トラウマ確定初バイト
さて、どうしたものか。
今となっては要塞となってしまった僕の家は住宅街に建っている。その家の斜向かいは売地となっており、不法投棄された家具などが雑然と散らかっている。ここを拠点とし、家に入る方法を考えることにした。
奴らがどんな罠を仕掛けたかを知るために、携帯でそばの出前をとり、家に行くよう仕向けた。その様子を俺が後ろでモニタリングする。
しばらくすると、そば屋のバイクに乗った青年が家の前まで来た。店の制服の胸ポケットに『研修中』と書かれたバッジがつけてある。
「ちわーっ」
と青年は元気に玄関に行こうとしたが、足下の有刺鉄線の柵に気付かず、引っかかって転倒。
すると庭から猛犬が6匹ほど現れ、食い殺さんばかりの勢いで青年に襲いかかる。
そして玄関のドアから、麻酔銃と虫網を持った父が、
「かかったか!」
と言い鼻息荒く玄関から飛び出してきた。
だが、青年の顔を見ると、
「これはこれは……失礼いたしました。」
と丁寧に謝った。しかしその顔は明らかに落胆していた。捕まっていたのが俺だったら、何をするつもりだったのだろう。
「え?蕎麦?ウチはそんなもの頼んでませんが……配達先をお間違えになったのでは?」
そば屋のバイトは完全に生気を失った顔で、店のバイクも家の前に置き忘れてとぼとぼと歩き去って行った。
研修生には気の毒だが、これで玄関のトラップは大体把握できた。
しかし、ここで1つ疑問が生じた。
両親はどうやって家を出入りしているのだろう?