同郷者
また時間が空いたので早めに投稿しました。
「ようこそいらっしゃいました。レオン様がお待ちしております」
そう出迎えてくれたのは執事姿をした白髪のおじさんだった。というか執事だ。
どこの世界でも執事ってのは同じような格好なんだな
「お久しぶりです、バトラーさん。ではユウジさん、参りましょうか」
俺はカイルの後をついていく。
今更だがただの冒険者をここまでついて来させるなんて普通なのだろうか?
中に入るとエントランスには巨大な竜のハンティングトロフィーが飾ってあって、毛や歯に残った魔素から見て本物の竜で間違いなかった。
へぇ〜、結構でかいな。このサイズのドラゴンだといくらぐらいだろう?
俺は他にも屋敷内に飾られてある置物やなんかを見ながら歩いていくと、バトラーは少し大きめのドアの前で立ち止まった。
「レオン様、お客様をお連れ致しました」
バトラーはノックをしてレオンに報告する。
「入れ」
その声に従い俺たちが中に入るとイケてそうな中年のおっさんが窓際に立っていた。。
「お久しぶりでございます。デアーク公爵」
「ああ、よく来てくれたな。カイル殿」
二人は互いに挨拶を交わし、カイルは俺を紹介する。
「こちらはBランク冒険者のユウジさんです」
「ほう、君が噂の」
レオンは少しニヤリと笑ってこちらを見る。
噂のって、どんな噂だよ
「よろしく頼む」
俺は普段通りの態度で対応する。
「ちょっ、ユウジさん!」
「ああ、構わないよ」
「えっ!あっはい。」
どうやらこのおっさんは話がわかるようだ。それにしても先程からニヤついているのが気になって仕方がないなかった。
「なぁ、さっきから何ニヤニヤしたんだ?はっきり言って気持ち悪いぞ」
「なっ!?ユウジさん!!?」
「おっと、悪いな。それにカイル殿もいまは公の場じゃないのだからもっと気楽にしていいんだよ。」
「えっ!?わ、わかりました………」
そしてレオンは俺の方に向き直る。真剣な表情には相手を畏怖させる目力と覇気があった。
いや、この感じ………魔力か?
「ユウジ君、単刀直入に聞こう。君はもしかして異世界人か?」
「!!」
俺はその言葉に少し驚いた。確かに俺の名前はこの世界にはあまり見慣れないものだが、それでも異世界人の可能性を疑われるとは思わなかったからだ。
「どういう意味だ?」
「おっと、気に触ったかい?ただ私は気になっただけだ」
こいつ何者だ?異世界人かどうかなんて普通気になるか?それにこの町の雰囲気から言って、どうも懐かしさを感じられずにはいられない
俺は自分の中である仮説を立ててみた。それを検証するために少しカマをかけてみるとする。
「そういえばここの町は他と違って随分と目新しい雰囲気だな」
「ん?ああ、そうだね。ここは私が一から作り上げてきた自慢の町だからね」
なるほど、これを作ったのはこいつか
「街並みは綺麗だが実際には中身はどうなんだ?万引きとか起こっても対処できているのか?」
「ふっ、任せたまえ。この町には民間警備隊を動員して、24時間パトロールをさせている!」
レオンは腕を組み、鼻息を鳴らしてドヤ顔でこちらをチラ見する。
正直言ってその顔はうざいがこれではっきりしたな
俺は今の会話からレオンに対しての疑問が確信に変わっていた。
「あ、あの〜」
そこで、カイルが恐る恐る手を挙げて質問を並べる。
「万引きとかパトロールってなんですか?」
「えっ?……あ」
レオンは口を開け、目を何度か瞬きしていた。
「デアーク公爵、あんた日本人だな。それも転生者の」
俺のその言葉にレオンは何も言い返してこなかった。
図星か…
「えっと〜、デアーク公爵?どうなさいましたか?」
「へっ?あ、い、いや、なんでもない」
レオンは動揺しているのか間の抜けた声で返事をした。
「それで?ユウジさん、今言ったことってどういうことなんです?」
カイルは今度は俺の方を向き、尋ねてくる。
「その答えは本人から聞いた方が早いだろう。なぁ、デアーク公爵?」
「はあ、やはり君は感が鋭いな。まぁ、君たちなら構わないだろう」
レオンはため息を吐きつつ、ソファーに腰をかける。レオンは俺たちにも座るよう催促したので従うことにする。
「カイル殿、いや、ここではカイル君とよばせてもらうよ」
「まず、君は異世界の存在については知っているかい?」
「あ、父の書庫にあった本にこことは全く別の世界がいくつも存在していると記してありました。その世界は神々によって管理されているとも」
「ああ、その通りだ。しかし、その世界には神の手が差し伸べられず、なんの発展も見込めない荒地のような世界があるんだ」
「おい、待て。なぜお前がそんなことを知っている」
