104話 エスコートですが脈ありですか?
しばらく労働に励んだ後、私と蓮華は休憩に入った。
「ねぇ、女装したまんまなの?」
「これ着るの時間かかるんだよ、仕方ない」
「なるほど……じゃ今日は、私がエスコートするよ!お嬢様、なんなりと申し付けください」
「お前も成り切ってんなぁ〜」
「ふふん!今日の為にこういう系の漫画読み漁ったからね!」
「じゃ、お言葉に甘えますか〜」
蓮華は、私の腕を抱き寄せ、ピトッとくっついてきた。
慣れない感触がして、ドキッとしてしまう。
私が、ビクビクして蓮華の顔を見上げると、蓮華が笑顔で返してきた。
誰だこの美少女。
さっき受け止めた時も思ったけど、原作知らない私でも可愛いなぁと思うレベルだよ。
はぁ……これでまた、楓ちゃんのターゲットが増えてしまったよ。
「な、何をしてるんですか!」
正面を見ると、そこには向日葵がいた。
私達を指差して、プルプルと震えている。
「向日葵、委員会の方は終わったのか?」
「は、はい、ってそんな事より、そ、その格好は何ですか!」
「その格好って、俺も好きで女装してないぞ?」
「いや、違います!その腕を抱き寄せている状態の事ですよ!」
「まぁ、今日はこんな格好だし、いつもと逆でやってみようかと」
「……なるほど、次は私ですよ!絶対ですよ!」
「お、おう、わかったよ」
「では、教室の方に行ってきます、蓮華様忘れないでください!」
「おーう」
「頑張ってね〜」
こうして向日葵は、嵐のように過ぎていった。
「なんか、張り切ってるな向日葵」
「こういうイベントごと、あんまりしてないんじゃない?」
「そうだな、中学の時も色々あったしな」
「まぁまぁ、折角の文化祭なんだから、思い出に浸るんじゃなくて、思い出を作って行かなきゃ!」
「それもそうだな、どこに行く?」
「たこ焼き!たこ焼き食べたい!」
「ははっ、わかったわかった」
私達は、文化祭を楽しんだ。
たこ焼きや、ポテチを食べたり、射的やわなげなどで一通り遊んだ。
そろそろ休憩時間も終わりが近くなったので、私達は教室に向かっていた。
その途中、目を引く張り紙が掲示板が貼られていた。
「ねぇねぇ、蓮華これ見て」
「ん?どうした?」
私が見つけた張り紙には、『ミス大牟田コンテスト』と大きな文字で書かれていた。
「こういうのって出る人っているのかな?」
「ナルシストしかでないだろそんなん、紫陽花、試しに出てみたら?」
「いやだよ!こんな恥ずかしさの塊みたいなの!」
「はははっ、そうだよな冗談だよ」
「やめてよね!もう行くよ!」
「へいへーい」
そう言って、私達はその場を後にした。
この時、私達はまだ知らなかった。
この行事が、私達に襲い掛かろうとしている事に。