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修行

「なるほど、じゃあ今の俺達は何もしなくてもお金が貰えると」


 いいことを聞いた。


 Sランク以降の冒険者には毎月、ランクボーナスという形で金貨5枚を給付されるのだ。

 つまり、毎日家でゴロゴロダラダラしていても勝手にお金が入ってくるという素晴らしい人生を送れるのだ。


「ええ、ただ指名依頼の頻度は多くなって、危険な依頼も増えますからリスクの方が大きいですよ」


 長期遠征などの依頼も増えるらしく、有名になればなるほど指名が多くなるらしい。


 面倒な話だな。まぁ、それだけ腕を買われているってことだろうけど


 こちらとしても多額の報酬が期待される分、指名依頼は有難い。


 それに俺の目的も果たしやすくなるしな


「んじゃあ、暫く暇だな。白、森でも行くか?」


「ん?何するのじゃ?」


「あそこには強いモンスターがたくさんいるだろう?だから少しお前の経験値稼ぎにでも行こうと思ってな」


 白の、というのは勿論だが、俺の為というのも含まれている。

 今の俺達に圧倒的に足りないのは経験値だ。ステータス上の意味ではなく、実戦での話だ。

 敵を圧倒するだけの力は確実に備えている俺達だが、それは低ランクの雑魚どもに関してだけで、今後戦うかも知れない、王種に立ち向かうには物足りなさを感じていた。


 今のままじゃアイツにも勝てないだろうな


「む、そいうことなら妾も行くのじゃ!ククク、久々に暴れてやろうぞ!」


 白もだいぶ意気込んでいるようだ。

 あの事件依頼、久しぶりの戦闘なので楽しみで仕方ないといった感じだ。


「よし行くか」


「ーーーちょっと待ちなさい」


 俺達がこれから出発しようというところで待ったがかかる。

 そこには美人エルフのギルマスが立っていた。


「あそこは今、立ち入り禁止区域よ。いくらあなた達とはいえ、簡単には容認できません」


「どういうことだ?確かにあそこのモンスターは桁が違うが、俺達なら問題ないはずだぞ?」


 俺達の実力ならレギノアス戦で確認しただろうに


「はぁ、まぁいいわ。こっちへ来てちょうだい」


 俺達はギルマスの後ろについて行く。

 なんというか、今日も大胆な服装で周囲の男共は目を釘付けにしていた。


 そして俺達はいつものようにソファーに座り、出されたお茶とお菓子をいただく。


「あなた達にもいずれ通知が来るでしょうから先に行っておくわね。戦争よ」


 ギルマスは真剣な表情で告げる。


 戦争か………


「相手はゼフォードだろ?そして魔の森を諸共せず、進軍を図っている…違うか?」


 俺の予想はどうやら的中だったらしい。

 ギルマスが信じられないと言った顔でこちらを見ている。

 こんな予想は猿でもつくだろう。

 Sランクの俺達が森に近づくことを禁止して、その上戦争というキーワードまで出たんだ。答えを言っているようなものだぞ。


「え、ええそうです。ですからあなた達はあの森に近づかないようにーーー」


「あの森には強力なモンスター達が沢山いる」


 俺はギルマスの言葉を遮って立ち上がる。

 それに対してギルマスは少し驚いていたが、白は別の物に関心中だ、こちらになんて目もくれない。

 気を取り直して続ける。


「どうせ今頃森の中を偵察にでも言っているんだろう?そもそもゼフォードとの国境もあの山脈だからな、俺達冒険者が変に森で問題を起こさないためにも立ち入り禁止にしているんだろうが、その偵察とやらも結局は非力、Sランクモンスターが出ては仕事にもならないだろう?」


