恋するお姫様
これから次の章まで毎週月曜日の18時に投稿したいと思います。
その間に改稿などをする場合もありますのでよろしくお願います。
次の章からはまだどうなるか分かりませんが投稿できたらなと思います。
帰ってみると大騒ぎになっていた。
「何の騒ぎだ!」
レオンは従者の一人を問い詰める。
「そ、それが………」
従者はレオンの気迫に押されてか、少したじろんでいる。
「早くしろ」
レオンは従者を急かす。
無理もない。従者の話によると、死体が見つかったそうだ。それもただの死体じゃない。粉々になって、肉と血が飛び散った死体だ。
「それだけではありません」
衛兵はレオンに耳打ちする。
「何!?」
レオンは怒鳴り声を上げる。
「どうしたんですか?」
カイルはレオンに説明を求める。
「少しこちらでトラブルが起きてしまってね。今すぐ行かなければならないんだ」
レオンは落ち着いて説明するが、その顔色はあまり優れない。
「すまないがユウジ君は着いて来てもらえるかい?」
そこでレオンは俺に声をかける。
「ん?………俺?」
「ああ、これは依頼だ。報酬は払う」
報酬と聞いて俺は内心喜ぶ。
「いいだろう。白、お前はカイルを頼む」
「え〜〜、妾もそっちに行きたいのじゃ!」
案の定、白は駄々をこね始めた。
「帰ったらステーキを食べさてやる」
俺は白に耳打ちをする。
「分かったのじゃ!」
白はにっこり笑顔で了承する。
こいつって本当に扱いやすいな
俺は白の頭を撫でてレオンの方を向く。
「では行こうか」
そう言うレオンの後を俺はついて行った。
***
ハーレイ中央警備管理署。
「レオン様!」
俺達が中に入ると、警備隊員やら何やらが敬礼をしてくる。
日本の警察を模倣した衛兵部隊か………
「状況を説明しろ」
レオンは隊員の一人に命令する。
「はっ!ハーレイ中央通りの路地裏で複数名の死体を確認。死因は皆多量の出血によると思われます!」
刑事ドラマみたいだな。それにしても複数の死体か………気になるな
「それから………」
そこから隊員は歯切れが悪くなる。
「ア、アークダム第一王女殿下が保護されております」
「………」
「ふむ、それで?王女様はどちらにいらっしゃる?」
レオンは冷静に対処する。
なるほど、さっき怒鳴り上げていたのはこの事か
王女様はこの国において人気度が高く、そんな人物が事件に巻き込まれたと知られたら相当な騒ぎになる事は目に見えていた。
「こちらです。先程、目を覚ました様で少し記憶に混乱の疑いがございます」
それだけ言うと隊員は下がっていく。
「失礼します。デアーク公爵が到着なされました」
別の隊員が戸をノックする。俺達は中へと入る。
「お久しぶりですね。レオン卿」
そこには金色の長い髪を下ろした美しい女性がベットから起き上がっていた。
「王女様に置かれましてはお元気そうでなによりです」
何だかそれっぽい会話がやり取りされていた。
「サラ殿、事情を説明しては貰えませんか?」
レオンは王女の隣に立つ従者に話しかける。
「………はい」
サラは力無く返事をする。
「今日はお嬢様と私はお忍びという形でこの都市を観光していました………元々は魔術学園の寮から王宮に戻る途中だったので、その寄り道をしに来ていたのです」
今この時期は学園が終わり、帰省ラッシュがピークになるらしい。カイルが言ってた。
「………私が買い物をしているほんの少しの隙にお嬢様は消えてしまっていて、この発信機を頼りにお嬢様を探していたところーー」
「ーーあの現場に居合わせたってわけか」
最後の一言を俺が奪う。俺の悪い癖………いや、ゼロのか。
そんな事はどうでもいいや、ってどうすんだよこの空気…このお前誰?みたいな…俺、もしかして完全アウェイ?
