L7 また帰って来るから
「それにさ~ルティナはまだ良いよ。精霊って誰もが知ってる存在だし」
私が泣き止むを待ちミクの口を開く。
「あたしの大陸なんてさぁ機械人と呼ばれる機械で出来た竜に変身する人がいたんだ。目が真っ赤で……あれは怖かったなぁ。伝承でそんなのがいたって知ってたけど生き残りがいたとはねぇ~」
この娘がいた大陸って一体……。
「……機械人?」
聞き返しながら、サインした色紙とペンをミクに渡した。
「ありがとう♪いや~良いおみやげができた」
ミクが満面な笑顔で受け取る。
「……っとそう機械人。私の大陸にそんなのがいたの。他に草人とか剣人族とか変わったのが色々いたな。それに比べ、ルティナは精霊というわかりやすいものだし」
「……そうなんだ」
もうなんて返して良いのやら。
「でも良かったね♪魔導の力が戻って」
「ううん」
私は首を横に振る。
「ほへ?」
「魔導の力が戻ったという事は、そうなった原因がある筈よ。それが自然現象なら良い。でも、悪意ある誰かの仕業なら……」
顔が強張る。
それに気付いたミクも真剣な顔に変わった。
「どうするの?」
「原因を探り、場合によっては、それを叩くっ!」
力強く発し、家の方に視線を移す。
「皆!ごめん。私また行くね」
ディールとカタリーヌ、そして子供達に言う。
「また…戻って来るよね?」
子供の一人が哀しそうな眼差し言って来た。
「もちろん!」
にんまり笑う。
だってここは私の帰るべき家で私の居場所だから。
「わかった。いってらっしゃい」
「いってらっしゃい」
「早く帰って来てね」
子供達が次々にそう言ってくれる。
大丈夫よ。
貴方達がいる限り絶対帰って来るから。
「ルティナが留守の間、子供達は俺が守るから……頑張れよ」
とディール。
「頑張ってね」
とカタリーヌも続く。
「うん!……それとここは危険だからパラリアに行きましょう」
「うん。わかったよママ」
「ママ!わかった」
「じゃあ早速行きましょう」
パラリアならここより安全だわ。
あそこなら魔物対策の警備も確りしている。
私が留守の間、皆にはそこにいて貰おう。
話がまとまったので再びミクに向き直した。
「ミクにお願いがあるんだけど良い?」
「んにゃ?な~に?」
「久しぶりの魔法で魔力が枯渇しそうなの。一日だけ私達の護衛をしてくれない?勿論パラリアでの宿泊と食事は保証するわ」
って言っても、その資金はミクがくれた鉱石を換金したものになるんだけど。
「一日?う~ん…そこって矢売ってる?」
「勿論!普通のだけでなく、この大陸の科学力で開発した炎の矢とか他にも変わったのがあるわ」
そうこの大陸は魔法がなくなった事により、科学力が急激に増した。
「ほへ~……そんなのがあるんだ。うんOK♪護衛くらいバッチリやるわ」
と自分の胸を叩く。
口に出して言わないけど、かなりつつましい胸ね。
「ありがとう」
・・・・・・・
その後、魔物がちらほらと現れるがミクとチカが軽々撃退しパラリアに到着した。
到着早々ミクは矢の補充を行っていた。
そして次の日再びミクは帰り支度を始め出す。
「やっぱり帰るの?」
と私が訊く。
「うん。あたしが言われたのはサラを無事に別の大陸に送り届ける事だからねぇ~」
「そう残念ね」
本当に残念だ。
マイペースで、人のペースを狂わす娘だったけど、良い人だった。
それに結局“アレ”ってなんだったのだろう?
「ごめんね。命令には逆らえないから。それにまた遊びに来るね♪」
ミクが微笑む。
「命令って例の女王様から?」
「ううん……あたしの大陸の中心である聖王国ユグドラシルのロッカ女王からの要請があたしの国マルストに来たの。あたしはその国の王妃に仕えてるから、その王妃のセイラ様の命令。ちなみにサラは別の国に仕えているからそこからの命令だね」
「へ~。ミクの大陸では国通しの交流が確りしてるのね」
「ロッカ女王様が頑張ったからね。去年まで酷かったんだよ」
「そっか。そっちも色々大変だったんだ」
「まぁね。じゃあもう行くね。そっちも色々大変だろうけど頑張ってね。チカ!」
そう言ってミクは羽ばたくチカの足に掴まった。
「うん。色々ありがとう。またね」
「んじゃばっはは~い♪」
そうしてミクは空高く羽ばたいて行った。
さてと今度は私が……。
子供達には、出立する事は言ってある。
よし!まずはエドがいるフィックス城へ。
そう言えばサラも向かってるんだよなぁ。
ふふふ……私が先に到着していたら驚くだろうな。
シュィィ~ンっ!!
半精霊化を行い飛び立つ。
皆さようなら。
必ず戻ってくるから……。
目指すはフィックス城。
プシュ~っ!!
一気に加速。
あっという間にフィックス領が目前に迫った。
でも……。
「くっ!」
徐々に高度が下がって行く。
「……コン…トロール……できない」
やはり一年間半精霊化していなかったから、身体がついて来ないんだわ。
いや、もしかしたら完全に力が戻っていないのかもしれない……。
そして、なんとかフィックス領に入ったのは良いが、次第に地面スレスレで飛行しだす。
「くっ!……ダメ……みんなと約束したんだから……あ…と少し……お願い……もっ…て…くっ!」
ダメ!……このままじゃ私……。
・・・・・・・
「エ、ド……」
「むぅ?レディが私を呼んでいる」
王間にいたエドが辺りを見回す。
そこに私がやって来た。
意識が飛びそうになる中、なんとかここまで辿り着いた。
「ん?」
「ハァハァ……エ、ド」
「ルティナか?でもその姿は……」
半精霊化してる為に驚くエド。
「ハァハァ……」
私が片膝を付き、半精霊化を解く。
「おいルティナ!大丈夫か?どうした!?」
倒れそうになった私を慌てて寄って来たエドが支えてくれる。
意識が飛びそう。
でも、これだけは伝えないと。
「ま、ほうが……ハァハァ……よみ…がえ……った」
限界だった。
「魔法?……いやそれよりも今はルティナ!確りしろっ!!」
エドの声が徐々に小さくなり、私は闇に呑まれた……。
やっとルティナ編が終わりました。
イクタベーレのキャラを出すとつい走ってしまいます(笑)
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