表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/41

面会はお断り

遅れました。すいません。

 それから俺たちは今日一日を買い物やらなんやらで楽しく過ごしていた。


 全て俺のお金だけどな


 俺は自分のお金が大量に放出されるのに心が苦しくなり、途中からは何も考えずただただ二人のためにお金を使っていた。


 結局、消費金額は金貨5枚かぁ


 本日の消費額は日本円にして50万円、かなりオーバーな買い物だった。


 大体あの占い師絶対胡散臭いだろう!なんだよ一人金貨1枚って


 俺は後になって今日のことを後悔し始めた。


「今日はありがとうございました」


「いや、元はと言えば俺のせいだからな」


「はい、それでもですよ。じゃあ私は先に戻っていますね」


「ああ、俺たちはギルドに少し寄ってからまたお世話になるよ」


「はい!お待ちしております!じゃあね、白ちゃん!」


「うむ、また後でなのじゃ!」


 俺たちは別れの挨拶をした後ギルドへと向かう。

 ギルドに向かう理由は二つあった。一つは解体所でモンスターを売りに行くのと、もう一つは明日の依頼を受けておこうと思ったからだ。冒険者は大抵朝からの仕事が多く、前の日から取っておかないと依頼がなくなる可能性もあったからだ。


「さてと、まずは解体所だな」


 俺たちは解体所まで行くとすでにウォルガーが準備をして待っていた。


「おう!お前さんら、ようやく来たか」


「すまない、用事がいろいろあってな」


「妾、ユウジにパフェをご馳走してもらったのじゃ!」


「おう!そうかい、そいつは良かったな!」


 白は相変わらず余計なことを言う。俺はスルーして話を進める。


「今日の分はここでいいか?」


「ああ、大丈夫だ。ほれ、これが今日の分だ」


 俺はウォルガーから大銀貨5枚を貰った。


「あっそうだ!リリーがお前さんらのことを探していたぞ」


「リリーがか?」


「そうだ、なんだか急いでたから早くいったほうがいいんじゃないか?」


「そうだな。すまないな」


「いやいや、また頼むぜ」


 俺たちは解体所を後にする。受付に行くと、リリーが慌ただしい様子であちこち駆け回っていた。


「おい、リリー。俺に何か用か?」


 俺はリリーの肩を叩いて声をかける。


「あー!!やっと来ましたね!」


 目の前で大声で叫んできた。


「ご、ごめんなさい。あなた達がようやく現れたので、つい大声を出してしまって…」


「いや、そんなことはいい。それよりも用があるんだろう?」


 俺はさっさと本題に入らせる。


「そうです!指名依頼ですよ!」


 またもや大仕事だった。


 指名か………なんか嫌な予感がするな


「依頼主は誰だ?」


 まだ冒険者を始めて一週間しか経ってないぞ


「それがですね…………」


 リリーは口淀んでいる。


「この町の領主でして…………」


「領主?」


「はい〜………その領主というのは横暴な態度で有名でして………」


 なるほど、いわゆるテンプレ貴族か


 俺はその話だけでなんとなく言いたいことがわかった。


「それで?依頼ってなんだ?」


 俺はさっさと本題に入る。特に急ぐ理由もないが、強いて言えばリリーが忙しそうだったからだ。


「あっ、はい。明日の朝に領主邸に来いとのことだそうです」


「それだけか?」


「はい。それだけみたいです」


 明らかに怪しい話だった。行ったところで誰も俺を片付ける奴はいないだろうが、行けば面倒に巻き込まれるだろうと思った。


「指名依頼って断れるのか?」


 かく言う俺は完全に拒否しようとしていた。


 まず、怪しすぎる。あまり良い噂を聞かない分、どんな危険があるかわからないからな


「一応、断れますけど………いいんですか?」


「ああ、構わない」


「わかりました。向こうにはそう伝えておきます」


「頼んだ」


 その後、俺たちは適当に明日の依頼を選んで宿に戻った。

 翌日。

 俺たちは依頼を終えて、ギルドに報告に来ていた。


「すごいですね………Aランク依頼をこんなあっさり終えて来るなんて…」


「この程度なら白一人でも余裕だろうな」


「当たり前じゃ!ジャイアントコングごときに遅れをとる妾ではないわ!」


「そうだな」


 俺は白の頭を撫でてやる。


「よう!お二人さん仲がいいことで」


 現れたのはヨットだった。


「それと聞いたぜぇ〜、領主さんの指名依頼を断ったそうじゃねぇか」


 やはりヨットの情報網は侮れないと思った。


「耳が早いな」


「当たりめぇだろ?俺の情報網には切れ目がねぇよ」




「『白銀』はいるか!?」


 突然、ギルドの戸が勢いよく開き、俺たちのパーティを呼ぶ声がした。


「白銀は俺たちだが?」


