表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

57/117

57話 デジャブですが脈ありでしょうか?

 

「ふっ〜」


 暖かい風が、私の耳を撫でるように吹き付ける。

 その柔らかな空気で、耳が刺激され非常にくすぐったい。

 なんなのこれ?

 人が気持ちよく寝てるっていうのに。


「おーい!起きろ!」

「耳吹きでも駄目かぁ......もう一回やってみようかな?」

「やめておけ、紫陽花の耳吹きは余計に眠くなる」

「そんな事言ってないで、起こせ!つーか写真撮ってんじゃねぇ!」


 周りがやけに騒がしいなぁ。

 私の頭が、異変にようやく気づく。

 何故私は、寝ているの?

 確か、お化け屋敷に入って途中で意識が......。

 待て、待って欲しい。

 私が、今枕にしている物は一体なに?

 大体予想がついている。

 しかし、認めたくない。

 このまま寝たふりをしましょう。

 そう決めた瞬間、うなじに冷たい何かが触れた。


「ひゃあぁ!!」


 私は、飛び上がって悲鳴を上げた。

 驚きすぎて、地面に尻餅をついてしまった。


「やっと起きた〜へへっ、キンキンに冷えてたでしょ?」


 紫陽花は、コーラの缶を持ってニヤニヤとこちらを見ている。


「やっと起きやがったか、お陰で足が痺れちまったよ」


 桔梗は、ベンチに座ったまま呆れた顔をしている。

 ......あいつの足が痺れているという事は、もう誤魔化せないわよね。


「......お見苦しい姿をお見せしました」

「大丈夫、可愛い姿をしっかり撮影しておいた」

「やめて、さっきの写真返すから!やめて!」

「ったく、今日は帰れないかと思ったぜ」

「本当に、ごめんなさい」


 私が、謝ると桔梗はニコッと笑って私の頭を撫でた。


「いいよ、テストの借りもあるしな」


 その笑顔で、再び思う。

 私は、この人に恋をしてるんだと。

 ニヤつきそうな自分の顔を必死で押し殺す。


「本当ね、赤点での黒歴史の件楽しみにしてるわ」

「おいおい!とんだ手のひら返しだな!」

「私、過去は振り返らないの」

「さっきの俺の言葉を返せ!」


 いつも通りの仏頂面で軽い悪態をつく。

 全く嘘も大概ね。

 さっきまで夢で貴方と出会った過去を振り返っていたっていうのに。

 でも、約束だもの。

 貴方は、忘れてるかも知れないけど。

 私は、忘れない。


「もうこんな時間だし、帰りましょうか」

「ええ?ちょちょ、俺まだ痺れて取れてないんだけど!」

「はーい!」

「んじゃ、行きますか」

「え!?桔梗さんをおいていくですか?」


 戸惑う向日葵ちゃんと風鈴君をよそに歩き出す私達。

 いつも通り抱きついた紫陽花が、耳元で囁く。


(顔がニヤけてるよ、どんな夢を見てたのかな?)

(......別にどんな夢でもいいじゃない)

「そんな事より、蓮華君」

「お、おう、どうした?」

「私、内緒にしてって言ったよね?」

「......サテナンノコトヤラ?」


 蓮華君は、明後日の方向を見てぎこちない口笛を吹いている。

 やっぱりこの2人が、裏で組んでたか。

 はぁ、でもまぁ......いっか。


「癪だけど......ありがと」


 2人は、私の後ろでハイタッチした。

 はぁ、この鈍感ズに応援してもらう私も、人の事言えないわね。

 そんな感じで、私達は遊園地を後にした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