50 ハイタッチ
「状況はどうなってる?」
俺は丸2日寝て凝り固まった体をほぐしながら2人に尋ねた。
「言われた通りロクリスは救出したよ。ダークは現れなかったさぁ」
「ユキがムキムキおじちゃんを連れて帰ってきたよー」
ナターシャ、エーコという順番で答える。
「ムサシは?」
「そっちも問題ないよー。ライデンお爺ちゃんと一緒にやって来たよー」
エーコが答えた。
エリスのじーさんも来たのか。
残りはルティナとガッシュだけだな。
あそこが一番大変だろうから、時間がかかるだろう……。
「それよりアーク。お腹減ったでしょう? 昼だし食堂に行くさぁ。アークも自分でみんな来たか確認したいでしょう?」
ふむ。ナターシャが言うのももっともだな。
ぐ~~。
タイミング良くお腹も鳴ってるし。
「じゃあ食堂に行こう」
そうして2人と一緒に食堂に向かった。
食堂には、どうやらエド以外全員そろっているようだな。
みんな席に腰を掛けていた。
「お前がアークか?」
食堂に足を踏み込んで真っ先に立ち上がり声を掛けて来たのはロクームだ。
一番いらんな。
どうせ声をかけて来るならエリスにしてくれ……とはナターシャの前では言えない。
「ああ」
とりあえず頷くか。
というか何故かエーコがロクームと視線を合わすのを嫌そうにナターシャの影に隠れる。
「話は2人から……」
「ナターシャ、エーコはどうした?」
ロクームを無視してナターシャに振った。
「うーん……なんて言ったら良いかなぁ? サキュバスがいて……」
「うん。わかった」
3週目であそこに行ったしな。
状況的に察してしまった。
「おい! うちのエーコに下品なものを見せてんじゃねぇ」
ついロクームを睨んでしまう。
「それをアークが言うかねぇ……」
ナターシャが何か呟いているが無視。
「うちのエーコ?」
ロクームが目をパチクリさせる。
「ともかくエーコに近付くな」
「あの状況はしか……ん?」
言い訳しようとしてたとこを後ろからロクームの肩にエリスの手が置かれる。
なんか笑いをこらえている顔してるな。
「言われたな。ロクームは下がれ」
「だが……」
「全てお前が悪い」
うわ!
エリス怖い。
有無を言わせない。
「……わかったよ」
ロクームは、しぶしぶ頷き離れた席に座った。
「私はエリス。あっちはロクームだ」
「俺はアーク」
「2人から聞いている。2人を手配してくれて感謝する」
エリスがチラリとナターシャとエーコを見た後、俺に頭を下げた。
「いや良い。本番はこれからだ。だから2人には、いてもらわないと困る」
「それも聞いた。お互い頑張ろう」
「ああ」
話を終えるとロクームの隣に座った。
「アルを連れて帰ったユキー」
次にやって来たのはユキとアルだ。
「お前がアークか?」
アルが声を掛けてくる。
「ああ」
「タケルから話は聞いてるぜ。俺と試合しないか?」
は? 何言ってるの?
「……状況わかってる?」
「がははは……わかってるぜ。だからいろいろ片付いたらやろうぜ」
嫌ですが?
勝てるわけないだろ。
何て言おうか……。
俺とアルは初対面という事になっている。
アルの強さを知ってるのは不自然だ。
「お前の覇気でわかるよ。俺には敵わない」
うん。これなら自然だろう。
「だが、タケルが言うにはスピードがピカ一なんだろ? それを真似れば、俺はもっと強くなれる」
あのバカ!
余計な事を話してるんじゃねぇよ。
「うんまぁ気が向いたらな」
「がははは……宜しくな」
豪快に笑い俺の肩をバシンバシン叩いてくる。
いてぇよ!
この筋肉ダルマが!
「あ、そうだユキ。暫く雪だるま一族をここに滞在して貰う事はできるか? もう少ししたらルティナの家族がやって来る。イーストックスからここまで護衛して欲しいんだ。その後はエドが良いと言えば解散して良いからさ」
まぁサラもいるけど1人じゃ大変だろうしな。
フィックスの兵は、アルフォンスがバカな事をしないとも限らないし、なるべく動かさない方が良いだろう……。
「わかったユキ」
そうしてユキとアルも食堂の席に腰を掛ける。
そこで食堂に現れたのはエドだ。
「アーク、目覚めたか」
「ああ」
「アルフォンス王の事、感謝する」
「まぁ本番はこれらかだからな」
俺は肩をすくめる。
「そうだな。私もそれまでアルフォンスの事をできる限りやっておくつもりだ。アークが目覚めたと聞いて少し抜け出してきた」
「昼メシは?」
「執務室で適当に摂る。ではな」
そう言ってエドは食堂を出て行った。
そして最後に席を立ち俺達の前に来たのはムサシ達だ。
ライデンのじーさんも席を立つが、俺達のとこには来ないでロクーム達のとこに向かった。
ライデンじーさんはロクーム達と一緒に座っていたのだが俺がエーコに近付くなって言ったから離れていったしな。
それはともかく、いい加減座らせろ。
席についてメシ食いながらでも話せるだろ?
「アーク殿でござるな?」
「ああ」
このやり取りは何度目だよ?
「微力ながら拙者も力になるでござる。共に行こうでござる」
ムサシは話が早いな。
「ああ……サムライの力、期待してる」
社交辞令で返す。
っていうか今の上から目線だったかも?
失敗したかな?
だが、ムサシは気にした感じもなく席に座り直した。
そして最後に1人残り、声を掛けてきた。
「上手くやったみたいだな」
「お互いにな」
パッシーンっ!
俺は武とハイタッチをした……。
最後の最後にタケルの名が登場
アーク編はあえて名前を一切出しませんでした
次回からタケル編に入りますが、今までの伏線を全部回収させる予定なので、苦心するかもしれません。




