逃亡者
お久しぶりです。
投稿停止中の間も読んで頂いてありがとうございます。
ど素人の書いた話にブクマ等もして頂いて、本当に感謝です。
だいたいこの話の完結話まで考えることができたので、今後もプラヴレをよろしくお願いしますm(__)m
【お知らせ】
毎月第4月曜日の18時に投稿します。
第4章開幕につき、第3章までの所をだいぶ改稿しました。内容的には大した差はないのですが、少々都合のいいように書き換えたところがあるのでよろしくお願いします。
第4章スタートです!
「はぁ、はぁ、はぁ」
静かな夜の森の中、木々の隙間から吐息が漏れる。
ここは魔の森。
ゼフォード王国とアークダム王国を分けるリアクシアス山脈の麓に位置するこの森は、強力な魔物が住む森として有名で、ここを通り抜けることは不可能とされてきた。
そのため、ゼフォードとアークダムの間では国家間でのやり取りが無く、疎遠状態が続いていた。
「なんで私がこんな目に会わなきゃいけないのよ〜」
黒装束の女は再び魔の森を走り抜ける。
しかし、そんな彼女を逃さない魔物達がこの森には山ほどいる。
「うぅっ!!………まだ……追ってくる…なんて!」
彼女は走りながらも後ろを振り向く。
この夜の中、何が自分を追ってきているのかは分からなかった。
そして彼女には成し遂げなければならないことが一つあった。
(待っててね!………神谷君!)
***
彼女は闇の中をその一点の光を頼りに走る。
もうどれだけ走ったか分からない。
体力もだいぶ底が見えてきて、足も震え始めた。
「まだ……まだ、終われない。彼に伝えるまではーーー」
その時、彼女は木の根に足を引っ掛けてしまい、そのまま崖の下まで転がり落ちてしまった。
「………」
***
冒険者ギルドアレッシオ支部。
今日は俺達『白銀』のSランク昇格祝いとして一階の酒場で宴会が催されていた。
「史上最年少パーティの史上最速Sランク昇格とは……全く、見事なものだぜ!」
冒険者の酔っ払いおっさん達は酒の勢いで俺に絡んでくる。汗と酒の臭いで俺の鼻はもげそうである。
「おいおい、その辺にしてやれよ?少なくとも俺達よりは上に値する存在だからな」
ルージスが困り果てている俺に助け舟を出してくれる。
そして酔っ払ったおっさんどもは解散していった。
「よぉ、早速抜かれちまったな」
「安心しろ、俺はここで留まる男じゃない。すぐにSSSまでいってやる」
この世界の冒険者の頂点に君臨する者。
どれほどの者かは知らないが俺には絶対的な自信と圧倒的な力があった。
とはいえ、この前の悪魔…あの能力は知らなかった。警戒は必要だな
「ハハ、そうかよ………そういえば、お前、あの子とはどうなんだよ」
ルージスが俺の腹をつつきながらそんなことを聞いてくる。
「あの子?」
「ほら、あの〜……管理局の……」
そこで俺はルージスが何を言いたいのかわかった。
「ビアンカか?」
「そうだ。で?どうなんだ?」
こいつ、こんなキャラだったか?
いつの間にキャラを変えたのだろうと疑問に思う。
そこは置いておいて、俺はビアンカとは何もないのだから何も言いようがない。
むしろ何もなさすぎるというか、いや、一度だけラブコメっぽい事をした気もするけど………まぁ、だからといって何かしようとは思わないがな
「ふっ、寧ろ何も無さ過ぎるくらいだな」
何となくキメてみる。
ルージスはなんとも言えないような顔でこちらを見つめる。
「やめろ!憐れむな!」
「悪い悪い」
ルージスは悪びれる様子もなく、謝る。
そんなこんなで楽しいひと時を過ごしたのであった。
ちなみに白はというと、出された料理を片っ端から食い漁って、今は満腹になったようですっかり寝てしまっていた。
***
翌朝。
「あら?ユウジ君じゃない、帰ってきてたの?白ちゃんは?」
俺が散歩でもしようと下に降りてみると、朝食を済ませたビアンカに遭遇した。
「今はまだ上で寝ているよ」
「ふふふ」
ビアンカは不気味な笑い声で天井を見上げる。おそらく白の寝顔でも妄想しているのだろう。
なんとも危険である。
「犯罪は起こすなよ?」
「ば、バカ言わないで!私は白ちゃんの身の安全を確認しようと思っただけから!だからそんな目で私を見ないで!」
ロリコンめ。
何故俺の周りはこんな奴ばかりなのだろうか。しかし、今更それを言っていても仕方がない。
そういえば結局、あのお姫様とはほとんど話さなかった。勇者(仮)に恋をしているあのお姫様にも事情聴取が入り、こちらも忙しかったので、会う機会も無しに帰ってしまったのだ。
あの悪魔についても気になることが山積みだからな
「どうしたの?そんなに思い詰めて」
気づくとビアンカの顔がすぐ目の前にあった。
実際のところ俺に性欲なんてものは存在していない。しかし、ユウジだった頃の感覚でどうしても一瞬、ドキッとしてしまう。
「い、いや、何でもない」
「そうかしら?でも、いつでも相談に乗ってあげますからね」
そう言ってビアンカは部屋へと戻ってしまう。
最近思うのだが、俺に対する態度が軽いというか、馴れ馴れしいというか、別に改めて欲しいというわけでもないのだが、俺もこの世界に馴染んできているということなのだろうか。
いや、俺はゼロだから慣れるのは当たり前なのか?
「ま、いっか」
俺は大きなあくびをしながら宿を出て行った。
***
冒険者ギルドアレッシオ支部。
Sランク昇段から初めての依頼を受ける為、俺達はギルドまで来ていた。
俺は周囲を見回す。
Sランクということもあってか、かなり目立っていた。
「これは『白銀』の御二方、今日はどう言ったご用件で?」
俺達が受付まで行くと、ここの看板娘でもある受付嬢のリリーが聞いてくる。
「いや、依頼を受けに来ただけなんだけど」
「ユウジ〜、妾はお腹が空いたのじゃ〜」
そして白はいつも通り俺に向かって駄々をこねる。
「はいはい。だったら自分の親指でも吸ってろ」
こいつとのこういうやり取りにも慣れてきている自分がいる。
そんなことよりも依頼だ。俺はリリーの方を見る。
「あれ?言いませんでしたか?Sランクからは通常の依頼は受注できないって」
「………知らないけど!!?」
そうなの!?初めて知ったよ!?俺
「Sランクに昇段する際に説明の時にしたと思うですけど」
俺は自分の過去を振り返る。
確かにそんなこともあった気がする。ただ、あの時は時空間魔法の連続使用後で魔素の枯渇による急激な睡魔に襲われていたのだ。
「すまない。あの時は疲れてて、あまり記憶がないんだ」
「はぁ、まぁいいですけどね。もう一度説明してあげますからちゃんと聞いててくださいよ?」
リリーはジト目でこちらを見る。
うちの業界では眼鏡にジト目はご褒美です。ついでにツンデレして貰えばさらによし。
「オッケーオッケー、大丈夫だ。問題ない」
「それ、フラグ臭いんでやめてもらいます?」
あ、ツンデレはないのね
だいぶゆっくりの投稿になりますが、読んでいただければなと思っています。
よろしくお願いします。




