悪魔の取引
時間が空いたので、先に投稿します。すいません。
「ようやく邪魔は消えたな」
バウザーは書斎から窓の外を眺めてニヤリと笑う。
そして、バウザーの影が分離して人型の何かが現れる。
「あいつの能力を侮ってたかもしれんな」
現れたのはフードを深くかぶった男だった。男は焦ったように顔を険しくしているように伺える。
「どういうことだ?」
「お前の影の中から見ていたが、あの時お前らの空間と影の空間が一瞬だけ繋がらなくなった。あいつは俺以上の空間魔法の使い手に間違いねぇ」
男はフード取る。頭にツノを生やし、眼は紅く光りその姿は正真正銘の悪魔だった。
そしてこのとき悪魔は悠二のことを王種に近い何かだと考えていたが、実際はそれ以上だということをまだ理解していなかった。
「だが、例えそうだとしても今回は失敗を許されんぞ!」
「分かっているさ、この1ヶ月の間にお前には王種になってもらわないといけないからな」
「貴様、それは本当にできるんだろうな」
「ああ、今回はちゃんと調べたさ。王種になる為には3つほど条件をクリアしてもらう」
「3つだと!?」
「ああそうだ、まず始めに魔力量を上げる」
そう言って悪魔は紅い水晶を取り出す。
「なんだそれは!?」
「これは悪魔の血でできている。お前にはこれを取り込んでもらう」
「そんなので本当に力が手に入るのか?」
「ああ、安心しろ。時間がないからな、これが一番手っ取り早いんだよ」
悪魔は紅い水晶をバウザーに向けて呪文を唱え出した。
「おい!もう始めるのか!?」
バウザーは止めようと悪魔の腕を掴もうとする。しかし、もう術は完成しており、紅く光る水晶はどんどん小さくなっていってバウザーの額に入っていった。
「くぅ!……ぅああ!!」
「うるせぇなぁ、人間の癖にごちゃごちゃ言ってんじゃねぇよ、テメェは俺たちの言うことを聞いていればいいんだよ」
「ゔゔっ!!!」
バウザーは跪き、頭を抑えて唸り始める。
「『影の牢獄』」
悪魔は唸るバウザーを黒い闇で包み込んで影の中へと引きずり込む。
「ふっ、力が浸透するまで眠ってろ」
まっ暗い部屋から黒い悪魔の笑みがこぼれた。
***
それから俺たちは山道を通って草原に出る。ここまで来るのにモンスターと戦うこともあったが、どれも雑魚ばかりで倒した感覚すら覚えがない。
一週間ほど経ってようやく町らしきもの見えてきた。
「ユウジ!なんじゃあれは!」
白が指差す方には地球で見かけたことのあるような飛行船が飛んでいた。
「うーん、飛行船か?」
「さすがはユウジさん、なんでも知っているんですね。あれはこの国発の魔導工学の技術によって作られた魔石による飛行船なんですよ」
カイルは少し楽しそうに話す。
「へぇ〜詳しいのか?」
「実は魔導工学に興味がありまして、来年から魔法学院の魔工科に入ってもっと勉強するつもりなので今はまだそこまで詳しくはないですね」
魔導学院ってそんな学科もあるのか………てっきり戦闘訓練ばかりするもんだと思ってたな
「他にも学科があるのか?」
「はい!色々ありますよ。魔導科に先程の魔工科、魔導史学科、魔獣科などがあって、高等部から別れるんです」
「じゃあ、宮廷魔導師ってのはどの科を卒業したらなれるんだ?」
俺は特に興味はないがレベッカがそれを目指していたと聞いたことがあるので聞いてみた。
「どの科を卒業しても試験に合格すればなれますよ。ただ、受かることなんてほとんどないですけどね」
高等部を卒業した後は基本的に研究所か企業に勤めるのがセオリーらしい。ちなみに去年の宮廷魔導師は定員が5人で倍率が42倍だったそうだ。
それまた厳しい世界だな
俺はその数字に驚いたりしたが、まぁ異世界だからと受け入れることにした。
「ユウジ!妾、あれに乗りたいのじゃ!」
白は俺たちの会話を遮って俺の腕を揺さぶる。
「わかった、わかった。あれっていくらだ?」
俺はカイルに尋ねる。
「だいたい大銀貨1枚ぐらいだと思いますよ」
「そうか、じゃあ白、あとで乗りに行くか」
「やったのじゃ!」
俺は飛行魔法がまだ使えないからな、空の散歩とやらも経験しておいた方がいいだろう
そして俺たちの乗った馬車は巨大な城門をくぐる。
「なんかすんなり入れたな」
「ええ、僕たちはすでに騎士を通して話をしてありますから」
「なるほどな」
貴族への待遇はやはりというべきだな
「ユウジ!あちこちからいい匂いがするのじゃ!」
白は目を輝かせて窓の外を眺める。この町の屋台はアレッシオよりも活気づいていて、見えなくなるぐらいまで続いていた。
途中モノレール的な乗り物も見えてなんだか日本を思い出す光景だった。
「着きましたよ」
カイルの言葉に馬車を降りるとそこには立派なお屋敷があった。
「ここが領主邸です。一応今日一日はお付き合いください」
「分かった」
俺はカイルの後をついていく。
「ユウジ、町についたからお小遣いが欲しいのじゃ」
すると、白がそう言いながら俺の服を引っ張ってきた。
「おい、仕事中なんだから後にしろよ」
「じゃが、妾お腹が空いたのじゃ〜」
ぐぅとお腹を大きく鳴らす白。
「いいですよ行ってきても」
その様子にカイルは微笑んでいる。
しかし、カイルはそう言ってもこの町の領主の顔ぐらいは見ておきたかったので俺は白にお金を渡して自分で屋台に行くようにした。
「いいか?お金を払わないと食べたらいけないからな?後、面倒ごとは避けて通れ」
俺は白に言い聞かせながら大銀貨5枚を手渡す。
「分かったのじゃ!妾に任せるのじゃ!」
白はそう言って屋台に走っていった。
頼むから面倒ごとだけは持ってくるなよ
「元気ですね。白さんは」
「はぁ、それより行かなくていいのか?」
「おっと、では行きましょうか」
俺とカイルは領主邸の中へと入っていった。
読んでいただきありがとうございます!
次回こそ3月に投稿する予定です。




