102話 奏でる純愛の花ですが脈ありでしょうか?
「いらっしゃいませ〜」
白と黒のメイド服を着て、元気に接客する男がいた。
まぁ、俺なんだけど。
テキパキと注文を取り、厨房に向かう。
教室の三分の一を壁で仕切って、厨房代わりに使っているのだ。
「2番さん、オレンジジュース2つとパンケーキ2つで〜」
「はいは〜い」
同じクラスの小岩井が、慣れた手つきでパンケーキを作っている。
「皐月君、オレンジジュースお願い〜」
そう言って小岩井からコップを差し出された。
俺は、コップを受け取り、クーラーボックスのオレンジジュースを取り出して、コップに注いだ。
「皐月く〜ん」
「なに?」
「そのかっこ、似合ってるよ」
小岩井の方に視線を動かすと、ニヤニヤとこちらを見ている。
「はぁ〜もうイジらないでくれ、今日だけで俺のメンタルは、ボロボロなんだよ」
「ふふっ、本当に卯月君達は、ムードメーカーね」
「そりゃ蓮華と楓だけだ、俺はほとんど振り回されてるだけだっつーの」
「まさか、皐月君がメイド服を着るなんて思わなかったよ」
「クラス全員に笑われたのは、一生分のトラウマになりそうだ」
「はははっ、ごめんごめん」
小岩井と雑談をしていると、誰かから後ろから服の裾を引っ張られた。
後ろを振り向くと楓が、裾を引っ張っていた。
どこか不機嫌そうな顔で、俺を睨んでいた。
「どうした楓?」
「……なんでもないわ」
「はいはい、パンケーキ出来たから持っていってね〜」
「おう、さんきゅな、楓行こうか」
「……うん」
「神奈月さん」
「ん?」
「ごめんね、嫉妬しちゃった?」
小岩井がそう言うと、楓は顔を赤くしてさっさと厨房を出てしまった。
「あらあら、意地悪しすぎたかな」
「お前は、ドSだなぁ」
俺は、オレンジジュースとパンケーキをおぼんに乗せて、厨房を出た。
お客さんに、オレンジジュースとパンケーキを出して、そのまま廊下に出た。
楓が、廊下で客引きをしている。
「よっ、楓ちゃんどうだい?」
「まぁぼちぼちね、どっかの誰かさんは、小岩井さんとイチャイチャしてたみたいだけど」
「イチャイチャってただイジられてただけだぞ」
「……分かっているわ、でもなんか嫌なのよ」
「へいへい、ごめんごめん」
俺は、拗ねている楓の頭を優しく撫でた。
撫でていると、拗ねている表情が少しずつ和らいでいった。
「つーか、蓮華はいつ来るんだ?」
「多分、もうそろそろ来ると思うわ」
そんな事を言っていると、廊下の奥の方で人集りが出来ていた。
「まさか……まさかだよな」
「一応、行って見ましょうか」
俺達は、2人でその人集りに近づいて、中心には1人の男がいた。
ピンクのひらひらした、短めのドレスに身を包み、胸元には薔薇型のアクセサリーで止めてあるリボンをつけていた。
彼は、片手でピースをつくり、それを顔に当てキメポーズを取って叫ぶのだった。
「奏でる純愛の花、キュア○ーズ!」