107話 最大級の危機ですが脈ありでしょうか?
俺は、最大級の危機に直面していた。
今すぐにでも、この場を逃げ出したいのに、俺は逃げることは許されない。
何故なら……
「紫、何頼む?」
「何しようかな……このフルーツ盛り盛りパンケーキって美味しそう!これにする!」
「確かにうまそう、あのこれ2つください」
「はい、フルーツ盛り盛りパンケーキ2つですね」
「あと……何にしよう?」
「もう風鈴、優柔不断すぎ!」
「だって、まだ決めて無かったし……」
「じゃあ何で店員さんに注文取らせたのよ!」
「いや、あの店員さん可愛いから呼んでって紫が言ったんじゃねぇか!」
「呼んでとは言ったけど、注文取らせてとは言ってないもん」
「また、屁理屈捏ねくり回してやがって」
「可愛い女の子の屁理屈ぐらい許しなさいよ、そんなんだからモテないのよ」
「いや、ぜぇ〜たい関係無い!」
お客に、弟と知り合いの女の子が来ちゃうという、最悪の展開が目の前に広がっていた。
不幸中の幸いか、コスプレを本気でやったおかげで、まだ俺の正体はバレていない。
しかし風鈴は、未だにうだうだと、注文を決めあぐねている所為でここを動けない!
この野郎、文化祭来るなって釘を打ってたのに来やがって!
帰ったら、覚えておけよ。
俺は、注文リストを真剣に見る風鈴を睨んでんでいた。
「あの、すみません」
「はい、どうしましたか?」
「その衣装ってプリ○ュアのやつですか?」
「そうですよ、友人に作って着てみてと言われた服なので、キャラの詳しい事は知りません」
まぁ、実は全話見てますがね!
「そうなんだ……凄い綺麗ですね」
「そ、そうですか?ありがとうございます」
「なんだか、モデルの人みたいですね、スタイルも良いですし」
「いえいえ、そんな事無いですよ、胸とか無いので、タオルとか詰めてそれっぽく見せているだけです」
「へぇ〜そうなんですね、全然違和感ないです」
「ははっ、ありがとうございます」
紫とのしばらくの会話の後、ようやく注文を全て聞き、厨房に戻って来た。
「やばい、恥ずかしすぎて逃げたい」
「逃がさないよ、今忙しいんだから」
「まさかだよ、弟だけならまだしも、知り合いの女の子と一緒に来るなんて、なんて日だ」
「別にバレてもいいんじゃない?自分で進んで着た訳でも無いんだし?」
「何を言ってるんだ!実の兄が、学校で生き生きと女装してるなんて、その噂が流れでもしたら、俺は軽く死ねるぞ!」
「そんな、大袈裟な」
「そうだよそうだよ!大袈裟だよ!」
厨房に注文を取り終えた紫陽花が入ってきた。
「小岩井さん、パンケーキ2つ〜」
「はいは〜い、パンケーキ売れるね〜」
「まぁ、ただ生クリームと缶詰を上に乗せただけだけどな」
「こういうのは、簡単じゃ無いと店を回せないからいいの!ほら、弟君のパンケーキ出来たよ、行ってきな〜」
「うぐぐぐ……紫陽花、頼む」
「え〜どうしようかな〜」
「ほら、親友がこんなに困ってるんだぞ!」
「……親友ね」
「そうだよ!親友!ズッ友!」
「……なんかムカついたから嫌だ」
「えぇぇ!!なんで!」
「いいから、行ってこぉぉい!!」
「うわっ、ちょ押すな!」
俺は、そのまま厨房から追い出された。
ったく、なんでいきなり不機嫌になるんだよ。
仕方ないので、風鈴達のテーブルに向かった。
「……バカ」