お姫様?
少し内容を変更した部がありますのでお気をつけ下さい。
「着きましたよ」
俺たちはレオンの後ろについて行くと領主邸別館の屋上まで来ていた。
「おお〜!!!」
カイルはそこにいたのはあるモノを目にして興奮しだす。
そこには、巨大な飛行船が停まっていた。
「すごいです!これはレオンさんの所有物なんですか?」
「ああ、そうだね。これは私が専門家に作らせた特注品だ」
レオンは俺たちに機体に入ったロゴマークを見せる。
円の中にドラゴンが顔を出しているようなロゴで、この町の中でもいくつか同じものを見かけた記憶がある。
「立派だな。これも魔力によって動くのか?」
「ええそうですね。しかしこちらは従来のモノと違って魔力エンジンを倍にしてますから長時間の運転が可能です」
「魔力エンジンを倍ですか!?」
カイルはレオンの話に目を輝かせながら食いついていく。
どうやら俺は置いてきぼりらしい。話に全くついていけなかった。
しかし、この構造に関しては興味があるな。少し研究してみるのもいいかもな
「それではこちらで観光をしながら昼食を済ませましょう」
レオンは中へと入っていく、その後を俺たちもついていこうとする。
「『龍火球』!!」
すると、上方から二つほど魔力弾がこちらに向かっているのを感知する。
「はぁ、見つかったか」
「へ?」
カイルは俺の突然の言葉に首を傾げている。
そして俺は空を見上げて、落ちてくる火の玉を海まで転移させる。
「なっ!?」
火の玉が消えると、今度は空から影が後ろに落ちて来た。
「はぁ、いきなりブレス撃ってくるとかバカじゃねぇの?」
俺は後ろに落ちて来たバカに向かって悪態を吐く。
「………」
バカは黙ったまま動かない。
その姿は逆光でまだ見えなかった。
まぁ、魔力感知で誰が来たかなんてもろ分かりだがな
俺は一応構えて臨戦態勢を整える。すると影は躊躇なくこちらに向かって走り出した。
ガプッ
「何してんの?お前?」
俺は若干怒気を込めた口調で問いかける。見ると白が俺の頭に噛みついていた。
ちなみに今の俺の身体は魂に対して以外のダメージなら無効化されるようになっている
そして、俺の頭から口を離して俺の前に立つ。
「ユウジが悪いのじゃぞ。こんな面白そうなとこに妾を置いて自分だけ行こうとするだなんて」
「屋台に行きたいって言ったのはどこのどいつだったっけな〜?」
俺は手に力を込めて白の頭にアイアンクローをかます。
「いた、いたたた、痛い痛い、悪かったのじゃ〜〜」
俺は手を離してやる。
「その子は………?」
中々入ってこない俺たちの様子を見に来たのか、レオンが中から出てきた。
「この子はユウジさんの相方で白さんですよ」
ちょっとした喧嘩をしている俺たちに代わってカイルが紹介してくれた。
「なるほど。初めまして、レオン・デアークだ。よろしく頼む」
「うむ、よろしく頼むぞ!」
「ちょっ!白さん!」
白は俺よりも態度のデカイ挨拶をする。
「いや、気にしなくていい。こういうのには慣れた」
そう言いながらレオンはこちらをチラ見する。
俺もこんな態度デカかったか?
少し不満に思うが気にせず、俺は中に入る。
「さっさと行くぞ〜」
「ユウジさんまで!」
「妾も乗るのじゃ〜!」
俺と白の自由さに振り回されるカイル。
この光景もなんだか見慣れてきていた。
「ククク、やっぱり面白いな。君たちは」
レオンはそんな光景に思わず笑いが込み上げてくる。
俺たちは飛行船に搭乗していった。
***
「確かにここに送ったのは俺の手筈だ。それは分かっている。分かっているが、なぜあのガキが野放しにされてぶらついているんだ!」
フードを深くかぶった男は路地裏でぶつぶつと愚痴を放っている。
「マジで危なかったな〜、あのガキだから良かったものの候補の方だったらまずかったかもな………」
男は頭を抱え、しゃがみ込み、さらにぶつぶつ言い始めた。
「待て!!」
「!!!!」
突然のその声に思わず反応してしまう。
自分ではないと分かっていても、こういう事をしている上どうして反応してしまう。
「チッ、驚かせやがって」
男は舌打ちしながら声のした方を睨みつける。
しかし、その音はどんどん近づいて来ているように感じた。
「?」
フードの男は魔力感知を使用してみる。
すると、1人の少女が複数の男に追いかけられながらこっちに向かって来ていた。
「隠れるか?………いや、ちょうどいい」
少女は角を曲がってこちらへ走ってくる。
フードの男は少女を影へと吸い込ませる。
こいつは邪魔だな
そして、その後を追ってきた男達がフードの男の前で足を止めた。
「おい!テメェ、こっちに女が来なかったか?」
男達はフードの男に近寄って問いかける。
しかし、男からの反応はまるでなかった。
「おい!無視してんじゃねぇよ!」
キレた男の1人が胸ぐらを掴んで殴りかかる。
ブシャッッ!!!
