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動き出す陰謀

今回から新たな人物が沢山出てきます。

「で?いい話はあるのかね?」


 この町の領主、バウザー子爵は向かいに立っている男にそう問いかける。


 ここは領主邸の書斎であり、領主のバウザーと男が何やら会話していた。


「ああ、そりゃあすんげぇ話だ」


 男は身振り手振りでその大きさを表現する。


「新たな王種候補が現れたかもしれねぇ」


 男はバウザーにとって衝撃の事実を告げる。


「何!?王種候補だと!!?」


 バウザーは机に手をついて、勢いよく立ち出した。


「おいおい、そんなに取り乱すなよ」


 男はバウザーを落ち着かせようとする。


「しかし、王種候補だぞ?落ち着いていられるか!」


 しかしバウザーはこのことを恐れているのか、落ち着きを失い、部屋をあちこちと歩き回っている


「だが、王種候補の可能性があるというだけだ。まだそうと決まったわけじゃない」


 男の言葉にバウザーは足を止めた。


「何?、お前でもまだ確信を得られていないのか?」


 バウザーは顎に手を当て、男に尋ねる。


「ああ、あんなの王種候補以外にあり得ないとは思っているんだが、どうも腑に落ちなくてよぉ」


 男は腕を組み、さらなる疑問を提示する。


「それにアレと一緒に居るチビだがな、どこかで見たことある気がするんだよなぁ」


 男は何かを思い出そうと必死になっている。


「ふん、貴様の情報網ですら捉えられないとはな」


 バウザーは少しため息をつきながら立ち上がり、窓際まで近づく。


「だが、この計画。絶対に失敗するわけにはいかん」


 そしてバウザーは男の方に振り向き、告げる。


「この国を私が治めるその日までな」


 バウザーは男を見据えてそう宣言した。


「そりゃあ大層なこったぁ。だが、本当に例の奴には気をつけろ。見た感じ勘も鋭い、バレたらどうなるかはわからんからな」


 しかし、男はどうでもいいといった風に聞き流し、バウザーに注意を促す。


「それで?そいつの情報はそれだけなのか?名前もわからんのか?」


 バウザーは再度男に尋ねる。


「おっと、忘れるところだった。まず名前だが、ユウジという。そして一緒に居るチビがハクだ」


 男は思い出したかのような口ぶりで、バウザーに次々と情報を開示していく。


「年齢はユウジが17、ハクが10。ランクは二人ともBだ。チビの方はSランクモンスターを一人で一体を連戦できるレベルだ」


 男は二人の情報をバウザーに伝えた。


「なに!?Sランクを一人で連戦だと!!?そいつが王種ではないのか!?」


 バウザーは目を見開いて驚いていた。


「いや、アレは王種ではないな。王種ってのはもっと強い」


 男は冷静に答える。


「それにこんなので驚いていたら、これ以上は死んじまうぜぇ」


 男は嘲笑気味に続けた。


「まさか!?そのユウジという男はそれ以上とでも言うのか!!?」


 バウザーは額に汗を垂らしながら、信じられないと言った顔で男に尋ねた。


「残念だったな、その通りだよ。ユウジはSランク三体を同時に一撃で倒し、それでもまだ底が計り知れなかった」


 男は淡々と事実を述べる。この男自身が目の前で見たのだからまず間違いない。


「だがどうするのだ。そいつに邪魔されてはできることもできんぞ」


 もし自分の計画に目をつけられたらと思うと、バウザーは居ても立っても居られなかった。


「俺もあんなのとはやりたくないなぁ、正直言って王種の範囲を超えている。アレはもはや神の類に近いな」


 それから男はバウザーに声をかける。


「そこでだ。俺にいい考えがあるんだ」


 男は笑みを浮かべ、バウザーに告げる。


「アイツを遠くへ追いやるのさ。簡単だろ?」


 男は楽しい思い出を語るようにバウザーに提案した。


「信用していないなら、尚更難しいのではないか?」


 バウザーは男の言葉に矛盾を感じた。


「まぁまぁ、俺に任せておけよ。ただ、アンタは俺に協力してくれればいい」


 そう言って男は部屋を出て行った。


 男が出て行った後、バウザーはまた窓辺に寄る。


「ふん、何を考えておるかは分からんが、最後に利用するのはこちらの方だ。悪魔め」


 バウザーはニヤリと笑い窓の外に映る、自らの街を眺めていた。

読んでいただきありがとうございます!

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