アクロバティックな帰宅術
拠点の空き地に、ホームセンターで買ったものを広げてみた。
ロープ100メートル 1068円
厚手塩化ビニル手袋 284円
長靴 1834円
脚立 2894円
ゴンドラルーボー10巻セット(特価)
4000円
何とか1万円以内に収まった。
時計を見ると午後2時。夜まで、買ってきた漫画を読んで時間をつぶすことにした。
※※※※※※※※※※
深夜3時。いよいよ決戦の時だ。慣れないつま先立ちで家の前まで歩いてきた。
最初の壁は足下の有刺鉄線。だが俺は構わず歩く。有刺鉄線は長靴を貫通して深々とブッ刺さった。
だがその先に俺の足はなく、ただ紙くずがあるだけだ。
そう、読み終えたゴンドラルーボーのページをくしゃくしゃに丸めて長靴の3/5ほどに詰めていたのだ。俺はその上をつま先立ちで歩いていた。
俺は長靴を棘に刺したまま、つま先で踏ん張ってジャンプ。無事、最初の関門を突破した。
さて、次から一気に成功率が低くなるが、ここまできてやらないわけにはいかない。
俺は庭に脚立を置いて1番上まで登り、2階の窓に向かってロープに石をくくりつけたものを投げつけた。狙い通り石は窓ガラスを割ったが、今の音で番犬が起きてしまった。
だが脚立があるので大丈夫…と思っていたが、犬の跳躍力を舐めていた。足下に向かってジャンプして噛みつこうとしてくる。どんな訓練されてるんだよ。
片足を交互にあげて対処しながら、ロープを引き戻してくくりつけていた石を外し、輪っかを作って投げた。
窓をロックする部分に引っかけようとしたが中々上手くいかず、六投目でやっと成功した。
そして脚立から壁に移り、ロープを伝って壁を登っていく…!
もちろん、そんなサ●ケみたいな芸当が出来るわけもなく、ロープはぷちっと音をたててちぎれ、俺は地面に叩きつけられた。
「ぁぐっっ」
痛さの余り変な声が出たが、そのまま倒れているわけにもいかなかった。今の音で親が起きたのだ。
父が玄関から飛び出してきた。奴は右手を巨大なアイスピックに改造してやがった。
「どこ行ったアイツ……」
父は、アイスピックの先を不気味に光らせながら庭を回って俺を探したが、しばらくすると諦めて家に戻っていった。
助かった…とっさに庭の木の茂みに隠れていたので見つらなかったが、見つかったら今頃刺し殺されていた頃だろう。
家に入りたいが、捕まって死んでしまっては意味が無い。僕はあくまでも話し合いで平和的に解決したいのだ。
……腕をアイスピックにするような奴と平和的な解決なんて出来るのだろうか…?