113話 かなちゃんですが脈ありでしょうか?
「はっ!……ここは?」
目が覚めると、俺はベットに寝ていた。
ベットの横の椅子に座っている紫陽花が、ジトッとした目でこちらを見ている。
「保健室だよ」
「……危うく殺されるとこだった」
「いい気味だよ、変態」
紫陽花が俺の頭にデコピンをしてきた。
その瞬間、激痛が走る。
「いってぇ!!」
「あ、ごめん、たんこぶに当たったみたい」
「え、たんこぶってどんだけ強く殴ったんだよ!」
「仕方ないじゃん!あんな教室の真ん中で、セクハラしてきた蓮華が悪いんだよ!変態!」
「変態で何が悪い!」
「こいつ、開き直りやがった!」
「あんたらうっさいわよ!」
仕切りのカーテンから、保健の先生が顔を出して俺ら2人に割り込んだ。
「そんなに元気ならさっさと戻りなさい」
「ご、ごめんてかなちゃん」
「こら、そこの不良上がり!ちゃんと相田先生と呼びなさい!」
「不良上がり……ふふっ」
うちの保健の先生は、俺の知り合いの相田 果南。
ワタポンの元カノで昔からよく遊んでもらっていた。
さらに俺の不良時代を知っているので、よくこうやっていじられている。
「は〜れんちゃんがセクハラするなんて、昔は頭をよしよししただけで顔を真っ赤にしてた純粋ボーイだったのに……」
「ちょ、やめろ!」
「まぁ、青春してるのに横槍入れるのも気が引けるし、おねいさんから一つ忠告しておきます」
「……え?」
「ほらほら、紫陽花ちゃんも聞いててね!」
「え、は、はい」
かなちゃんは、すぅーと息を吸い胸を張って言った。
「やることやってもいいけど、避妊はしっかりしてね!」
「……」
「……」
俺と紫陽花は、顔を見合わせる。
紫陽花の顔が一気に赤く染まっていく。
そして、俺はかなちゃんの方を見て叫んだ。
「あんたが、弩級のセクハラかましてくんなぁぁぁぁ!!」
俺は思った。
この人には敵わない、と。
「はぁ……とんでもない目にあった」
「まぁ、いつもあんな感じだからなぁ」
「……好きなの?相田先生?」
「っええ!?いきなりなんだよ!」
「いや、なんかいつもみたいに変態化しなかったからさ」
「そんな訳ないだろ!つーか俺よりかなちゃんの方が変態だし!」
「ふぅ〜ん、そうなんだ……」
再び紫陽花のジトっとした目で睨まれる。
「ほら、もう教室着いたぞ!」
「……」
「よし、皆待たせたな!」
俺は、この雰囲気をはぐらかすように勢いよく教室の引き戸を開ける。
「お客様、ご注文を頼みやがれ」
「へぇ〜それが客に対する態度かしら?」
神奈月さんと綺麗な女の子がバチバチに睨み合っていた。
教室も静まり返り、異様な雰囲気を醸し出している。
「え……なにこれ?今からガチバトルでも始まるんか?」
「……始まるかも」
「……まじ?」