 俺は隠す必要もないと思ったので堂々と前に出た。


「そ、そうか……お前たちを領主邸に案内する。付いて来い!」


「待て、何の用だ?」


 確かに見覚えはあるがここまで向かいに来られるようなことはしてないはずだった。


「それは領主様が直々に話される。今とりあえず付いて来い!」


「ユウジ、多分行った方がいいと思うぜ。何されるか分かったもんじゃないからな」


 ヨットは耳打ちで言ってくる。

 俺はため息をついて白を見る。


「仕方がない、とりあえず行ってみるか」


「よし!では馬車に乗れ!」


 俺と白は使者の後ろをついて行き、馬車に乗った。

 馬車を降りると目の前には立派なお屋敷が建っていた。使者は馬車を降りると中まで案内する。


「では、ここで領主様がお待ちになられている。重々言葉遣いには気をつけるように」


 使者は先程の俺の喋り方のことを言っているのだろう。

 俺はノックをして中に入る。そこには白髪の強面のおっさんが立っていた。


「貴様、なぜ依頼を断った?」


 開口一番に発した言葉がそれだった。


「なら逆に聞こう、あんな依頼内容で行きたいと思う奴がいるか?」


 俺は質問に質問を返す。不敬罪として牢屋にでも入れられそうになったら、記憶ごと改善してやろうと思ったが、どうやらその心配はなさそだった。


「ハッハッハッ!この私に対して質問を重ねてくるとはな。面白いますます気に入った!」


 むしろ高評価を得られていたようだ。


「ならばその依頼内容を今明かそう。内容は簡単だ、私の息子を隣町まで護衛をして欲しいだけだ」


 思っていたよりもシンプル内容で特に怪しい点も見当たらなかった。


「ハハハ、そんなに身構えなくても良い。貴様の実力は知っておる。大事な一人息子だからこそ信頼できる実力者に任せるのだ」


「ユウジ、こやつは悪い奴じゃなさそうじゃぞ」


 確かに白の言うこともありそうだな、しかし念には念だ


 バウザーの脈拍や心拍数を見ても嘘をついている感じはなかった。

 しかし、俺は念のため時空間魔法を使う。


 よし、これにもだいぶ慣れてきたな


 今現在、俺以外の時間の流れは停止している。この魔法は持続が短いので素早く『神王の眼(ゼウス・アイ)』を使ってバウザーの情報を読み取る。過去2つか分の記憶からは特に何も得られなかった。

 そして持続時間が過ぎ、他の時間も動き出す。


 一週間分くらいは覗きたかったが、これが俺の限界か


 圧倒的な力を手に入れた俺であっても限度はある。今のもその一つだ。


 この眼も相手を拘束していないと使えないってのが難点だな


「で?受けてくれるのかね?」


「まぁいいだろう」


 俺は様子見として依頼を受けることにした。


「良い返事が聞けて嬉しく思う。では概要だが……」


 バウザーは依頼内容を説明する。

 依頼目標はバウザー・シュルメイダー伯爵の長男、カイル・シュルメイダーの護衛、期間は一カ月ほどであった。


「では明後日の朝にここに来てもらえるかな?」


「わかった」


 俺は承諾する。


「その護衛対象に合わせてはくれないのか?」


 俺は辺りを見回すがそのような人物はいない。護衛対象の確認は大事なことだ。


 そいつも何かあるかもしれないからな


「ふむ、そうだな。カイル!入ってこい!」


 そして後ろで戸がゆっくりと開く。入ってきたのはなんと美少年だった。


 こいつがこれの息子だと!?


 その容姿はバウザーの少し痩せ細り、目がギョロっとしたようなモノとは違い、少女マンガに出てきそうな王子様感のあるまだ中学生くらいの少年だった。


「紹介しよう、私の長男のカイルだ」


「はじめまして。カイル・シュルメイダーです。よろしくお願いします」


 カイルは容姿だけではなく、礼儀も完璧だった。


「ああ、俺はユウジ、こっちは白だ。よろしく頼む」


「よろしくなのじゃ!」


「うむ、では明後日の朝、門で待っているぞ」


 そして俺と白は依頼の手続きをするべく、ギルドへと向かった。道中は先程と同じ使者の人が送ってくれて、手続きの手伝いまでしてくれた。

 それが完了した後、俺たちはギルドを出て宿に戻る。もう辺りは暗くなっており白の腹の虫に至っては、夏の蝉よりうるさかった。


「ユウジ〜、妾もう動けないのじゃ〜」


「あともう少しで美味しいご飯が待っているから我慢しろよ」


 この時間帯は流石に屋台もやってないので俺は白を背負って宿に行く。


 これももう何度目だろうか


 俺は歩きながら今日のことをついでに振り返る。


 それにあのバウザーってのはかなり怪しいな。記憶こそ覗かなかったが、あの男には違和感を覚える。まぁ、俺には関係なさそうだったけどな


 俺はバウザー達のことを注意して見ることに決め、宿に着いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