実家が要塞になってた
「おいおい……」
呆れとも驚きともつかぬ声が口から漏れた。そりゃ誰だってこんな反応するだろう。
自分の産まれ育った家が要塞のようになっていたら。
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俺はシーザー。
今年で23になるいい大人なのだが、高校卒業後はどこにも行かず、親のすねをかじって自堕落な生活をしていた。
毎日ネットに明け暮れ、飯もたまにしか食わず、たまに外出したと思ったらアニ●イトで一万以上の買い物をしてくる俺のことを、当然ながら両親は良く思っていないようで、一昨年ごろから俺を更生させようと徹底的な取り組みを初めた。
ネットを解約し、一日中ステレオでクラシックを流し続けるという嫌がらせを受けたが、
ネットは余所に行けばいくらでも出来るし、何故これで更生すると思ったかは分からないが、クラシックも耳栓をつければ余裕で対処出来た。
次に奴らは俺に対する水、食事の提供をストップし、兵糧攻めに作戦を切り替えたが、頭の回転が早い俺は2階の自室から玄関前までに縄ばしごを架けた。そこから脱出して食料を手に入れることが出来たので、これも問題なかった。
業を煮やした両親は遂にとんでもない手段に出た。鍵穴の隙間から、1時間に1回、俺の部屋にミミズを放つというものだった。
始めは無視していたが、1か月も経つと部屋の中はおぞましい状態になり、さすがの俺も我慢出来ず、荷物をまとめて家から出て行った。
それからしばらくは漫画喫茶などで時間をつぶしていたが、1週間過ぎ、頭を冷やして良くよく考えてみると、いい年になっても働かずに家に寄生している自分が恥ずかしくなってきた。
よし、家に帰って今までのことを全て謝ろう。そしてまともに働き始めよう…今からでも、まだ間に合うはずだ。そう思い、駆け足で家に帰った…
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そしてこの有り様だ。家は鋼鉄で固められ、窓からは砲台が覗き、周りは有刺鉄線の柵で囲まれている。
奴らは何としてでも俺を家に入れない気だろう。
上等だ。中高帰宅部の俺の意地を見せてやる。