後日談
今回が第3章最終回です!
転移シリーズの技名を変更しました。
あと、2万PVありがとうございます。
「カイル、お前の親父は仮にも立派とは言えない。それでも最期は穏やかに笑ってたさ。それに魂はちゃんと天界に送られている、安心しろ」
俺はカイルの肩に手を置き、一応励ましの言葉を送る。
「………」
「さてと、そろそろレオン達も来るだろう」
俺は負傷者の下に向かう。
いや、こういう空気に耐えられなくて逃げ出した、と言うのが正解だろうか。
俺は後で聞いた話だが、カイルは早くから母を亡くし、父に育てられたという。
母が亡くなった後、仕事に打ち込むようになった父を見て、仕方がないと諦めていたのだろうな。
だが、心のどこかでは甘えたかったんだろう。ずっと我慢してきたこいつは本当に偉いと思うよ。
それから俺は負傷している国王達に時空間魔法を使う。
「『リワインド』」
すると、王達は回復し起き上がる。
この『リワインド』は、対象者の時を一定の時間で巻き戻すことができる。いや、巻き戻したと言うよりかは切り取って貼り付けたが正解か。
「貴方!」
王妃が王に寄り添う。
俺達がここに来た時から泣いていたのに、さらに泣き出した。美しいお顔がぐちゃぐちゃである。
「む、ここは」
「この者達が私達を助けてくださったのよ」
そう言って王妃は俺達を指差す。
人を指差してはいけませんって習わなかったのか?
「おお〜、君達は一体?」
「まぁ、その話はレオンが来てからだなっと、噂をすれば何とやらだ」
駆け足でレオン達が入ってくる。
「大丈夫だったかい!?」
「ああ、王様達もご覧の通りだ」
そう言って俺はレオン達に王達を見せる。
「これは両陛下、よくぞご無事で!」
レオンは衛兵達に指示を出し、王達を保護、そして手当てを施し始める。
「殿下達を救護部隊へ!………ユウジ君、やはりさすがと言うべきか…それで………バウザー子爵は……」
俺は目配せでレオンにカイルの様子を伝える。
そしてレオンはカイルの背中を見て口をつぐんだ。
「公爵様、僕は……僕は………どうすればよかったのでしょうか?」
カイルは俯いたまま、レオンに問いかける。それはまるで自分自身にも問いかけているようだった。
レオンはそんなカイルの頭をそっと叩く。
「そうだな。俺にも3人の子供がいる。でも、あの子らはわがままで自分勝手で私の言うことなんてろくに聞いてくれない。だから私はバウザー子爵が羨ましいよ。こんな素直で親思いな子がいてね」
レオンに撫でられながら話を聞くカイルの顔は涙やら鼻水やらで埋め尽くされていた。
「どうしたらいいかは分からない。だけど今は泣きなさい。溜め込んだものを全部吐き出しなさい。これからのことはゆっくり考えよう」
カイルは嗚咽を漏らしながらレオンの懐で泣いていた。
***
それからは色々あった。
まず、バウザーは今回の事件に巻き込まれて殉職したという形で弔われたこと。
レオンから聞いた話だと内部の貴族が悪魔と繋がりを持っていたなどと公にすれば混乱が引き起こされるかららしい。
この事件は王宮内部でもごく一部の者にしか詳細は明かされず、一週もすれば貴族達の間ですら話題には上がらなくなっていた。
逃げた悪魔も行方が知れず、現在はレオンを中心とするデアーク領と王宮の特殊部隊で捜索中とのこと。
次に宮殿の復興だが、一年ほど掛かるという見通しだったが、俺の時空間魔法の『リワインド』で1秒と経たずに修復された。
勿論その分の報酬は上乗せしてもらうつもりだ。
リリアとパウエルに関しては王様にこっ酷く叱られてたよ。あの脳内お花畑さん達にはいい薬だろう。
けど、王女様の方は相変わらず架空勇者に恋してるけどな。
彼女にもいつか現実を知るときが来るであろう。
そして次に俺達『白銀』の報酬に関してだが、国王は爵位を与えようとしたらしいが、俺がレオンに圧をかけておいたお蔭で、金貨100枚と勲章を貰えることになった。
お金はいくらあっても困らないからいいとして、勲章ってのはちょっとどうかと思ったけどな。
まぁ、なにかに使えるだろう。
それからギルドからの報酬として一番大きかったのはランクアップだろう。俺達はBから一気にSまで昇格し、その名を国中に、いや、さらに遠い国にまで轟かせることになったのはいずれ知ることになる。
ただ、今回の依頼、元々Aに昇格する為の試験としても見ていたそうで、予想をはるかに上回る結果を持ってきたので、ギルマス達も大慌てだったらしい。
そしてカイルのことだけど…まぁ、親を亡くして、しかもその遺骨すら残らなかったんだ。気の毒だとは思う。でも、それ以上にカイルにも報酬があった。
カイルは出世に出世を重ね、なんと伯爵の地位を貰うという。正確には俺が貰うかもしれなかったモノだが、俺が頑なに拒否をしたので代わりに俺がカイルに押し付けた感じだった。
さらにカイルはアレッシオの新領主にも就いた。住民からは不安の声なども広がっていたが、Sランクと公爵家からの推薦ということもあり皆、今は納得してくれている。Sランクとはこういう事にも使えるのだ。
加えてカイルにはレオンの部下が2名ほど補佐に付くことになった。カイルはまだ学生ということもあり、仕事を全てこなすのは難しいと判断したからだ。
まぁ、その後も色々あったが俺達はアレッシオへと帰っていった。
***
アレッシオの宿屋。
「ハクちゃん!お帰り!」
「あら!アンタ達帰って来てたのかい?」
俺達が宿屋に入ると、アンナとアンナの母が出迎えてくれた。
「ああ、また暫くお邪魔するよ」
「ゆっくりしていきな」
「ハクちゃん!冒険楽しかった?」
「うむ!あっちは色々あって楽しかったぞ!おでんとか〜!………」
白はアンナに今回の依頼での思い出を語る。
ここまで色々あったが、俺の…いや、俺達の冒険はまだ始まったばかりだ。
神を超えて俺の目的を果たすためのな……
***
王宮。第3会議室。
コンコン
その扉をノックする音が静寂な部屋に響き渡る。
「入れ」
王の低い声がそれに呼応するように響く。そして扉がゆっくりと開く。
「只今戻りました」
「よく戻った。ゼンよ」
ゼンと呼ばれた男はがっしりとした身体つきに、アークダム王国の王太子のみが付けることを許されるバッチをつけている。
ゼンは奥へと進み、王の横に立つ。
「王太子殿下、それで?どうでしたか?」
「レオン卿!殿下に対する口の利き方ではないぞ!」
「よい!それで、報告ですが………」
ゼンは一度唾を飲み、躊躇う。
「ゼンよ。続きを」
「………ゼフォード王国が魔の森を進み、こちらに侵略してくるものと見られます」
「なんと!魔の森だと!?」
ゼンの言葉に貴族達はざわめき始める。
「はぁ、悪魔退治の次は勇者か………」
「静まれ!」
王の一言で、場は静まり返る。
「………いつの世も戦じゃ……………」
王は静かな声で独り言のように呟いた。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
今回で一度更新の方を止めたいと思います。
ですが、話はまだ全然完結していないのでいつか投稿を再開したいと思ってます。
最後に楽しみに待っていただけると嬉しいです。
ではでは〜♪




