105話 緊張しますが脈ありでしょうか?
「戻ったぞ〜」
蓮華達が、休憩から帰ってきた。
手に下げたビニール袋を机の上に置いた。
「ほい差し入れ」
「おお、さんきゅ、何買ってきた?」
「紫陽花ちゃんおすすめ、2-Bの塩ポンたこ焼きだ」
「これが1番美味かった!」
「なにそれ、全種類食べたの?」
「YES!」
「よく食べるわね〜まぁ、紫陽花なら太らないだろうけど」
「えっへん、鍛えてますから!」
「桔梗達、もうそろそろ休憩じゃ?」
「今入ったばかり、交代よろしく〜」
「へ〜い」
「フロアは、向日葵ちゃんがやってくれてるから頑張ってね」
「任されました!じゃ、デート楽しんで来てね〜」
「デ、デートって」
「まぁまぁ、間違ってる訳じゃねぇしいいだろ」
「そ、そうだけど、なんかムカつく」
「ふふふっ、照れる楓ちゃんもいいですなぁ」
「こら親父、俺達は仕事するぞ〜」
蓮華に首根っこ掴まれて、引きづられて行く紫陽花。
俺は、自然を装って楓の手を握る。
「……行こうぜ」
「……そうね」
俺達は、仲良く手を繋いで教室を出た。
しばらく廊下を歩いているが、会話が無い。
どうしよ、なんか緊張するんだけど。
いやいや、さっきまで普通に喋れたじゃん!
なんか、なんか話題を捻り出せ!
何か!何か無いのか!
俺がそんな感じに葛藤してるのを察したのか、楓が先に口を開いた。
「桔梗君、緊張してるの?可愛い所あるわね」
いつも通りの少し小馬鹿にした感じのイジりを受けて、俺は少し緊張が解けた。
「あん?そんな事……」
俺が言い返そうと、楓の方を見ると顔を思いっきり明後日の方向に向けていた。
楓の顔がぎりぎり見えないくらいそっぽ向いていた。
「……楓さん、人の事言えないんじゃ?」
「そ、そんな事ないわよ?」
「じゃあ、こっち向けよ」
「……い、嫌よ」
「ほらほら、その可愛い顔を彼氏に見せておくれ」
俺は、楓の顔を見ようと動くと、楓はその動きに合わせて見えないように、ポジションを的確に取ってくる。
中々、動きを攻略できない。
ええい!焦ったい!
俺は、痺れを切らして、強引に楓を体を引き寄せた。
すると俺達は、互いに体勢を崩れてしまった。
「いててっ、ごめん大丈夫か?」
「……」
楓は、顔を真っ赤にして俺を睨みつけている。
あれ?なんでそんな顔……。
俺の手に、柔らかい感触が遅れて伝わってきた。
その手は、制服のシャツをめくりあげ、お腹を直に触っていた。
「あの……これは、その……」
「……」
「テヘペロ!」
「死ね!」
彼女の小さい右ストレートが、俺の顔面に放たれた。