ゾンビが徘徊する夜に(前編)
私立顧問探偵………憧れますよねぇ。
と、ノリノリで書いた作品です。読んで頂けるとありがたいです。
「嗣岵、今日の夜に町外れで絞殺事件があった。被害者は父親と子供。犯人は明確な目的がありそうだ。現場には手袋とハンマーが残されていた。犯人は絶対に許されない。なんとかならないか?」
警部の言葉に、「彼」は少し面倒くさそうな顔で、答えた。
「なあ、そんな顔するなよ。頼むっ!」
警部の名は玲峰勤。よくココにやって来ては「彼」に依頼するのだ。 四十代の大柄な男が小柄な二十代後半の男に頭を下げているこの画は、とてもシュールだった。
「すいません玲山警部……。あ、お茶です」
「ああ、ありがとう。…………そうだ…!君からもなんとか言ってくれ!」
玲山警部が私に泣きつきだした時、ようやく「彼」は一言、こう言った。
「はぁ………………………。事件の詳細を教えて下さい……」
「彼」は特別な職業に就いている。彼自身は私立探偵を名乗っているが、探偵というには、少し特殊な案件ばかり扱っているため、私や玲山刑部は『犯罪調査コンサルタント』と呼んでいる。
さて、彼を『私立探偵』として有名にした事件は、今から1年前に遡る。
私……和戸公太が勤めていた屋敷にある犯行声明が出された。それは有名な怪盗からのもので、彼はその怪盗ライバル関係にあったこと有名であったから屋敷に呼ばれたのだ。その怪盗が盗むといったのは、屋敷の主が持つ小型の、黄金でできた時計塔の模型である。私は大変まじめな性格であったから、唯一その時計塔の模型の管理を任されていた。読者諸君はこの先の展開が分かっただろう。
時計塔の模型は見事盗まれ、管理を任されていた私が1番最初に疑われた。その時僕の嫌疑を晴らし、怪盗をあと1歩まで追い詰めたのが、彼なのである。私は自分を助けてくれた彼の下で働くことを決めた。
後にその事件は『消えた時計塔事件』としてマスメディアに大きく取り上げられ、探偵、嗣岵峰輔は世間に周知されるようになった。
「事件が起きたのは今日の午前2時頃。公園の木に絞殺死体となっている男と子供が発見された。えー、ふたりは親子で、近所に住んでいる3人家族の、父親と長男。2人の首は1本の長いロープで繋がっておりそれを辿ると、ハンマーが括り付けられ川の中に沈められているのを発見した。夫の方には多額の保険金があったというし、目的はそれだろう。今のところの容疑者はこの家族の母親の姉。だがしかし、彼女はそこから数百メートル下流で遺体となって発見されている。このことは胃の内容物の消化具合から分かった。しかも、だ。彼女がただ流されてるならまだしも、川から這い上がろうとした跡まである。死亡推定時刻を調べてみたところ、なんと死んだのは親子が死んだしちょっと前のことだ。ちなみに、他の彼らの関係者で、殺害が可能な人間はいない。ありえるのは先程言った被害者の妻の姉だけだ。捜査本部じゃもゾンビが殺した、なんて馬鹿な話まで広がっている 。でもなあ、ゾンビが犯行するわけないし……なあ、これは他殺だと思うか? それとも他殺に見せかけた自殺なのか?」
と、刑部自身も理由が分からなくて疲れた様子で嗣岵に問いかけると、彼は少しだけ唸り、こう言った。
「ゾンビなら実在する。しかも彼らか人を殺すことも、可能だ」
それじゃあ、1回調査をしたいから、被害者の家に行かせてくれないか? とも言った。
「警察の方がどうしたんですか?」
と被害者の妻が不思議そうに尋ねる。嗣岵は特に気にする風もなく、事件の調査です。答えた。
「ああそうだ。台所をお借りしてもいいでしょうか? これでも僕は紅茶にうるさいんです」
とだけ言ってすぐに彼は台所に引っ込んでしまった。
そこから、私は彼女に被害者の人となりや怨んでいそうな人など、基本的なことを聞いていった。自分でも1つ、推論をしてみたいと思ったからである。
どうやら主人も子供も優しい性格らしく、怨まれているなんてとんでもない、と言っていた。ただ、自分の姉に関してはお金のことばかり考えてるような人だっただったと苦笑していた。そうしていると、かすかに甘い香りがした。嗣岵が戻ってきたのだ。私は彼に彼女から得た情報を彼にも伝えようとすると、彼はソレを手で制した。
「いい。もう良いんだよ、和戸くん。真相はもう分かったんだ」
「本当かっ!」
玲峰警部はたいそう嬉しそうにしていた。
それはまあ、この難解な事件をもう解いたと言うのだから当たり前だ。
だが、彼にはわかったという真相が僕にはとんと想像がつかない。いったい、どうやって親子は殺害されたのか。唯一アリバイがあり、金銭目的という動機があるも、親子は殺されるよりも先に死んでいた被害者の男の義理の姉はこの事件とどのように絡んでくるのだろうか?
さて、皆さんは謎が解けましたか…?