103話 ときめきですが脈ありでしょうか?
「いらっしゃいませ〜」
ピンクのフリルを揺らしながら、にこやかに接客する女の子……ではなく男の子がいた。
時にコスプレをネタを挟みながら、お客さんを楽しませながら、出し物を盛り上げている。
「お前、完成度高すぎない?」
「そりゃ、この時の為に本家を全話見てきたからな!」
「まじかよ、レベルが違いすぎるんだけど」
「小金井からも言われたのさ、半端なコスプレこそ、1番恥ずかしいとな」
「いや、それにしたってやべぇよ、だって違和感が背が高いくらいしかねぇし」
「そりゃ嬉しいね、本気でやった甲斐があるわ〜」
「はぁ〜結局、1番恥かいたのは俺かよ〜」
「まぁまぁ、あっ3番さん呼んでるから行ってくるな」
「へいへ〜い」
俺は、厨房から出て3番のテーブルに向かった。
その後、足首からグキッ!っと鈍い音が鳴った。
痛ってぇ!やばい、慣れない低めのヒールで足を踏み外した。
やばい、倒れる!
咄嗟に受け身を取ろうとしたが、体勢を崩した先には、柔らかいものに受け止められた。
「大丈夫ですか、お嬢さん」
俺は、振り向くとそこには、スーツを着たイケメンが爽やかに笑っていた。
「あっ、大丈夫です……ありがとうございます」
「そう?良かった」
俺は、イケメンに手を借りて立ち上がった。
ふと気がつくと、周りのお客さんがパチパチと拍手をしていた。
俺は、なんだか恥ずかしくなり、すみませんすみませんと会釈しながら、手早く注文を聞いて厨房に逃げ込んだ。
「ふゅ〜う、おかえりお姫様」
「やめいやめい!恥ずかしくて顔から火が出そうだわ」
「おっ早速、王子様が来たぞ〜」
厨房に、さっきのイケメンが入ってきた。
「蓮華、大丈夫だった?足怪我してない?」
「おう、イケメン紫陽花のおかげで大丈夫だ」
「それにしても似合ってるわね、さっきもキャーキャー騒がれていたし」
「うん、皆にカッコいいって言われて楽しいよ!」
「なにこのピュアな子、天使?」
「いやいや、お前にとっては王子様なんじゃ?」
「だから、やめろっての!」
「ようやくイジれるネタを掴めたのに、離すわけねーじゃん」
「ぐぬぬ、こいつめ……」
「蓮華君、真っ赤になってたわね、本当に女の子みたいだったわ」
「うん、可愛かったよ〜」
「お前らまで……なんか、紫陽花の気持ちがわかった気がする」
「ふふん、いつものお返しだよ!」
あの時、ガチめに紫陽花にときめいてしまった事実は、墓場まで持っていこうと思う蓮華なのであった。