 レオンに聞いた話だが、この国の軍部の実力はトップでもAランク程度、それも官僚レベルでだ。となったらその偵察部隊はせいぜいC、言ってもBぐらいだろう。

 それでは簡単に部隊が壊滅してしまう。戦争の偵察に来たのに、それでは本来の目的を果たせない。


「大体、軍の奴らはモンスターとの戦闘に慣れているのか?それなのに森に向かおうなんて、この国の軍部は終わっているな」


 本当に終わっていると思う。

 貴族の動かす王国軍部は野蛮な冒険者達とは相容れたくないのだろう。実に幼稚じみた理由だ。幼稚過ぎて笑えてくる。


「そこでだ。ギルマスにお願いだ」


 ギルマスは少し嫌な顔をする。巻き込むなと目で訴えてくる。

 しかし、立場的にギルマスが一番適任なので、恨むなら自分の過去を恨んで欲しい。


「俺達を偵察部隊の護衛として出して欲しい」


 俺はギルマスに頭を下げる。

 悪ふざけなどは一切ない、本気のお願いだ。

 ギルマスは困惑しているように見えたが、俺の誠意が伝わったのだろう、俺に顔を上げさせ、ニッコリ笑った。


「嫌です」


「え?」


 今なんて?ちょっと聞き取れなかった。


「嫌ですよ、ただでさえ忙しいのにこれ以上面倒ごとを起こさないでください」


 ギルマスは少し怒っているようにみえた。

 そこがまた可愛い。じゃなくて、、


「そ、そんな〜!頼む!この通りだ!」


 俺はソファーの横から土下座をする。

 流石にそこまでいくと白も興味を持つのかこちらを嬉しそうに見ている。

 ………ん?嬉しそうに?


「なんじゃ!?ユウジ、ベヒモスごっこか?」


「ぐえっ!!」


 白は何を勘違いしているのか俺の上にダイブする。

 結局、白のせいでその場は流れ、許可ももらえなかった。


「ククク、ハハハハハ」


 外に出た俺は高々と笑い声をあげる。

 ギルマスめ、それで俺を押さえ込んだと思っているなら勘違いも甚だしい。

 俺には『転移』がある。そもそも俺達はどこからここに来た。実際にはダンジョンからだが、転移先はあの森だ。登録されてないわけがない。


「白、今から一狩しようぜ!」


「うむ、妾も運動したいのじゃ!」


 話はまとまった。

 そして俺達は『転移』を使って以前と同じ場所に来た。

 少し風景が違っている気もするが、そんなことはどうでもいい。


「白、モンスターを見つけたら教えてくれ」


「うむ、了解したのじゃ!」


 それから俺達は、モンスターを見つけた端から薙ぎ倒していく。

 レギノアス、キマイラの懐かしい顔ぶれも容赦なく燃やし、砕き、切り刻む。気づけばもう昼時だ。

 俺達は倒したモンスターで適当に昼食にする。


「白、そろそろレベル上げは良いだろう。次のステップだ」


 別にそんなことは始めには考えていなかったが、モンスターを倒していくうちに思いついたことがあった。というのも、ここのモンスターは弱過ぎる。俺と白にとってはアリと戦っている気分だった。


次のステップ(ついおすへっふ)何をするんじゃ(ないおふるんひゃ)?」


 白は肉にかぶりつきながら聞いてくる。


「簡単だ。白、俺と勝負しろ」


 そうして俺達はタイマン勝負をすることになった。

プラヴレ大改稿のお知らせ。


今回の投稿で一度プラヴレの投稿中止します。

大変中途半端なところでの今回な決断になってしまいましたが、続きは必ず書くつもりです。


今回の大改稿は1話目からこの回までの話を全てリセットして書き直します。

といっても、人物設定を多少いじったり、今後の話の伏線を張り巡らしたりということだけで大まかな内容に変更ありません。

しかし、今のプラヴレはあまりにも内容が希薄でして、今後の展開につなげにくいということもあって、大改稿したいと思いました。


ということで、2020年4月1日までプラヴレの更新はありません。そして、途中話を書き直す際に日を跨いで話の流れに不自然なところが生じてしまうのでご了承ください。


勝手なことですみませんが今後もプラヴレをよろしくお願いしますm(__)m

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