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70話 バナナボートですが脈ありでしょうか?

 

 向日葵が行った後、俺たちは一旦沖に上がって海の家に来ていた。


「結構いろいろレンタルできるんだな」

「そうだね、バナナボートとか面白そうじゃない?」

「あのボートで、引っ張ってもらうやつか」

「そうそう、すっごいスピード出るやつ」

「そうだな、良さそうだな」


 ふと紫陽花の胸元に目線が吸い寄せられる。

 先程の胸の感触が、フラッシュバックする。

 あれは、幸せだったな。

 いやさ、柔らか過ぎるんだよ。

 心地良過ぎるんだよ。

 つーか、胸元が直接背中に当たってすっごくムラムラしたわ!

 バナナボートすれば、前の人にしがみつかないといけないし、また味わえるのでは?

 これは、乗るしかないな、このビックウェーブに。


「……なに見てるの」

「いや、あのその、気にするな!」

「気にするわ!そんなほぼゼロ距離で胸を見られたら、どう足掻いても気になるわ!」


 紫陽花は、そのキレのあるツッコミをした後、腕で胸元を隠してしまった。

 悲しい。


「全く、バナナボートは無しね」

「え!?どうして!?」

「変態と乗る気はありません」

「クソッ!こんな事ならポーカーフェイスを神奈月さんに教えてもらうんだった!」

「多分、蓮華には無理だと思う」


 そんな雑談をしていると、背中に何かが触れた。

 その後、お腹に腕が回ってきて、しっかりとなにかに抱きつかれた。

 背中にびっしょりと濡れた感触がする。

 まさか、いやいや、向日葵だったら気絶しちゃうよな?

 つーか背中大人気過ぎない?

 ちょっとは、俺の胸板もかまって欲しい。


「……誰?」

「わ、私です!」

「向日葵?え、まじで!大丈夫なんか?」

「だ、だだっ、ぁだ大丈夫です!」


 1ミリも大丈夫な要素が見当たらなかったが。

 しかし、向日葵も頑張っている。

 ここでそんな事言うもの野暮か。

 それに、濡れたTシャツと胸の柔らかさで、非常に幸せだしな。

 向日葵は、多分あのオレンジのVネックビキニを着ているはず。

 つまり、この濡れたTシャツ越しに、あの谷間を強調したビキニが押しつけられているということ。

 いやぁ、水着って最高だな。


「……向日葵、大丈夫なの?」

「は、はっはい!折角、海に来ましたし……皆さんと遊びたいから」


 紫陽花「よ〜し、わかった!すみません〜バナナボート貸してください〜」

「え?バナナボートすんの?」

「まぁ折角、向日葵がいるしね」

「やったぁ!向日葵バナナボートに乗れるぞ!」

「あっ、は、え、はっはい!」

「喜び過ぎでしょ」


 俺達は、スタッフの人に連れられ、海辺のボートに着いた。

 1人用の電動ボートの後ろに、3人用のバナナボートが紐で括り付けられていた。


「それでは、後ろのボートに乗ってください」

「分かりました」


 スタッフの人に言われ、俺、向日葵、紫陽花の順でバナナボートに乗り込んだ。


「それでは行きますよ、しっかり掴まってくださいね」

「はーい」


 電動ボートからブルン!とエンジンの鳴る。

 それから、徐々に動き始め、スピードが上がっていく。

 スピードが、最高潮に達して激しい水しぶきを上げてバナナボートが海を駆けていく。

 まるで、ジェットコースターのような爽快感とスリルで気持ちがいい。


「さいこぉーう!!楽しいなぁ!」

「怖いです!」

「ならもっとしがみついとけ!落ちるかも知れないぞ!」

「はっはい!って紫陽花さん!どこ触ってるんですか!」

「良いではないか!良いではないか!」

「なっ!紫陽花ずるいぞ!」

「これが女の子の特権なのさ!」

「ぐぬぬぬ!」

「いやいや!私許してませんよ!っあ!やっやめてください!」


 一体、紫陽花はなにをしているんだ?

 向日葵の甘い声が、聞こえてすごく気になる。

 その時、電動ボートが大きくカーブした。

 その勢いは、凄まじく水しぶきが全身を襲う。

 カーブが終わると、電動ボートは何故か止まった。


「すみません!大丈夫ですか!」

「え?」


 スタッフの人は、血相を変えてこちらを見ている。

 ふと後ろを振り返ると2人の姿がなかった。

 辺りを見渡そうと、首を動かそうとした時、


「こっち見ちゃダメ!」


 その声で首の動きを止めた。


「スタッフの人もお願いします!」


 スタッフの人も言われるがまま、止まった。


「……蓮華、そのまま沖に行って私の水着取ってきてくれない?」

「おっ、おう分かった」


 俺は、スタッフの人と一足先に沖に戻った。

 忘れられない。

 俺の頭に焼き付いて離れない。

 紫陽花の声の前に少しだけ見えた。

 2人は、抱き合った状態で向日葵の背中が見えた。

 なかったんだ。

 あるはずのビキニの紐が。

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