聖女の親は娘を救いたい。
第二回なろうラジオ大賞投稿作品第七弾!!
「この村に、この世界を救済しうる聖女がいるとの預言があった。村長、この世界の救済のために、この村にいる女性を全員……調べてもよろしいか?」
全ては、村に来た王都の聖騎士の……その台詞から始まった。
この国の国教『アルドラ教』の総本部から来た、その守り手たる聖騎士の直々の要請に、村長は『聖女が生まれた村』という箔を村につけるためという下心もあり積極的に応え……ついに聖女は見つかった。
聖女は、とある家に住んでいた姉妹の妹の方だった。
しかしその両親は激しく、娘の引き渡しを拒否した。
聖騎士は褒賞を与えると言ったが、それでも拒否した。
しかしそうなると面白くないのが村長、そして村長に同調した村人達。彼らは聖女の両親を激しく非難した。
しかし両親は一向に折れない。
彼らは娘達を連れて、家に引き籠ってしまった。
だが聖騎士も『はいそうですか』と言えなかった。
現在この世界を襲っている脅威の一つである瘴気――この世界に侵攻している異界の住民『魔族』にとっての大気を通常の大気に戻せるのは聖女だけなのだから。
しかし彼らは聖騎士。
犯罪に手を染める事は許されない。
だがこのままでは世界が滅ぶ。
そして考えた末。
村を訪れた聖騎士の一人は……破門される覚悟で、独断で聖女である少女を誘拐した。
数年後。
魔族の侵攻が止まり、世界の大気が正常に戻りつつあったある日の事。
聖女の両親が、青ざめた聖女の姉をおんぶしながら、聖女が仲間達と立ち寄っている町の教会に現れた。
娘を早く連れてこい。
開口一番、両親は教会にそう言った。
「この町に寄っている事は人伝に聞いて分かっているんだ。早くあの子を出せ!」
「お前達があの子を連れていったせいで、この子はこうして死にかけているんだ! もしこの子が死んだら責任を取ってもらうよ!?」
話を聞いていた司祭は苦い顔をした。
聖女の姉の病状は気になるが、それ以上に彼は、両親の方にいろいろ問題があるような気がしてならなかった。
そしてその後、聖女の両親から聞かされた真実は。
彼らがなぜ聖女の引き渡しを拒み、なぜ聖女の姉が体調を崩し、その謎の答えをなぜ今になるまで明かさなかったのか……その理由には充分すぎるモノだった。
「あの子は……あんたらが聖女と呼んでいる子はこの子の模造品。内臓修復能力を備えるよう改造し生み出した存在さ。この子がかかった内臓を腐らせる不治の病への対策として……この子に内臓を移植するためだけにね」
推理の絆な漫画を読んで思いついたネタです。
クローンとホムンクルスは同一ではないとは思いますが、従来の聖女ものと同じく昔のヨーロッパな世界観という設定なのでこの表現にしました。
そう。両親は錬金術師なのです。
でもって倫理的に……この事実は追い詰められん限り話せやしませんよね(-_-;)