48話 暖かいですが脈ありでしょうか?
「ふっ〜」
こそばゆい空気の感触が、耳に伝わってきた。
その暖かい空気は、耳の産毛を刺激してくすぐったい。その刺激で、ハッと目が覚めた。
「やっと起きた」
声の方向に顔を向けると、紫陽花がいた。
こっちを向いているので、顔がすごく近く感じる。
「ああ、起こしてくれてありがとう」
「うん、じゃあ行こっか」
「……」
「蓮華?いこうよ?」
「もう一回いいか?」
「もう一回?」
「もう一回、耳に息を吹きかけてくれないか?」
「……好きなの?」
俺は、静かに頷いた。
俺が、女の子にして欲しいシュチュエーションが叶ったのだ。しかし、あの時は寝ていてその感覚を味わえなかった。
こんな不完全燃焼ではいけない。
「お願い!」
「……ん〜分かったよ、じゃああっち向いてて」
俺は、言われるがまま元の位置に顔を戻す。
耳たぶに、紫陽花の指が触れる。
徐々に顔が近づいて来る。
「じゃあ……行くよ?」
「ふぅ〜」
その力強く暖かい息は、俺の耳にダイレクトに伝わり、鼓膜でしっかりと感じた。
まるで柔らかい羽毛で耳を撫でられているかの様な感触。その心地良さに俺は再び意識が落ちて行く。
「おーい、起きろ!」
「起きて蓮華、というか楓ちゃん写真撮ってないで手伝ってよ!」
「これはこれは、いい写真が撮れたわ」
なんか周りが騒がしいな。
その声で、目が覚めてムクリと起き上がる。
目の前には、桔梗達がいた。
「……おはよう」
「おはようじゃねぇ!いつまで寝てんだ」
「そんなに寝てた?」
「ざっと1時間程寝てたよ」
「まじで?」
あかん、寝過ぎた。これが膝枕の威力というものが恐ろしいな。心地よすぎた。
「これはこれは、お見苦しい姿を見せてしまいました、申し訳ない」
「大丈夫、ちゃんと写真に収めておきました」
「やめて、普通にやめて?」
「ったく、いつまでたってもお化け屋敷に来ないから心配したぞ」
「本当にごめん、じゃあ行こうか」
「ちょっと待って、足が痺れて動けない」
紫陽花が、顔をしかめながら少しずつ足を動かしている。よく1時間も耐えてくれたな。
本当に申し訳ない。
「ごめんな」
「いいよ、私から誘ったしね、あともう少しで痺れが取れるから」
「つんつん」
「ひゃ!あっ!やめて!楓ちゃんやめて!」
神奈月さんが、紫陽花の太ももを指でつっついている。神奈月さん、完全に悪い顔をしているな。
しばらくして、紫陽花の足の痺れが取れたので、みんなでお化け屋敷に向かった。