しかし、クラスにいた時とは少し違う感じもした。
「レオン卿、そちらの方は………?」
サラはレオンに尋ねる。
「あ、ああ、この者は私が雇った冒険者でしてね、腕が立つので協力を依頼したのですよ」
まぁ、他にも理由はあるけどな
レオンはそこの所を誤魔化しながら説明する。
***
10分前。馬車内。
『実は君にお願いする理由はもう一つあるんだ』
俺達が馬車に乗るとレオンは真剣な表情で俺を見る。
『…理由?』
『ああ、実は今回の件被害者がもう一人いる』
レオンの表情はさらに深刻になる。
『おい、勿体ぶってないで教えてくれ』
『その被害者とは………』
『被害者とは?』
『この国の第一王女様だ』
割と凄い人物だった。
『何だ?テロか?』
国の偉い人が狙われると聞いてテロが思い浮かぶ辺り俺はあっちの世界に毒されているのだろう。
『いや、テロではない。今回の規模的に言えば暗殺だ。それにそこではない、王女様の方だ』
テロを知ってるのかって、こいつ、転生者だったな……それも公認の……まぁ、こいつの言いたい事は大体わかった
『わかってるさ。つまり、俺と王女を接触させて国に接点を持とうってわけだな?』
『……その言い方にはちょっとあれだが、まぁ、そんな所だ』
レオンは苦笑いをする。
なんてできた奴なのだろう!俺はレオンに感心する。
***
「………ほら、挨拶」
レオンは俺に声をかける。
「ん?あ、ああ、俺はユウジ、冒険者をやっている。俺のことはユウジでいい」
俺は王女に対しても堂々とタメ口を聞く。
「ちょっと!ユウジ君!?」
「貴様!お嬢様になんたる無礼か!」
その場に居合わせた当事者以外の者達で騒然となった。
***
「ーーーーユウジ君、困るよ。相手は仮にも王女様だ。それにこれは君と王宮に接点を持たせる機会でもあるんだからな」
一度落ち着きを取り戻すと、レオンは俺に耳打ちをする。
確かに相手は王族、下手をすれば処刑されかねない。
しかし、俺にとってはゼロの創った世界人間なのだから平等に扱うべきだと考えていた。
「構いませんよ。貴方からは何も感じませんから。人間とは必ず魔素を身体に宿す者………何者かは分かりませんがレオン卿が信頼を置いているなら問題ありませんから」
王女が許してくれるとは予想外だった。
「お前、信頼されてんのな」
俺はレオンに耳打ちする。すると、レオンは少しドヤ顔になる。
「当たり前だ。私はこの国でも有力な貴族の端くれだ」
そんなことは置いておいて、確かに人間には少量だが魔素を宿している。その魔素の量が多ければ多いほど使える魔法なり何なりが増える。その微量の魔素を感知できるということは冒険者ランク的に言えばSSかそれ以上の感知能力があるということになる。
まぁ、それでも俺のことは感知できないがな…
全ての生物は完璧に魔素コントロールをしない限り、体外へと流れ出してしまうのだ。
なんせ、俺の魔素コントロールは120%完璧だからな!
俺の場合、魔素の流出は一切ないので感知できるわけもなかった。
ただ、魔眼とか持ってたら話は別だけど………
主に悪魔などが所有する魔眼は相手の魔素量を体内から数値で視覚的に認知するので、幾ら完璧なコントロールをしても体内の魔素は計られてしまうのだった。
例えば俺の『神王の眼』は大きく分ければ魔眼の種類だ。
この眼の特徴は相手の情報を読み取るだけではなく、相手に絶対的な干渉を及ぼせることだ。
具体的に言うと、相手の遺伝情報の解読、複製、精神干渉、記憶操作、神経操作などがある。
所謂チートスキルだ。
ーーーえっ?知ってた?んじゃ、そろそろ話を戻すか
「それで王女様、何か思い出したことはございませんか?」
「………」
王女は何も話したがらない。
「………勇者…………」
すると王女はボソっと何か言った。
「あ、あの〜王女様、なんと?」
レオンは腰を低くして再度尋ねる。
「………勇者よ。私のことを助けてくださったのは勇者様よ!ああ、愛しの勇者様〜!」
はぁ???
俺は王女が何を言っているのかちょっとよく分かんなかった。




