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80話 絶叫ですが脈ありでしょうか?


 花火の光が、砂浜に落ちる。

 明かりがなくなり、辺りは暗く染まる。

 暗い黒色に染まるはずだった。

 私の視界は、あるはずもない眩い白色に染まっていた。あれだけ感動した花火の光が掻き消える程の白い光。

 いや、私は現実逃避してるだけ。

 分かっている。

 ただ、その事実に自信が持てないだけ。

 ぎゅっと目をつぶって、覚悟を決める。

 よし、目を開けるわ!

 カァッ!と気合を入れて目を見開く。

 そこには、桔梗が私の頬にキスをしている光景が見える。

 そして、ゆっくり唇を私の頬から離して、桔梗は照れ臭そうに口を開く。


「遅れてすまねぇ、好きだ」


 きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!

 なになになに!?!?

 なにが起きたの!?

 え?え?え?え?え?

 えっ?これって所謂所の告白ってやつ?

 って桔梗君覚えてたの?

 つーかその照れ顔可愛すぎ!今すぐ写メらせなさい、トプ画に飾ってやる!

 っていうか!つーか!所謂!これって!

 私……桔梗君と付き合えるんだ。


「……っても今更だし、嫌なら断ってくれても…….」


 私は、そんな桔梗の言葉を、彼に抱きつき返して封じる。


「もう、ばかぁ!これ以上待たせないでよ……ひっぐ……」

「……すまん」

「本当に、毎日心配だったんだから……このまま気づいてもらえないかと思った時が、何回あったか貴方にわかる?」

「……ごめん」

「でも……ありがと」

「……ごめん、ごめん」

「もういいわよ……その代わり」

「ん?」

「もう少しこのままでいさせて、今の涙でぐしゃぐしゃな顔、貴方に見られたくないもの」

「ああ、分かった」


 それから、私達はしばらく抱き合ったままじっとしていた。

 目から際限なく涙がこぼれ落ちる。

 嬉しすぎて嗚咽がこみ上げて、止まらない。

 そのまま、抱き合ったまま次第に周りが明るくなっていく。


「……あれ?もうそんな時間?」

「今が……えーと午前3時くらいだな」

「そんなに経ってるの、気が付かなかったわ」

「まぁ、花火楽しかったからな、楽しい時間はあっという間に過ぎるものだろ?」

「そうね、あっという間だったわね、でも楽しい時間はまだ続くわ」


 桔梗「ん?え、ちょっと楓さん!?」


 私は、抱きついた腕を一旦離して、桔梗の顔を手で押さえる。

 そして、桔梗の唇目掛けて私の唇を押し当てる。


「……」

「……」

「ぷはっ!ちょっと、いきなりディープキスはびっくりするわ!」

「……嫌だった?」

「いや……むしろ嬉しい」

「それならいいじゃない」

「……そうだな」


 完全に辺りを朝の日差しで明るく照らされる。

 私達は疲れ果てて海辺で寝そべっていた。


「いつから、気づいていたの?」

「……遊園地の時だな」

「遊園地……あの時ね」

「お前が気を失った時に、ボイスレコーダーの中身を見てな」

「……見たの?」

「……9割くらい俺の録音で驚いた」


 私は、恥ずかしくて顔を手で覆い隠す。


「しかも、俺の録音だけプレイリストまで作られてたから本当に驚いた」

「やめて、恥ずかしいて死にそう、っていうか気づくの遅すぎよ」

「いやいや、無理だろ!痩せて印象変わり過ぎなんだよ!」

「……可愛くなったかしら?」

「おう、相当頑張ったんだってのがわかるぐらい可愛い」「ふふっ、ありがと」

「だからこそ、言うのを躊躇っちまった、何も変わっていない俺が側に居座るのは、おこがましいだろって思ってな」

「全く馬鹿ね、誰の為に頑張ったと思ってるのよ」

「……そうだな」

「本当よ、ねぇ桔梗君?」

「どうした?」

「……もう一回……しよ?」

「お、おう、いいぜ」


 私は、桔梗君に抱きついた。

 そして、徐々に桔梗君に顔を近づける。

 その時、近くの茂みがガサガサと揺れる。


「ちょ、押さないでってば」

「う〜ん、よく見えない」

「……すごいです」


 茂みから明らかに聞き馴染みのある声が、聞こえてきた。

 私達は、一旦離れて立ち上がり茂みに近づいた。

 そこに居たのは、紫陽花達3人だった。

 各々、気まずそうに明後日の方向を向いている。


「……貴方達、いつから居たの?」

「何も見ていません!」

「本当は?」

「桔梗が、告ったとこからバッチリ見守っていたよ!」

「よし、桔梗君記憶が無くなるまでボコボコにしなさい!」

「OK」


 桔梗は、バキバキと両手を鳴らしながら、紫陽花達に近づいていく。


「蓮華、任せた!」

「蓮華様、御武運を!」

「おい!俺を置いて逃げるな!」

「蓮華君、覚悟できてるか?」


 桔梗君の手が、静かに蓮華君の肩に置かれる。

 蓮華君は、額から冷や汗を滲ませていた。


「おっおい!俺達親友だろ!そんな暴力なんてしないよな!」

「大丈夫」

「……桔梗」

「それとこれとは、話が別だ」

「ぎゃああああ!!」


 朝日が登る海辺に、蓮華君の絶叫が響き渡った。

 そして、それに続くように紫陽花と向日葵ちゃんの絶叫を響き渡った。


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