ステータス
「は?」
俺は目の前のステータスが書かれているはずのウインドウをもう一度凝視する。
やはり、何度見ても結果は同じか………
〈名前〉神谷悠二
〈年齢〉十七
〈性別〉男
どうやらこれが俺のステータスらしい。
「皆様、ご自身のステータスは確認できましたでしょうか?」
王女は俺達のことを一通り見渡して話し始める。
クソッ!これじゃあアタリハズレもわかんねぇぞ!
俺の予想ではステータスにはそれぞれの基本能力に値が割り振られている筈だった。
そしてその数値の大きさで俺の今後のプランを考えようと思っていたのだが……。
ここまで的外れな状況だとなぁ
「おっ!俺、Agi300越えだ」
どこからか聞こえたその情報に俺は耳を疑った。
何だそれは!?
今、明らかに数字を言ってたよなぁ
「私はInt129だって〜」
他にもそういう声が聞こえてくるのでどうやら俺の聞き間違えではないらしい。
「………」
まじかよぉぉぉ〜〜!!!
完全にハズレだよ!そもそも数値が出ないってどんなバグだよ!
バグ?
そうだバグだよ!これは何かの間違いだ!ステータスなのに数値が出ないなんて完全にイカれてる!
「神谷くん?大丈夫?」
俺が一人下を向いて青ざめていると、後ろから小鳥遊が優しく声をかけてくれた。
「ん?あ、ああ……大丈夫」
突然話しかけられてかなり焦ったがどうということはない
このままバレなければ何事も穏便に済む
俺はこのままこの流れが終わることを祈っていた。
「そう?体調悪そうだけど……何かあったら言ってね」
小鳥遊は笑顔で言うと元のグループに戻っていった。
こういう場合、いつも周りの男子から嫉妬の視線を送られるのだが、今回はそれどころではない状況なので荒っぽいことにはならなかった。
しかし、まだ安心はできない
俺のステ情報がバレないようになんとかこの場をやり過ごしたいんだけど………
「では皆さん。これより我が国の神官が皆さんの力を確認致します。それぞれ一人ずつ、こちらへいらして下さい」
王女は笑顔を見せる。
ふざけんな!
ああ、終わった……完全にオワタ
そして、順番に神官の確認が進む中、とうとう俺の番が回って来てしまった。
「君、早く来なさい」
俺は渋々神官に自分のステを見せる。
「ん?こ、これは!?」
「どうしましたか?」
驚く神官に王女も近づいて確認する。
「これは……そんな……ありえません」
「ええ、彼が最後の一人ですが他の全員とは全く違う」
王女と神官が話し合う中、委員長が近づいてくる。
「すみません、どうかしましたか?」
「ええ、彼のステータスに少し異常が見られまして」
「神谷君、私にも見せてください」
若干自暴自棄になりつつある俺は委員長にもステータスを見せてやる。
その様子に他の奴らも群がり始めてきた。
「お?なんだ?……って名前と年齢と性別しかねぇじゃねぇか!?」
そうやって笑い始めるのはイキり男子のリーダー上島だ。
「これは何かの間違いなのではないでしょうか?」
委員長がまるで俺を庇うかのように前に出て抗議を始める。
「…………神官、我々の召喚儀式は何人まで召喚可能でしたか?」
その言葉に俺は嫌な予感を感じる。
おい、まさか俺はそのパターンなのか?
「えっと…確か、40人まで召喚可能なはずです」
「!!、それはおかしい!私達は今41人ここに存在しています」
と、委員長が間髪いれずに応えていく。
さすが委員長。すでに点呼を終えていたのね
しかし、これで俺の処遇が確定した
巻き込まれて異世界来ちゃったパターンだ、これ
「もしかしたら規定を超えた人数を召喚してしまったから不具合が?」
王女はブツブツと考え込んでしまう。
「ま、どちらにしろコイツはもうただのゴミだ。俺達が魔王を倒すまで牢屋にでもぶち込んどいた方がいいんじゃねぇの?」
どうやらコイツは相当俺を排除したいらしい。
「いえ、それは良くありません。彼も私達のクラスの一員です。除け者にはできません」
委員長はきっぱりと言い切って俺を庇う。
「とにかく、彼の事は追い追い決めていきたいと思います。これからお部屋にご案内いたしますので衛兵達について行ってください」
王女によって俺の処遇は後回しにされた。
その後、俺達は各々の部屋に案内されて一息ついたのち、夕食をとった。
夕食は大体向こうの世界にあったような物と同じで当然だろうが洋食だった。
その場では俺について言及はなく、明日からの日程についての連絡のみだった。
それから俺は忘れられたかのように話題にすら上がらないので部屋に戻った。
部屋はそれなりに大きく、ツインベッドにソファ、洗面台もあり、生活はしやすそうではあった。
そして当然、この部屋は二人用。もう一人俺と同じ部屋のやつがいる。
それがこの雨宮麗だ。
今までほとんど話した記憶はないが、先生と仲が良かったのだけ覚えていた。
「やあ、神谷君。これからよろしく頼むよ」
「ああ」
何がよろしくだよ
コイツも俺のステータスについてバカにしてるんだろう
「ところで君、ステータスに異常があったそうだね」
雨宮は早速その話題を持ってきた。
「だったらなんだよ」
「いや?特に興味はないけど君に振れる話題なんてこれしかないからね」
雨宮は涼しげな顔で応える。
コイツ……
くそっ!俺がこの状態を一発でひっくり返させるアイデアを持ってたらなぁ
「ま、君と僕は班も同じだろうからね。足手まといにならないように端で見学でもしてたらいいんじゃないかな?」
コイツは……
しかし、俺は何も言い返さなかった。
実際に能力は無かったからだ。
俺はその言葉を無視するようにベッドに寝転び毛布に包まった。
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