87話 コスプレ喫茶ですが脈ありでしょうか?
「……すみませんでした」
「はぁ〜本当に死ぬかと思った」
私は、傷だらけの蓮華に土下座をしていた。胸を掴まれて、反射的に殴ってしまった。冷静に考えたら、原因の全てが私にあるのに。
「本当にごめんね」
「いいよ、ちょっとコケて足を挫いたから、こっからは歩いて行こうか」
「いや、ここは私が、自転車漕ぐよ!蓮華は、荷台に乗って!」
「いえ、結構です」
「そ、そう?足大丈夫?」
「余計に事故りそうだし」
「うぐっ、それは……そうだね、それじゃ自転車を押していくよ」
「うんそれでよろしく」
私達は、それから歩いて学校に向かった。
「そういや、もうそろそろ文化祭だな」
「文化祭か〜去年は、なにしたっけ?」
「去年は体育祭だったろ、うちは毎年交互にやってるから」
「ああそうだった、ってことは初めての文化祭じゃん!」
「まぁ、そうなるな」
「めちゃくちゃ楽しみだね!なににする?」
「メイド喫茶」
「却下します」
蓮華が、ふざけた事をぬかしやがるので食い気味に否定した。
メイド喫茶だって? そんなふわふわした格好、私が耐えられるわけないじゃん! そりゃ楓ちゃんや向日葵のメイド服姿は見たいけど、その場合私も着なきゃいけなくなるからね……。
「ええ!!即答かよ」
「私は、あんなに可愛い服着れないもん」
「大丈夫、ビキニ着てたし」
「それとこれとは話が別なの!覚悟と勢いの問題なのさ」
「まぁ、俺以外にもメイド喫茶をやりたい奴は居るだろうし、多数決で勝てばよかろうなのだ」
「また、林間学校の時みたいにグルになってないでしょうね?」
「ふゅ〜ふゅ〜」
蓮華は、絶妙に出来ていない口笛を吹きながら、目を逸らしている。
こいつ、絶対なにがやってるな? はぁ、なんとか阻止しなければいけない。とりあえず、楓ちゃんに協力してもらおう。
そんな感じで話していると、ようやく学校に着いた。一応いろいろあったけど、早めに出たので、登校してる人は少なかった。
駐輪場に自転車を止めて、教室に行くと、そこには、ニヤニヤと待ち構える楓ちゃんが、机に座って待っていた。
「おはよう、早速だけど2人乗りの感想を聞こうかしら?」
「小学生を乗せるぐらい危ない2人乗りだった」
「ちょ!誰が小学生だ!」
「そりゃ、風が気持ちいいからって荷台に立ち上がって、荒ぶるスカートからパンツ丸見えではしゃぐ奴は、小学生って言われても仕方ないだろ?」
「ちくしょう!蓮華の癖に正論を言ってやがる!」
「そんな事があったの?」
「うん、その後体勢崩して紫陽花に殴られた」
「え……貴方、そんな暴力をふるって、2人乗りをしてたの……」
「いや、誤解を生む説明をしないでよ!」
「大丈夫よ、大体理解した上であえて悪ノリしてるから」
「本当に楓ちゃんのそういう所、1番タチが悪いよ!」
そんな感じで、朝っぱらから2人に軽くいじられた。
しかし、私は少し気になる事があった。
「楓ちゃん、なんでこんなに早くから学校に来たの?」
「そういえばそうだな、まだ7時半くらいだし」
「そうね、2人に話をしたくてね」
「話?」
「そう、ちょっと文化祭のことでね」
楓ちゃんは、席から立ち上がって、教壇の上に立った。
「文化祭、うちのクラスでコスプレ喫茶をしませんか?」