26話 真っ青ですが脈ありでしょうか?
「いや、久しぶりついでに挨拶したくてね、後からちょっとお茶行こうよ?」
「結構です」
向日葵の声色が、急激に変わった。
この声は、最初の頃の冷たい声だ。
抱きつくのをやめて、周りを見た。正面に向日葵と話している男の子がいた。
ツーブロックのガタイのいい人だった。ピチピチの半袖黒シャツに黒の半ズボンを着ていて、いかにもスポーツマンみたいな格好だ。
「いいじゃん、そこの2人も一緒にどう?」
「私は、嫌だと言ってるんですよ、相変わらず話を聞きませんね」
「向日葵さんもそう言ってます、お引き取りください」
向日葵は、彼に対して睨んでいる。
彼は、少し残念そうな表情を浮かべる。
「そうか、じゃあいいよ、バイバイ」
彼は、その場を去った。
なんなの?じゃあいいよって、知らない人だけどムカつくんだけど。
「あの人誰?めっちゃくちゃ失礼なんだけど」
「……彼は、竹中 剛、私をいじめていた張本人です」
「……まじか、大丈夫?あんな奴中学に居たっけ?」
「あんたは、別のクラスだったから知らなかったでしょうね」
「楓ちゃん同じクラスだったの?」
「ええ、私が同じクラスだったのは中3の頃だから、向日葵ちゃんの事は知らなかったけど、相当タチが悪い奴よ」
「まじか、どうする?もう安全に帰った方がいいんじゃない?」
「それがいいでしょうね、嫌な予感がするわ」
「はい、すみません」
「一応、家の人に来てもらおう」
「そうですね、連絡します。」
向日葵は、小物入れからケータイを取り出し、電話をかける。彼女は、顔色まで青白く変わっていた。余程トラウマなんだろう、事情は知らないけど、あいつが既に嫌いになった。
すると、突然何かが落ちた音がした。
「ぐっ……なにするの!」
「はいはい、大人しくしててね〜」
「……何故貴方まで」
「いや、デパートでたまたま見かけちゃったからね、それより、その電話早く切らないと、この子がどうなってもいいのかな?」
声の主は、茶髪のチャラ男みたいな髪型で、頭にキャップと首にヘッドホンを着けていて、なんかDJみたいな格好をしていた。
そいつは、楓ちゃんの首を腕で締めて、動けなくしている。おまけに、脅しまでしてきた。
なんなのこいつ。
向日葵は、歯を食いしばってケータイの電源を落とした。
「よくやった山中」
「まぁ〜コンビプレイってやつ?連続で来ないだろうって思わせるみたいな?」
「さて、次のお願いだ、君たちのケータイを俺達にくれ、そしてお茶に行こう?飛びっきりの場所を知ってるからさ?」
こいつらグルだったのか。
向日葵も完全に怯えて、体を震わせている。
私は、向日葵を抱きしめる。体が冷たくなっている、私がなんとかしなきゃ。
「わかった、ケータイを渡す」
私は、自分と向日葵のケータイを竹中に渡した。
気味の悪い笑顔を浮かべた2人。
私達は、そのまま車に連れてこられ、知らないどこかに連れて行かれた。