「ユウジさん!また!」
俺は内心非常に驚いていた。たとえレオンが転生者だとしてもそこまでの情報をどこで得たのか疑問に思うことばかりだった。
「いや、悠二君に限っては不問にしよう。それよりも私がどこで手に入れたか…だろう?」
「そうだ」
「まぁ、それも込みでちゃんと話すから安心して聞いてくれ」
そうしてレオンは話の続きを始める。
「さっき言った世界、それがこの世界だ」
「え?」
カイルはキョトンとした表情で口を開けて首を傾げる。
「可笑しいとは思わないかい?この世界にはこれといった信仰宗教がないんだよ」
「た、確かに目立って活動している宗教はありませんが………」
レオンが話していることは事実だ。この世界にはメジャーな宗教が存在しない。この世界に属する何かを神体として宗教を興すことはないことはないが、それはこの世界において偽物であり、加護などは当然存在しない。
さらに言えば今この世界の状況はあまりよろしくない方向へと向かっていってるのだ。
だが、このことは神しか知り得ないこと。なぜこいつが知っている………
「だから簡単に他の世界から魂を呼び込める」
「では異世界人というのは………」
「そう、この世界に入り込んだ不法侵入者ってとこだな」
「それで?お前の話はまだだぞ」
俺にとってはすでに知っていることで、この世界には俺たちのような転移者、レオンのような転生者の2パターンがあった。
転移者の方はこの世界から他の世界に干渉して魂とその身体を呼び寄せるもの。その場合、犠牲として魂を差し出さなければならない。実際、俺たちを召喚した時も多くの魂を生贄に出したのであろう。
そして転生者の場合は多くが元の世界にしてはその魂が強く、天界に連れていかれるはずがその道を外れて管理者のいないこの世界に迷い込んでしまうことだった。
しかし、転生者にはそうでないものもいる。その世界の神に使命を受けた時だ。これは、神がある魂を選び、無法地帯となった世界に使徒として世界を治めさせようとする場合に起こることだ。
転移と転生の違いは、人生を一からやり直せるかどうかと単純な特典の差だろう。
本来、転移とは禁忌であり、他の世界から召喚することは強盗となんら変わりのないことなのだ。そして、その世界の神は自らを崇める宗教団体を通してこの活動をやめさせるのだが、生憎とこの世界の神は管理をサボり、挙句の果てに神の権利を剥奪されてしまったので、禁忌などはやりたい放題だった。
そして、禁忌は犠牲が大きければ大きいほどその力は膨れ上がる。つまりは、召喚された時などにもらえてた能力値やスキルは転移故の利点だったというわけだ。
ちなみにだが転生の場合は使徒意外はろくな能力は持って生まれてこないはず………たぶん。
「そうだな。そして私はその不法侵入者の一人ということだな」
そこで俺は別の何かがこの部屋に近づいてくるのを感知した。
「ふっ、ここで話すには勿体ない話だな」
そう言うと俺は、指を鳴らしてこの部屋ごと俺の亜空間に転移させる。
「何をしたんだい?」
「ええ、ユウジさん急にどうしたんですか?」
「いや、ここからの話はここだけの話にしておこうと思ってな、部屋ごと亜空間に飛ばさせてもらった」
「なっ!?あ、亜空間って………」
「ハハハ、やはり君は面白いことをするな。それはどこで手に入れた力なんだ?」
「その前に俺の目を見ろ。話はそこからだ」
「目?」
「ああ、ここから先の話はあんたらに話すにはまだ信用が足りないからな。契約をしてもらう」
俺は神王の眼発動させて二人の魂にゼロの神紋を刻む。
「これは………この紋は!」
レオンは俺が刻んだ紋を見て驚きを隠せないようだ。
「そこまでわかっているなら話は早い。お前たちに伝えることは神託とでも思ってもらって良いぞ」
「え、ええ!?神託!?ど、どういうことですか?」
「カイル君!ユウジ君、いや、この方は………この紋が使えるということは……この方はこの世界の創造神その方であらせられるんだぞ!」
レオンはすごい興奮した様子でカイルに俺の素晴らしさを説いていた。
「ユ、ユウジさんがそんなすごい方だったなんて!ど、どうか今までの無礼!お許しください!」
カイルも純粋故にレオンの話を聞くとすぐに俺に向かってひれ伏し始めた。そして、それに呼応するかのようにレオンも頭を下げる。
なんだ?この状況………
俺は頭を掻きながら途方に暮れていた。
ご愛読ありがとうございます。高評価をいただけて大変!嬉しく思っております。私、来年の4月まで多忙な年となっておりまして、日数を開けての投稿となりますが、楽しみにお待ちいただければなと思います。これからもよろしくお願いします。




