76話 つやつやですが脈ありでしょうか?
俺達は、一足先に風呂から上がり、近くの自販機で飲み物を買っていた。
「なんにする?」
「なんにするって、そりゃ牛乳だろ」
「ここ結構品揃え良いから、たまには他のも良くないか?」
「一理あるな」
「フルーツ牛乳にコーヒー牛乳、イチゴ牛乳や飲むヨーグルトなんかもあるなぁ、どれにしよう」
「う〜ん、じゃあコーヒー牛乳にチャレンジしてみようかな」
「ほう、桔梗君も大人になったんだね」
「コーヒー牛乳如きで、大人もクソもあるか」
「じゃ、俺は飲むヨーグルトにしよう」
自販機にお金を入れ、番号を入力し決定ボタンを押す。
しばらくして、ガコンと音が鳴り、下の取り出し口を開けて、牛乳瓶を手に取る。
近くの畳張りの休憩所に座り、飲むヨーグルトを少しずつ飲む。
この果物みたいな酸味と甘味が非常に美味い。
温泉で暖まった体に、この冷たいヨーグルトが格別にあう。
「一体あいつら何してたんだろうな」
「さぁ予想もつかない」
「予想通りじゃなかったんか?」
「いや、俺の言った予想通りは、絶対紫陽花がいるなら何か起きるだろうという予想だよ」
「なるほど、確かにあいつはトラブルメーカーだからな」
「まぁ、いいものを聞かせてもらったし満足ですぜ、目だけじゃなく耳の保養にもなりました」
「なんか、親父くせぇな」
桔梗とそんな感じでだらだらと会話していると、紫陽花たちが大浴場から出てきた。
紫色の髪がつやつやと輝き、若干汗ばんで火照った肌が色っぽい。
浴衣姿もいいなぁ。
こんな女性らしい紫陽花を見ると、昔の姿をふと思い出す。
あの頃は、胸も全然なかったし、制服がなけりゃ本当に女の子ってわからないレベルだった。
そう考えると、紫陽花は本当に頑張ったんだなと思う。
でも、言うても3年前くらいだもんな、なんでそんな急に変わったんだろう?
う〜ん、わかんね。
「おっす、おめぇら待たせたな」
「どこのサイ○人だよ」
「いやはや、女の子はお手入れに時間がかかるのでね、許してほしい」
「そりゃ別に気にしてない、つーか手入れとかよー出来るわな」
「チッチッチ、分かってないね蓮華、この髪をよくご覧なさい!」
「髪?」
「この美しいつやっつや加減を!」
「どれどれ」
紫陽花に手招きされ、近くにより髪をよく見る。
遠くから見ても綺麗なことはわかっていたが、近くで見たらより綺麗だった。
シャンプーCMの女優の髪くらいつやがある。
「おお、すげぇ」
「でしょ?」
「まぁその子が自分でやった訳じゃないけどね」
「ギクっ!」
「私がやりました」
向日葵は、ドヤ顔で胸を張っている。
可愛い。
そんな向日葵の子供っぽい一面を見て、思わず頭を撫でてしまった。
その後、向日葵を心配して手を退けようとするが、その手をガシッと掴まれた。
「だ、大丈夫です!そのまま撫でてください!」
「そ、そうか、分かった」
髪を流れに沿うように、手を動かす。
向日葵の髪もめちゃくちゃ綺麗だが、この触り心地の良さは予想外だった。
温泉上がりにも関わらず、このサラサラ具合。
まるで猫を撫でているかのような毛並みの良さ。
お手入れすげぇ。
「向日葵ありがとな、感動したわ」
「いえいえ、こちらこそ嬉しかったです」
こうして向日葵と触れ合ったのはいつぶりだろうか。
いつもは、スキンシップが当たり前だったのに、こんな間が開くだけで、鼓動がより早くなる事を感じた。
向日葵は、撫でられながら無邪気な笑顔を見せている。
俺は、覚悟しないといけない。
今までなぁなぁにしていたけれども。
向日葵の事を決断しなければ。
たとえ向日葵を傷つける事になっても。




