O15 俺はどうすれば良いんだ?
どういう事?
ルティナは助かったよな?
なのにまたタイムリープ。
俺はキングサイズのベッドに腰かけて考え込んでしまう。
心が死んだのがダメだった?
それならルティナと出会った瞬間タイムリープするだろ。
「あ! アーク、目覚めたんだねー」
ロクリスはエーコと武が向かったから平気な筈。
考えたくないが、エーコがレズだったら厳しいが武がそれをほっとくわけがない。
ムサシは問題なく俺が救出した。
じゃあエドワード国王?
いや戦争開戦の情報を渡した。
あそこは機械技術の最先端って話だからな。
何も準備無しに迎え撃たないだろう。
そう考えると被害は大きくなったとしてもエドワード国王がやられるとは思えない。
「ちょっとアーク! 聞いてるー?」
だったら何故?
本当にわからない。
俺は一生タイムリープし続けるのか?
つまり一生童貞? まぁ記憶がないだけで経験はあるのかもしれないけど。
いやタイムリープを利用してどうせなかった事になるんだし、手当たり次第に手を出して行くか?
うわ!
思考が変な方向に行ってるな。
俺も武に人の事を言えないクズだ。
「あ、アーク起きたのね。良かった」
とりあえずはっきりわかってるのは時間的有余は最大で2週間。
たぶん2週間以上は越えられない。
クソ! それがわかったからってどうする?
11人……1人もう死んでるから10人か?
その誰かが死ぬとアウトって線はなくなったと思う。
「どうしたのさぁアーク? 黙り込んじゃってさぁ」
「さっきからこんな感じなんだよー」
いや待て、今までエーコ、エドワード国王、ロクーム、エリス、ムサシ、ルティナ、そして俺か。
7人しか現在位置がわかっていない。
残り3人が危ないのか?
でもだからってそっちに人手を回す余裕はない。
マジでわからん。
俺はどうすれば良いんだ?
「ちょっとアーク! ボーっとしてるんじゃないよ」
「ふあ!」
ナターシャさんに怒鳴られた。
いつの間にかエーコとナターシャさんが部屋にいる。
「大丈夫かい?」
「考え事をしていました」
もういいや。
とりあえずわかってる者達を助けて、出たとこ勝負だな。
「そう…なのかい?」
「今の俺には記憶がありません」
「「えっ!?」」
毎回のごとく驚くよね。
つい苦笑してしまう。
「じゃあアーク……」
「俺は15歳の時に馬車のようなものに轢かれ、それ以降の記憶がなく気付いたらこのベッドにいました」
ナターシャさんの言葉を遮り、矢継ぎ早に言った。
「え?」
「ナターシャさんが聞きたそうな事を先に言いました」
「ちょっと待って? 記憶がないのに何であたいの名前知ってるのかい? さん付けで敬語使ってるのも意味わからないし」
「信じられないかもしれませんが、1週間~2週間経つとまたこのベッドで目覚めています。つまり同じ時間を何度も繰り返しています。だからナターシャさんが聞きたそうな事もわかりました」
というか俺、毎回ナターシャさんに敬語だな。
距離感というか関係性がわからないからついこのままんだよな。
「「はい!?」」
2人ともビックリしてるな。
「何故繰り返してるのか? またどうすれば繰り返さずにすむのか考えています」
「……そうなのかい」
ナターシャさんがポツリ呟く。
「ところでナターシャさんはどこへ行くつもりですか?」
「何の話だい?」
「俺が記憶喪失と聞いて、次の日のナターシャさんは出かけられ、以降帰ってきません」
「なるほど。繰り返してるからわかるんだねぇ」
「はい」
「たぶんだけど記憶を取り戻す秘術があると聞いた事ある場所に行こうと思ってた筈さぁ」
なるほど。
俺の記憶の為に。
というかそれだけの関係性が俺とあるのか?
「それもしかして魔導士の村ー?」
「そう…エーコが生まれた村だねぇ」
ほう……そんな村が……。
それもエーコの故郷と呼べる場所か興味あるな。
「エーコの故郷なら行ってみたいな」
「アークはその……大丈夫なのかい?」
ナターシャさんが言いよどんでる。
ん? 戦闘力の事かな?
「本来のアークの力を期待されても困りますけど、繰り返す中で探り探りこの肉体の扱いを覚えていってますので、それなりには戦えます」
「そう…なのかい? なら一緒に来るかい?」
「ありがたい申し出ですが行けません。それにナターシャさんも行かないでください」
「なんだい? 寂しいのかい?」
ナターシャさんが悪戯な笑みを浮かべる。
「いえ、俺が知る限り何人か危険なんです。助けに向かう人員を確保したいと思っていまして……協力してくれませんか?」
「なんだい? 他人行儀だね」
「実際他人に近いです。ここで目覚めて次の日には出て行くのでナターシャさんがどんな人なのか全然わかりません」
「そうなのかい……なんだか寂しいねぇ」
って言われても出て行くあんたが悪い……とは言えないね。
てか眠気が……。
ああ…そうか。
いつも直ぐ再び寝てるからな。
これ以上話すのは厳しいな。
「そういうわけなんで協力をお願いします。俺はまだ疲れていますので寝ます。続きは明日に」
「そうだねぇ……目覚めたばかりだし仕方ないね。わかったわ。魔導士の村に行くのは見送るわ」
「ありがと……」
最後まで言えずベッドに倒れてしまった。
「おやすみ…アーク」
「おやすみー」




