軽蔑の視線
「そうだわ!あなた、あの魔法は何?」
レベッカもルージス同様俺を恐れているのだろうか。そんな声色で俺に問いかける。
「いや、何者だとか言われてもだな」
俺は少し困ったように少し考えてから、
「俺は神谷 悠二ただの田舎者だよ」
俺は少しおどけたように適当に返す。
「そんなわけあるか!お前は、Sランクを!しかも3体同時に倒したんだぞ!?」
ルージスは物凄い形相で俺のしでかしたことについて語る。
「あの子も大概だとは思ったが、ユウジ!お前は次元が違った。お前の強さはまるで神のようだった!!」
さらにルージスは熱く語っている。
「はぁ、言っただろう。俺は神は超すと」
そして俺は白を降ろして、ルージスに向き直る。
「それにこの力は俺だけのものじゃない。俺はこの世界でやらなければならないことがある。これはそのための力だ」
「それって一体………」
「はいはいそこまで。まずはアレの回収とギルドに戻って報告よ」
そこでギルマスが俺たちの間に入って、この話を終わらせる。
ギルマスの指の先には、白が倒したレギノアスが一頭横たわっていた。
「ユウジくん、あなたアイテムボックスを持っているそうね。これをお願いしてもいいかしら」
ギルマスは手を合わせて上目遣いでこちらを見てくる。俺も元は人間の男なので、こういった女の頼み事には弱かった。
「はぁ、わかったよ。そもそも、このために呼んだようなものだろう」
俺はため息混じりに了承し、ギルマスの思惑を指摘する。
「あら、そんなこともないのよ。あなた達のおかげで今、こうやって五体満足でいられるんだから」
ギルマスは笑みを浮かべて否定する。
ふっ、まぁ今回はいいか
俺は観念してレギノアスのもとによる。そして、時空間魔法を発動させる。
アイテムボックスではないんだがな
この魔法は、言ってみればゼロの遺産である。
ゼロが創った魔法の中でも最高傑作と言っていいほどだ。
アイテムボックスのようなただのスキルとは別格だ。なにせ、これを創ったのは元神だからな
それから俺は亜空間に丸焦げのレギノアスをしまう。
「スゲー!!本当に消えちまった!!」
こういった類のものを見るのが初めてなのか、いくらかの冒険者は一瞬で消えたレギノアスに驚いていた。
まぁ、アイテムボックス持ち自体が少ないからな
このスキルを持つものといえば、勇者か王種ぐらいなものなので、人間が見ることはまず無かった。
「それじゃあみなさん!馬車に乗って今日のうちに戻ってしまいましょう!」
ギルマスはそう言って指示を出した。
なんというか、さっきまで命の危険に晒されていたのに、こうもあっさり切り替わるなんて、信じられんな
俺はその様子に関心しながら白を呼ぶ。
「白。俺たちも乗るぞ」
「うむ。妾、早くパフェが食べたいのじゃ」
そんな食いしん坊を連れて、俺たちも馬車に乗った。
***
それから俺は白と解体所まで行き、レギノアスを引き渡す。
その時に、ウォルガーが驚き過ぎて、顎を外すなんて事件もあったが、俺達は無事に初依頼を完了することができた。
「はーい。みなさん、これが今回の報酬になります」
ギルマスの指示でリリーは報酬をパーティーごとに手渡した。
「あなた達は今回の立役者として活躍したからね。これはその分よ」
ギルマスは何やら大きめの袋を渡す。中には金貨が10枚ほど入っていた。
日本円にして100万円。まぁ、そんなもんか
俺はそれをもらい白のもとへ行く。
「白、やったな。これだけあれば今日はご馳走だぞ」
白は袋を見て、何かいろんなことを想像しているようだった。
「さっきは悪かったな」
そこに、突然ルージスが頭を下げてくる。
「私も、ちょっと冷静さを欠いていたわ」
レベッカもルージスに続いて頭を下げた。
俺はそんな二人に少し驚く。
こいつら、俺のことを恐れていたんじゃ無かったのか?
「俺は、お前のような才能に嫉妬していたんだと思う。俺がいくら努力しても届かない位置にお前は立っている。いや、さらにその先まで進んで行く。それを俺は妬んでしまった」
ルージスが申し訳なさそうに話してくれた。レベッカもルージスの隣で気まずそうに聞いている。
「いや、俺はもう気にしていない。俺のことを話すつもりはないが、お前らにはいつか話すさ」
俺はそう言ってルージス達を許した。
「そう言ってくれると助かる。俺も、いつか話してくれる日を楽しみに待っているさ」
ルージスは顔を上げて、笑顔を見せてきた。
「ああそうだな。それに俺はここに来たばかりだ、これからお世話になると思う。よろしく頼む」
俺は微笑みながらルージスと手を握り交わした。
読んでいただきありがとうございます!
ここまでを第2章としました。今後もよろしくお願いします。




