112話 嫌々ながらも罰ゲームで着させられるハメになったが着てみたら意外と楽しくなっちゃったクラス委員長ですが脈ありでしょうか?
波乱の1日目を終えて、ついに2日目。
俺は、教室の仕切りをつけただけの更衣室いた。
目の前には、ハンガーで吊るされたふりっふりのメイド服が存在感を放っている。
昨日は、なんかアニメ見た勢いで麻痺してたけど、なんか冷静になって考えたら、すっごく恥ずかしくなってきた。
「はぁ〜」
大きなため息をつくと、肩にとんと誰かの手が置かれる。
後ろを振り向くとそこには、桔梗がいた。
桔梗は、すでにメイド服に着用している。
「お互いに頑張ろうぜ」
桔梗は、高校生とは思えない程、哀愁を漂わせながら俺にそう言った。
「……ああ」
俺は、桔梗に背中を押されて、メイド服へ手を伸ばした。
コスプレ喫茶は、今日も大賑わい。
前日の評判が良かったのか、開店早々に列が出来ていた。
「早めに来て正解でやんすね」
「そうですね、皆さんコスプレが似合っていて素晴らしいです」
「お客様、鼻を伸ばしてないで注文しろや」
俺は、変態2人の頭をチョップした。
「おお、会長でしたか!」
「似合ってるでやんすね」
「なんだろう、非常に嬉しくない」
「それにしても、このメイド服素晴らしいですね、パステルピンクに白のエプロンが実に可愛らしいです」
「ふふっ、照れるでやんす」
「さらに、そのメイド服を全く違和感なく着こなし、なおかつ黒のウイッグとCカップくらいの絶妙なバストを作り上げる会長も流石としか言えません」
「テーマは、嫌々ながらも罰ゲームで着させられるハメになったが着てみたら意外と楽しくなっちゃったクラス委員長だ」
「な、なんと、そこまで考えているなんて……」
「……会長、一生ついて行くでやんす!」
ドヤ顔の俺に羨望の眼差しを向けてくれる2人。
やはり、お前らなら分かってくれると信じていたよ。
「そこの3匹の変態、いい加減にしないと、不死身の蓮華ブロマイドを店先で売り飛ばすわよ」
「やめてください!お願いします!」
「ほら、最近流行りの日めくりカレンダーにもしてみました」
「なんで、本人の知らん所でグッズ作ってんの!」
「ちなみに、紫陽花のもあるわよ」
「……いくら?」
「ちょっと待てぇぇぇぇ!!」
「ぐはぁっ!」
俺の背中に、鋭いドロップキックが突き刺る。
そして、倒れた俺に追撃のように紫陽花がのしかかる。
「なに本人の許可なくヤバいもん作ってんのさ!」
「大丈夫、有料だから」
「なにも大丈夫じゃないよ!」
俺の背中の上でぴょんぴょんと飛び跳ねながら怒る紫陽花。
この状況に悩んでいた。
本来なら紫陽花にひとツッコミ入れて、どかすはずだったのだが、背中にドシンときた柔らかい感触に引き止められてしまった。
一体これは……どっちなんだと。
これは、メイド服のスカート越しのお尻の暖かさなのか、それともスカート越しではなく直で俺の背中に乗っているのか?……と。
ここの見極めを誤れば、その後に聞くであろうパンツの解釈が変わってくるからだ。
いや、流石に紫陽花でもそれぐらい気にするだろう……いやあえて紫陽花ならやりかねないか?
「安心しなさい、紫陽花ちゃんと直で座ってるわよ」
「え?」
「……ありがとう神奈月さん、紫陽花は期待に応えてくれると信じていたよ」
「え?えっ?なんのこと?」
紫陽花は、俺に乗っかったまま状況が飲み込めていないようだった。
俺は、その紫陽花にいつも通りあの言葉を言う。
「紫陽花」
「な、なんなの?」
できる限り小さい声で
「いや紫陽花さん、今日のパっ」
そう俺がいった瞬間、俺の顔面めがけて紫陽花の右ストレートが飛んできた。