55話 友達ですが脈ありでしょうか?
「楓、一体これはなんなんだ?」
私は、その写真を見て頭が真っ白になった。
いつ、だれに撮られたのかわからない。
そもそも、なんで父がこれを持っているんだろう?
頭が混乱してる私を他所に、父は詰門を続けている。
「なんで、黙ってるんだ!さっさとなんとか言ったらどうだ!」
私は、理解できない状況に言葉が発せなかった。
口がパクパクと動いてはいるが、声が出ない。
「なんとか言いやがれ!」
父は、我慢の限界だったのか、私の頬を振りかぶった右手でビンタした。
私は、ビンタの勢いで尻餅をついた。
頬は、痛みとじんじんとした熱が帯びている。
私は、必死に声を絞り出す。
「......な、なっなんで......その写真......は?」
「そんな事はどうでもいい、まず俺の質問に答えろ」
父は、私を見下して睨みつけている。
どう言葉を取り繕っても多分結果は変わらない。
じゃあもう素直に言ってしまおう。
私は、言葉がつっかえながらも彼の事を話した。
いじめから助けてくれた事。
最近仲良くなった事。
彼に憧れを抱いてる事。
私が、話終えるても父の表情は変わらない。
むしろさっきより怒った顔をしている。
「話はそれだけか?」
「......はい」
私の返事に食い気味に、2度目のビンタが襲い掛かった。頬に生温かい液体のような感触が頬をつたう。
私が、手で頬を触ると手には血がついていた。
1度目より強いビンタだったのか、父の爪で頬が引っ掻かれて、切り傷になったみたいだ。
「不良と関わるなんて言語道断、なにがいじめから助けてくれただ!お前がはっきり物事を言わないせいだろうが!そうやってうじうじしてたら嫌でも、そういう奴の目につくだろうな!自分の弱さのせいでそうなってるくせに、ただの自業自得だろうが!」
父は、凄い剣幕で捲し立ててる。
「それを助けてもらっただ?そいつのお節介がなきゃお前は生きていけないんか!そんなんで社会で生きていけると思うなよ!」
その後、父の気は治らず何度もノートや教室を私に投げつけられた。
しばらくして父は、疲れたのが説教が止まり、息を切らしていた。
私は、投げつけられた箇所に青いあざが出来ていた。
「はぁ......とにかくだ、こいつとは今すぐに縁を切れ、こんな不良と関わったらお前の将来に害しか及ぼさない」
害。
私は、その言葉に怒りを覚えた。
父の恐怖に勝るその感情は、ふつふつと膨れ上がっていく。
「全く、お前の友達から写真を貰わなきゃ危ない所だった」
「......とも......だち?」
「ああ......俺の塾にお前の事を知らせてくれた子がいてな、お前も後でその子にありがとうって言っておくんだぞ?」
ふざけるな。
「名前はなぁ」
ふざけるな、ふざけるな。
「早川 歩美さんだ、とても優秀な生徒だぞ?お前も早川さんを見習うように」
ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな、ふざけるじゃない。
「ふざけないでください」
父の表情が、一気に強張る。
私は、一瞬その表情に怯んだが、ポケットにあるボイスレコーダーを強く握って、言葉を続ける。
「お父さんは、凄い人だと思ってます。教えるのも分かりやすいし、私をここまで育ててくれて感謝もしています」
このボイスレコーダーを握っていると、勇気が湧いてくる。彼の言葉が、私に力をくれる。
そうだ、彼にも言われた。
変わるまで言ってないだろうと。
「でも、人を見る目はありませんね」