01 プロローグ
今度は一人称が中心の作品にしてみました。
うーむ。三人称のより難しいかも。
……崩れ行く城。
……崩れ行く心。
……朽ちるのをただ待つ身体。
この身を崩れ行く城に委ねている。
男の足が止まる。
「ワンワン」
主人の身を案じる犬が吠えた。
賢い犬だ。
「行けっ!ハンターっ!!」
男が叫ぶ。
「くぅぅ~」
ハンターは賢い。
長年この主人に仕え片時も離れなかった。
故に主人の気持ちが理解できた。
男は死にたいのだ
だからハンターは死なせないと目で訴える。
つぶらな瞳
澄んだ眼差し
それが男にとってより一層痛い。
崩れ行く城。
崩れる心。
10人の仲間達は崩れ落ちる瓦礫に押し潰されまいと逃げる。
だが男は足を止める。
もう俺の戦いは終わったと
「ワンワン」
とハンターがもう一度吠える。
着いて来いと……そう言いたげに。
そして振り返る
男は動かない
遂にハンターは、男の視界から消えた。
後は一人朽ちる果てるだけ。
もう男には何も残っていない。
相棒を見殺しにし、妻を看取らず、娘を捨てた。
罪悪に生きてきた男が唯一歩めたのは暗殺という修羅の道があったからこそ。
それも、もう終わった
そう、この城こそが男の死に場所なのだ……。
うおーーーーーーーーーー。
なんて終わりなんだよ。
俺の育てて来たキャラが死ぬのかよ。
俺、高梨 治が長年育てて来たキャラが死ぬエンディングを迎える。
ストーリーが完結しただけで、まだVRMMOとして遊べるとは言え、少しショックだ。
そんな事を考えてると視界が暗転。
「えっ!?」
気付くと身体が痛い。
マジで痛い。これリアルの痛みじゃねぇ?
眼をゆっくり開ける。
ここどこ?
知らない家の中だ。
それに視界に女の人が……誰?
しかもかなり可愛い。
ってゆうか身体が動かない。
マジで痛いんですけど。
「ここは?……俺は一体……?」
痛みを堪え何とか言葉を絞りだす。
「ここはあたいの家。あんたは近くの海岸に倒れていたのよ」
女の人が答える。
「……そうか」
と答えるが……ん?近くの海岸?
うちの近くに海なんてないよ?
え?どういう事?
「半年も眠っていたのよ。もう起きないかと思った」
「そうなのか……」
えっ!?マジでどうゆう事?
半年?もうわけがわからない。
VRMMOやってたんだよな?
「そうよ。ところであんた名前は?あたいはナターシャ」
どうしよう。
高梨 治と答えるか?
でもまだここがVRMMOの世界なら俺のキャラ的にこう答えるべきかな。
「……俺には名などない」
でもリアルっぽいし。これで良いのかな?
まあ俺は引き籠りでコミュ症だからまともに話せないだろうし良いかな。
「はっ?」
ナターシャって娘が間の抜けた声を上げる。
可愛い。正直凄く可愛い。
ってまてよ?名前から言って日本人じゃないよな?
でも日本語喋ってる。
痛みはリアルだけどやっぱMMO?
もうわけがわからない。
でもナターシャちゃんが困ってるからとりあえず。
「名など捨てた」
と答えておくか。
うん。自分で言っておいてなんか恰好良い
え?俺こんな中二病だったっけ?
まあ良いや。
「それだと何かと困るねぇ。じゃあ、あたいが名前付けて良い?」
「……ああ」
いやもう眠い。
意識が薄らぐ。
なんかアークとか名前付けてくれたよナターシャちゃん。
この後、俺は何を話したのか覚えていない。
そのまま闇に落ちって行った……。