甘いものは別腹
サブタイトル変更しました。その他にも内容を修正しているところがあります。これからもよろしくお願いします。
レギノアスの一件から一週間。俺と白はパーティーを組むことにした。依頼完了のたびに別々に報酬を受け取るのは面倒くさいので、一括管理するためにパーティーシステムを活用することにしたのだ。
「へぇ〜、『白銀』にしたんですね」
そして今、俺たちはビアンカと一緒に買い物をしていた。
「まぁ、白の髪を見て適当につけた名前だけどな」
俺は白の頭に手を置き、答える。相変わらず白は食べ歩きをしていた。
「でもいい響きですよ。それに二人の活躍は聞いています。この名もすぐに広まっていくでしょうね」
ビアンカはどこか嬉しそうに話している。
「ばわばぼふきばぼ、ほぼばわえ」
白は口いっぱいに屋台の食べ物を詰め込んで喋っている。
「白、行儀が悪いぞ。口の中の物をちゃんと飲み込んでから喋ろよ」
俺は白に注意をした。その光景にビアンカは「ふふふ」と笑っていた。
「いい兄弟のようですね」
「妾とユウジは兄弟ではないぞ?」
口の中の物を全部飲み込んだ白は首を傾げ、俺に尋ねてくる。
「比喩だよ比喩。俺たちのことが本物の兄弟に見えるってことだ」
俺は呆れながら説明してやる。
こいつ、俺よりもだいぶ年いってるんだから、これぐらい理解しろよ
いや、今の俺はゼロと同化してるからゼロの生きた分も蓄積されるのか?
俺は心の中で白にツッコム。表向きは10歳なので演技をしていると思うのが普通だが、白は素で分かっていなさそうだった。
「なるほど!そういうことなのか!」
白は手を叩いてスッキリした顔で嬉しそうにしていた。
そんな姿に俺はため息がこぼれてしまう。
「さぁ!着きましたよ」
そんな事をしている間に俺たちはビアンカの行きつけの店に着いた。
「ユウジさん。今日は約束…ちゃんと守って下さいね」
ビアンカは片目を閉じ、可愛く言ってみた。
そう、今日はビアンカに対してのお詫びと白のご褒美ということで、俺は二人にパフェを奢ることになっていた。
「分かっている。今日は謝罪の意を込めて俺が奢ることになっているんだ、そこはちゃんとするさ」
俺は真面目に答える。
「ふふ、ありがとうございます」
ビアンカは微笑んで俺の手を掴む。
「さぁ!行きましょう!」
「お、おい!」
ビアンカは俺の手を引っ張って店内に入った。
「うーん!やっぱりここのパフェが一番美味しいです!」
それから白とビアンカはパフェを注文し、幸せそうに食べている。
「妾もパフェというのが気に入ったのじゃ!ユウジも食べるのじゃ!」
白は頰にクリームやらを付けながらスプーンでアイスを掬い、俺に差し出してくる。
どういう風の吹き回しだ?こいつ、食べ物はいつも人にあげないのに…
俺は疑問に思いつつも他意はなさそうなので、一口もらうことにする。
「あーん、なのじゃ!」
俺が口を開くと白はスプーンを押し込む。俺は甘いのはあまり好きではないが、意外にも美味かった。
「ああ、これは美味いな。またなんかのご褒美に買ってやるよ」
俺は白に次の約束を取り付けた。
「本当か!?妾、次の依頼も頑張るのじゃ!」
白は満面の笑みでパフェを口に入れた。ビアンカはその様子を微笑んで見ている。
「あっ、そういえば、お二人の噂が広まっていましたよ」
ビアンカは両手を合わせて嬉しそうに俺を見る。
「噂?」
俺はその話が気になったので、少し深く聞いてみる。
「ええ、期待の新人現るって私の職場でもみんな言ってましたし、それと、いきなりBランクから始めてSランクモンスターを倒したとか、Aランク冒険者を一撃で倒したとか色々出てますよ」
ビアンカはそれは嬉しそうな顔で語っていた。
「なんか嬉しそうだな」
俺はつい口にしてしまう。
「それはもう可愛い白ちゃんが活躍したと聞いたんですから、嬉しくないわけがありませんよ」
ビアンカは白の頭を撫でながらそう言った。
こいつ…………まさか………ロリコンか?