その刹那、殴りかかろうとした男の体は跡形もなく吹き飛び、その場には男を掴んだままの手とヘソから下の部分だけが残っていた。
「気をつけろ、今日の俺は機嫌が悪い」
フードの男がフードをとるとツノを生やした悪魔が紅い目を光らせ睨みつける。
「ヒッ!ヒヤァァァ!!」
その路地裏には男達の断末魔の叫びが響き渡った。
***
「少しやりすぎたか?」
男の目の前には一般人には見るに耐えない光景が広げられていた。
「チッ、また誰か来たのか」
こちらに新たに向かってくる人を確認する。
どうやら一人のようだ。
フードの男は先程の蹂躙で、冷静さを取り戻して来たのか今度はその場を立ち去ることにした。
「このガキ………どこかで見たことあるような?」
長く、輝きを放つ金髪に整った目口、モデルのような体型の美少女だった。
「まぁいいや。それに今はこんな事をしている暇はない」
男は少女をその場に寝かす。
少女を取り囲むその周辺には肉塊や血で埋められていた。
「あの方のために」
そう言って男はその場から消えていった。
***
「お嬢様!」
お嬢様の持つペンダントについた魔力式発信機を頼りに路地裏まで足を運ぶ従者の女性。
「くっ、私がもっとしっかりしていれば………」
先程から従者の女性は自分を卑下するような発言ばかりしている。
それほど少女のことを愛し、信頼しているのだろう、それ故に今回の件は自分の不甲斐なさを実感する悔しい事だった。
「お嬢様、必ずお助けいたします。どうか、どうかそれまでご無事で………」
従者の女性は走りながら只々祈ることしかできなかった。
しかし、従者は途中であることに気づく、ペンダントの反応が消えているのだ。
「なっ!?そんな………まさか!?」
従者はさらにスピードを上げて必死に反応が途絶えた場所へと向かう。
そして、その場所の近くまで来るとまたあることに気づく、反応が戻っているのだ。しかし、その反応は動こうとする気配はなく、その場にじっと留まっている。
「お嬢様!」
従者は大声で叫びながら路地裏の奥へと足を運んだ。
***
外出なんて久しぶりね………
馬車の中から外の風景を眺めながら物思いにふける。
「お嬢様、そろそろハーレイに着きます」
「そう」
私に報告してくれたのは私のメイドにして護衛のサラ。
「お嬢様、顔色が優れないようですが、具合いが悪いのですか?」
サラはいつも私のことを考えていて、信頼できるできたメイドだ。
「ええ、大丈夫よ。それより、楽しみだわ」
「はい!一体どんなところなのでしょうね。国内最大の商業都市ハーレイ」
サラはそのこれから向かう場所に胸を躍らせている。
私はサラと出かけられることに関しては嬉しい。ここ最近は外出も難しい状態が続いたからだ。
しばらくするとハーレイに内部に入った。
「やはりこの町は凄い賑わいですね。人で溢れかえっています」
あそこは市場だろうか、野菜やら果物、服などが並べられ、そこを大勢に人が押し寄せていた。
「サラ、あそこにいってみるのはどうですか?」
「しかしお嬢様、あまり人が多いところは………」
サラは心配する。
「大丈夫よ。ここは治安も良いから余程のことは起きないわ」
「確かにここは何人もの警備が巡回していますね。わかりました。すみませんがここで降ろしていただけませんか?」
サラは馬車を止め、私たちは市場へと向かった。
***
「美味いな!この料理!」
俺達は飛行船内で昼食を食べていた。
「私が故郷の味を再現するために全身全霊をかけましたからね」
レオンは少しドヤ顔で若干イラっとするもこの努力は認めようと思う。
「公爵様。こちらは何という料理でしょうか」
使用人なども見ているため、カイルは体裁を整えていた。
「これはパスタと言います。主に小麦を原料としていますね」
レオンはカイルに説明をする。
このパスタは今まで食べた中でも1、2を争う物だろう。それくらいに美味かった。
「おかわり!」
白はいつも通りに山ほど食っている。それこそ生産の方が追いつかないほどに。
「お前、さっき屋台で買い食いしたんだろう?まだか食うのかよ!」
「妾も好きでお腹を空かしてあるわけではないぞ!こんな美味しい物が目の前にあるから悪いのじゃ」
何という言い分だろうか。俺はこいつの相棒だと思うと恥ずかしくて居た堪れない。
「食材はまだあるから気にせず食べてくれ」
レオンは気を遣ってくれる。
正直言ってこいつに気を遣ってやる義理なんか無いだろうに
まぁこれ以上言ってもキリがないので俺は窓の外を眺める。
現在、飛行船は城塞を出てデアーク領南部の上空を飛んでいる。
今日中に領地を見て回るらしくカイルはレオンの説明をメモしながら聞いていた。
「南部は主に小麦やブドウの栽培が盛んですね」
そう言ってレオンは外を指差す。
「あれは全部小麦畑ですね。そろそろ収穫の時期なので黄色く輝いているでしょう」
確かに窓の外には金色のカーペットが敷かれているようだった。
「へぇ〜〜、っていうか領地広いな」
ここまで来るのに30分。この飛行船は毎時100キロほどで飛行するので南北の長さは100キロメートル程ある。
「まぁ私もそれなりの功労者というわけですよ」
「デアーク公爵様は他にも国内一の魔術学者とも呼ばれていて、アークダム国立魔導学院の学院長も務めていらっしゃるんですよ!」
カイルは捕捉説明をしてくれる。
「まぁまぁ、私の話はその辺で…ユウジ君達は学院には興味ないかい?私のできることならなんでもするよ」
勧誘か?でも、なんでも、か……)
俺はレオンとは協力関係にある故、聞いてやらないこともないなと思った。
「ユウジさん、今『何でも』の所に反応しましたね?」
カイルは俺をジト目で見てくる。
こいつ……最近鋭いな
それから俺達は南から西、北、東の順に領地を見て回り、領主邸に戻るのであった。




