108話 迷子ですが脈ありでしょうか?
「お待たせしました、フルーツ盛り盛りパンケーキとオレンジジュースになります」
俺は、テキパキとトレイに乗ったパンケーキの皿を風鈴達の目の前に置いていく。
パンケーキとジュースを置いて、とっとと帰ろうと早歩きでその場を駆け出した。
「すみません!」
しかし、すぐに呼び止められた。
渋々、振り返る。
「どうしましたか?」
「あの、写真いいですか?」
紫は、スマホを手に持って、キラキラと目を輝かせてこちらを見ている。
やめてぇぇ!めちゃくちゃ断りづらいじゃん!
くっ……やるしか無い!
「良いですよ」
「ありがとうございます!じゃあじゃあ、近くに行きますね!」
紫は、俺の胸元にくぐっと近づき、慣れた手つきで自撮りみたいな感じでスマホを構える。
「もうちょっと、しゃがんでもらっていいですか?」
「は、はい」
紫の頭に俺の頬をくっつけるようなポーズで、パシャリとスマホが鳴った。
「ありがとうございます!」
「いえいえ」
なんとかバレずにすみ、俺はその場を後にした。
はぁ……死ぬとこだった。
しばらくして、再び休憩に入った。
今度は、約束していた向日葵との回る。
「向日葵、着替えてきてもいいんだぞ?」
「い、いえ蓮華様を1人ぼっちにはさせませんよ!」
「そ、そうか」
向日葵の着ている服は、チャイナドレスでがっつり見える片足の太ももと、スタイルの良さが際立つピチッと感が非常にエロく、誰かに襲われそうなくらい美しい。
しかも、こんなに嬉しそうに笑ってるんだぞ?
やばくない?
そんな美女と共に文化祭を楽しんでいると、俺に再び災難が訪れた。
「あっ、向日葵さん!」
「風鈴君、また会いましたね」
「隣にいるのは……」
「はい、れんっ……」
俺は、即座に向日葵の口を塞ぎ、風鈴に背を向けた。
(向日葵!何ぶっちゃけようとしてんの!さっきの努力を無駄にする気か!)
(す、すみません、つい意識せずに……)
(とりあえず誤魔化すぞ、とりあえず俺の事は適当にサクラちゃんとでも呼べ)
(は、はい、わかりました!)
「あの〜2人ともどうしましたか?」
不思議そうに俺達をみる風鈴。
とりあえず、風鈴の方に向き直り適当にはぐらかす。
「いえいえ、なんでもないです」
「そうですよ、この子は友達のサクラちゃんです!」
「……そう、ですか」
「そういえば、お連れの女の子はどうしましたか?」
「あっ、そうだった!あいつ見ませんでしたか?俺がトイレから戻って来たら居なくて」
「見てないですね、こちらには来てないと思います」
「そうですか……ありがとうございます!」
風鈴は、来た道を走って戻っていった。
「……風鈴、行っちゃいましたね」
「紫が、居なくなったか……すまん向日葵」
「わかりました」
「え?俺まだ何も言ってないけど……」
「先程の女の子、紫さんを探しに行くんでしょう?」
「ははっ、流石向日葵お見通しだな」
「後で、ちゃんと埋め合わせしてくださいね」
「そりゃ勿論」
「はい、ではいってらっしゃい」
「……ありがとな」
俺は、その場を走り出した。