L1 ルティナ=プランフォート
私はルティナ。
ルティナ=プランフォート。
精霊大戦の後、しの道に私達の家を建てた。
建てたのは二軒。
一軒はディール夫妻……元々ここに暮らしていた夫婦とその子供の三人。
そしてもう一軒は私と戦時中に親を失った子供達十人、私も含めて十一人でが暮らす。
私は物心付いていない程、小さい頃にラフラカに拾われ、操り人形にされていた。
私は、私の力を憎む。
私は精霊と人間の間に生まれた子供。
故に生まれながらに魔導の力を宿していた。
それに目を付けたラフラカに兵器として利用され、愛を知らずに育つ。
精霊である父は殺された後、魔導の力を誰にでも使える宝石に変えられ、母もラフラカに殺された。
だから両親がいないという点では、一緒に暮らす子供達と一緒なのだ。
そんな子供達と一緒なら変われると思った。
自分の力を憎み、恐れ、恨み続けた。
私に欠ける大切な何かを、この子供達が教えてくれるような気がした。
そしてそんな私を受け入れてくれた子供達を愛おしく思い、これが愛なんだと気付いた。
だから今でも子供達を大切に思う。
そうして自分の力と向き合い、精霊大戦で戦い抜く事ができた。
しかし、あの戦いで精霊王が朽ち果て、私の中の魔導の力が消える。
そうして私は普通の人間となり、こうして子供達との平穏な暮らしが始まったのだ。
今日は私達の家から西にあるニュータウンパラリアに子供達の半数を連れて買い出しに来ていた。
この町は精霊大戦後に作られ多くの人で賑わう。
ただ難点なのが広過ぎるという事。
初めて来た人は迷うんではないかという程。
私達は出来始めた頃から来ているから問題はないけど。
それにここに町が出来て本当に良かった。
前は私達の家からここまでの倍の距離がある町に行かないといけなかったから。
そんな買い出しをしてる中、珍しい灰色髪の青年とすれ違う。
私は何かを感じる。
その青年は、人に…いや私だな。
私に顔を見られないように俯きながら、私の横を通り抜けた。
気配でわかる。
これは彼だわ。
嬉しく思い微笑んだ。
「……久しぶりねダーク」
後ろを振り返らずに声を掛けた。
私は精霊とのハーフのお陰なのか、人の気配を見分ける事ができる。
すれ違った瞬間に感じた。
彼の気配はダークだと。
「……人違いだ」
答えた時点で、ダークだと言ってるようなものよ。
「ふふふ……昔、一緒に戦ったんだよ。直ぐわかるよ」
振り返りウインクした。
「ちっ!」
彼がバツの悪そうな顔をする。
貴方は群れるの嫌う人だからね。
「そんな邪見にしないでよ。相変わらずなんだから」
「……お前もな」
「……」
……そんな事ない。
相変わらずなんかじゃない。
だって今の私は……。
「ねぇ?ママ、この人知り合いなの?」
子供が訊いて来る。
私は振り返り、子供達と目線を合わせた。
「うんそうなの。だから少しお話したいから、貴方たちは少し公園で遊んで来てくれる?」
「はーい、ママ」
「これお昼のお金ね」
昼食代を子供達に渡す。
子供達が去って行くと私は再びダークの方を向いた。
「ねぇお昼食べた?」
「……いや」
「じゃあ一緒に食べよう?」
久しぶりの再会だからいろいろ話したいわ。
「ああ……構わない」
「じゃああそこにしよう?あそこ美味しいんだよ」
と言って私は、とある定食屋を指差す。
・・・・・・・・
「じゃあ一年も治療していたの?」
「ああ」
食堂で一番気になっていた今まで何をしていたのか聞いていた。
私は今日のオススメ定食を注文。
ダークは、かたゆで卵五つとライスを注文していた。
噂には聞いていたが、本当にかたゆで卵が好きみたいね。
「じゃあこの町は初めて?」
「ああ」
「結構迷ったでしょう?」
悪戯な笑みを浮かべ訪ねた。
「ああ……買い出しに時間掛かった」
それはお店があっちこっちにあるからね。
せめての救いは、所々に案内板がある事くらいかな。
「ふふふ……ねぇ?ところで一年も療養していて、力とか無くさなかったの?」
私は話題を変えた。
「……多少なまりは感じだが問題無い」
「良いね」
率直にそう思う。
だって私は……。
「私はあの後…ラフラカとの決戦の後、力がなくなったの。たぶん精霊に力が消えたせいで。子供達を守ってあげなきゃならないのに……」
そう…今はそれが気掛かりだ。
今の私には、あの子たちを守る力がない。
「……だったら何故ここに暮らさない?」
彼が言いたい事はあわかる。
パラリアは本当に大きな街。
当然魔物に対する対策もある。
だけど私はあの家から離れられない。
「子供達がね……私と出会った場所だからって……私嬉しく……」
これ以上言葉が続かない。
ただの言い訳だ。
「だが、あそこにいては……」
そんなのわかってるよ
あの家にいたら……。
「わかってる!だから迷ってるのっ!もし魔物に襲われた時、守って上げられない。でもっ!!」
つい感情的になり怒鳴ってしまった。
相談に乗って貰ってるのに……なんだか自己嫌悪に陥ってしまう。
「……お前は精霊の力だけで戦っていたのか?確かに精霊の力も使っていたが、それ以前にお前は魔法剣士として剣を取って戦った筈だ」
怒鳴ったのに気分を悪くする事なく話を続けてくれた。
確かに剣で戦った。
私は魔法剣士だから。
でも……。
「うん。でも怖いの」
そう私は怖い。
「はっ!?」
ダークが怪訝そう顔する。
「精霊の力が消え、急に力が抜け……剣を持つと、いつか子供達を傷付けるんではないかと、魔物を倒す以前にあれは凶器だから……」
これはある意味言い訳だ。
私は自分の力を恐れているだけなのだから。
「……話にならん」
彼はそれ以上何も言わなくなり、淡々と食事をし出した。
そうだよね。
こんな私じゃ話にならないよね。
それにダークに相談したからって何もならないのに私は何をやってるのだろう。
再び自己嫌悪に陥る。