な、に?」
「どうした?」
「いや、俺もアークだ」
そうか。
こいつもアークというのか。
それは驚くな。
俺も驚いていた。