俺は若干引いたが、白は心地良さそうに撫でられていた。
「あっ、すいませ〜ん」
ビアンカは手を挙げて、近くの店員を呼ぶ。
「ティラミス2つとショートケーキ1つ、あとは………」
そして、追加の注文し始めた。
「お、おい。まだ食べるのか?」
「ええ、当たり前じゃないですか。今日一日は私のお願い、なんでも聞いてもらいますからね」
ビアンカは少し口を膨らませながら衝撃的な事を言った。
「なっ!今日一日!?」
俺は思わず声を上げた。その様子に周りの客や、店員も少し笑っていた。
俺はその辺は特に気にしないのだが、ビアンカは少し恥ずかしそうにする。
「この前のこと、まさかこれだけで終わらせようとしていたわけじゃありませんよね?」
ビアンカは俺に向き、少し声のトーンを落として笑顔で俺に聞く。
俺は全ての種族に対して恐怖を抱くなんてことはないが、今この時だけは違った。
「い、いや……そんなわけ……ないぞ」
俺は額に汗をかきながら目をそらして答えた。
「本当ですか!?じゃあ遠慮なく頼ませてもらいますね」
ビアンカは満面の笑みで注文を再開した。
はぁ……まぁでも、お金は山ほどあるからな、このくらいはいいか
俺は内心諦めて、俺も何か頼むことにした。
「ん?なんだこれ?」
俺がメニューを眺めていると、1つ気になるものが目に入る。
「ニブルヘイム?」
全くもって見慣れない名前だった。
確か俺の魔法にも同じのがあるが………
「それ、今大人気のスイーツなんですよ」
ビアンカは俺の隣に座り直し、メニュー表を覗く。ビアンカは俺の体を寄せて覗くため、ビアンカのいい匂いが鼻をくすぶる。
いかんいかん、もう二度と同じ失敗はするものか
俺は頭を振って理性をしっかりと保たせる。するとビアンカがこちらを見て、「これにするんですか?」と、聞いてきた。
「いや、そういうわけじゃない。少し気になっただけだ」
「そうですか………残念です」
ビアンカは頭を落として落ち込む。ただ、今回の件でどうにも責任を感じてしまうので俺は割り切ることにした。
「ならみんなで食べるか?」
あいにくと俺の財布事情は底がないので、ここは太っ腹に行こうと思う。
「本当ですか!?」
ビアンカは目を輝かせこちらを見た後、白の方に戻って雑談をし始めた。
それから俺は店員に追加注文をし、そのニブルヘイムとやらを待つことにする。
「なぁ、思ったんだが、あの身分証ってあんな作りでいいのか?」
そして俺は前々から気になっていたことを聞いてみた。
俺たちがこの町に来て最初に貰ったあの身分証は名前と年齢、発行日の日付だけしか載っていなく、それに比べて日本の身分証は名前、年齢、生年月日、顔写真、住所などを掲載していて、やはりこちらの方は適当に作っている感じが否めない。
「ああ、あれですか?あれはこの国に滞在する上での必要最低限の身分証なので、不法入国者かそうでないかを見分ける役割を担っているのです」
ビアンカは淡々と説明してくれる。
「なるほど、すまないな」
「いえいえ、ですが基本的には冒険者カードの方を提示してもらえばいいですからね」
「ああ、ありがとう」
「お待たせしました。ご注文のニブルヘイムですね」
そこで店員が品を持ってきた。
その正体はやはりアイスクリームだった。しかし、普通のアイスクリームとは少し違っていて、カップの中にクリームが入っていて、表面がシャーベット状になっていた。
「なんじゃ?ユウジそれは?」
白は自分の手を止めて、俺のもとに来た得体も知れないものに目が移る。
こいつ、いつもながらちゃんと話を聞いていないんだな
「これはアイスだ。みんなで食べるように頼んだんだ。ちゃんと白にもやるからまずはそれを片付けろよ」
「本当か!?妾、頑張って全部食べるのじゃ!」
今現在、白の目の前にはパフェだけではなくケーキやらなんやらが山ほど置いてあった。
白はそれらを一気に飲み込む。すると一瞬で全て平らげてしまった。
ハハハ……こいつの胃袋の中、どうなったんだよ
「ホント凄いですね、白ちゃんって……これだったら大食い選手権にも出れそうですね」
なんだよ、大食い選手権って
詳しく聞いてみると、4年に一度開かれる魔闘会と呼ばれる国を挙げての大会があるそうで、それと同時期に裏で開催されているのがこの大食い選手権らしい。なんでも優勝者には大金と一年分の全店半額券が貰えるらしい。
しかし魔闘会か………面白そうだな
俺の興味は別のところに移っていた。
「なぁ、その大会次はいつだ?」
「ええとそうですね………確か来年のもう少し経ったぐらいだったと思いますけど…」
「そうか、ありがとう」
俺はそれに出るかどうか迷っていた。単純にこの世界のレベルやどんな人間がいるか知りたいというのもあるし、もう1つ別の目的もあった。
「白ちゃんが出れば百人力ですよ!」
ビアンカは白の頭を撫で回して、俺に告げる。
まぁ、その日が近づいたらまた考えるか
俺は今は考えるのをやめにして、目の前のスイーツをいただくことにする。
ん、これ…レモンか?
二段層になっているシャーベットの部分はレモン味で下のクリームはチョコという、まぁ、ありきたりなアイスクリームだった。
「さてと、あとはお前らにやるよ」
俺はある程度満足すると二人にあげた。もちろんスプーンは別だ。
「うーん!やっぱりこのアイスは美味しいですね」
「妾、次はアイスを頼むのじゃ!」
二人とも幸せそうに食べていた。
それから俺たちは満足し終えると、店をあとにする。
「げっ!」
会計のときに見た金額はファミレスに行ったよりかは高級レストランに行ったに近い数字だった。
ったく、二人ともすごい食ったな………まぁ、これも自業自得か……これからは自分の行動に気をつけよう
俺にまた誓いごとが増えた。
白ちゃんの大食い選手権楽しみだなぁ。




