100話 手遅れですが脈ありでしょうか?
「それでは次は、おいらが行くでやんす」
小金井君は、持っていたスケッチブックをみんなに見せた。
スケッチブックには、半袖と赤いブルマの少し昔の体操着みたいな服だった。
「ほうほう、ブルマか」
「旧世代の体操着って感じだよな、ブルマなんて着てる女子、漫画でしか見たことないし」
「なるべく抵抗感を減らして、なおかつ作りやすさと可愛さを最大限に引き出せる服だと思うでやんす」
「確かにこれなら、そこまで恥ずかしくないよ」
「なんか学校関係多いな」
「まぁ、コスプレであんまり可愛さや過激さを抑えるとこうなっちゃうよな」
ブルマか……悪くないな。
あのお尻から足にかけてのラインが、綺麗に健全なエロを醸し出しているよな。
こういう一見普通の服だけど案外露出の多い服は、スタイルがくっきり見えるから余計にエロく見えるんだよな。
素晴らしい。
「……なんか嫌な予感がするんだけど」
「おっ?いやいや、なんでもない!さぁ、遂にお待ちかねの俺の番だぞ!」
「誰も待ってないよ、この変態」
「俺の素晴らしい案に感動するがいい!はいどん!」
「えっ?」
3人とも俺の案を見た途端、黙ってしまった。
「あり?これダメ?」
「いや……別にダメってわけじゃないけど」
「なんというかなぁ?」
「そうでやんすね」
「お前、スーツとかめっちゃ普通じゃん」
「普通で悪かったな!」
俺が出した案は、スーツに帯刀というアニメでよくある感じの服装である。
「なんというか、肩透かしを食らった感じ」
「くそっ、お前のことを考えて選んだのに!もういい許さん!いかがわしいコスプレに変えてやる!」
「ストップ!悪かった!私が悪かったからやめてください!」
「つーか本当にいいのかこれで?」
「ふふっ、桔梗君はわかっていないな」
「そうでやんすね」
「いつの間にそっち側いるんだよ小金井」
「ただメイド服を着るだけじゃあ、そのポテンシャルは引き出されないのさ」
「ただ着るだけで真っ赤になってた奴がよく言うよ」
「で、結局なんなんだよ?」
「そりゃ……」
その瞬間、学校のチャイムが部室に鳴り響いた。
「ってやべぇ!もうそんな時間かよ!」
「全力でダッシュすれば間に合うでやんす!」
「速く速く!ほら紫陽花行くぞ!」
「え!?ちょ!待って待って!」
俺は、紫陽花の腕を掴んで走り出した。
次の授業は、確か古典だったはず。
古典は、うちの担任の原ちゃんだから遅れたら、最悪反省文を書かされる。
間に合え! 間に合え!
俺は、最速で教室の前に着き、激しく引き戸を開けた。
「おっしぁ!間に合った!
「危ねぇ〜」
「……」
前の桔梗が教室へ入っていく、それについて行くように俺も歩き始めようとした。
しかし、俺は動けなかった。
誰かに後ろから強い力で腕を引っ張られいる感じだ。
後ろには、紫陽花しかいないはずなのに。
「蓮華君」
「えっ?神奈月さんいつからそこに?」
「そんな事より、後ろ後ろ」
「後ろ?後ろって言われても紫陽花しかいない……」
俺は、数秒の沈黙で全てを理解した。
というか、ようやく理解した。
そうだよ。 そうだよな。
紫陽花、メイド服から着替えてねぇわ。
「……こんの……ばかぁぁぁぁ!!」