出発
「お前、本当に知らないのか?」
ルージスは驚いたような表情で聞いてきた。
「俺は田舎の村出身だからな。あまり都市のことは分からないんだ」
俺はそう言って誤魔化した。
「まぁ、田舎なら仕方ないかしら」
レベッカはそう言って納得する。
ちなみに白はこちらの話なんて一切の興味を示さずに、来る途中でビアンカに買ってもらったお菓子を食べていた。
こいつの胃袋、どうなっているんだよ
俺は内心疑問に思う。
「で?魔導学院ってのはなんなんだ?」
それはさておき、俺はルージス達の方に思考を切り替える。
「その様子じゃ本当に何も知らなそうだからな。一つずつ丁寧に教えてやる」
そしてルージスとレベッカは順を追って説明してくれる。
「まずこの国、アークゲム王国は王族を中心に、貴族が国を動かしているんだが………そこはいいか?」
ルージスは一応という感じで、俺を見る。
この国、アークゲムっていうのか………今初めて知ったなんて言ったら、面倒くさそうだから言わないでおこう
「ああ、大丈夫だ」
俺は誤魔化して言った。
「その貴族様たちがよぉ、自国を守るために自分とこの後継を鍛えるってことで騎士学院ができたんだ」
ルージスは説明を続けた。
「ん?騎士学院?」
俺はそこに疑問を抱く。
魔導学院じゃないのか?
「まぁ最後まで話を聞け」
ルージスは続ける。
「本当はその騎士学院で魔法を教わっていたんだ。しかし、魔法が民衆にも浸透していくうちに、どんどん魔法が発展していってな、騎士学院だけではどうにも手が負えないもんだから新設されたのが………」
「私の通ってた、魔法学院ってことよ」
一番良いところをレベッカに取られて、少し落ち込んでいるルージス。しかしレベッカはそんなことを気にしない。
「魔導学院はね、私のような一般市民でも試験に合格すれば誰でも入れるのよ。だからあの子も2年後には入れるんじゃないかしら」
そう言ってレベッカは白を見る。
「無理だと思うけどな」
俺は即否定する。
「あら?魔法の才能はないの?」
レベッカは俺に尋ねた。
「いや、あいつは五系統全て使えるぞ」
俺の言葉に二人は目を見開く。
「「本当か(に)!?」
「ああ、ただあの感じだからな。一人で学校は心配だな」
俺は白を心配そうに見つめる。
「あなたは?何か使えないの?」
レベッカは俺に振ってくる。
「ああそうだぞ、ユウジがあの辺なスキルを使えるのは知っているがその他のことは何も知らない」
ルージスも俺に関して知りたいようだった。
「そうだな、でも俺もお前たちのことを何も知らない」
俺の言葉に二人は目を合わせる。すると、
「ははは、確かにそうだな」
「ええ確かにそうね」
二人は笑い出した。
「まぁ、これからちょうど良い機会だしね、そこで見せてあげるわ渡したいの実力」
レベッカは俺に対して笑みを浮かべる。その表情からは自信ありといった感じだった。
「おーい!」
そこでこちらに向かって手を振りながら、走ってくる人がいた。
「お!来たな!」
ルージスは誰が来たかわかっているようだ。
「はぁ、はぁ、すまねぇ。遅れたか?」
「いや、セーフだ」
息を切らしながら遅刻かどうかを確認するのは、30代前後のおっさんだった。
「ヨット、やっぱりあなたのその遅刻癖は治らないわね」
レベッカはヨットに呆れていた。
「そうだった、こいつは俺たち『牙狼』の最後の一人、ヨットだ」
ルージスは俺に紹介した。
「ん?ああ、お前がユウジであっちのなんか食っているやつが白だな」
俺は驚く。
なぜ俺たちの名前を………
ただ、ここ数日で知り合いの冒険者も増え名前も知っている者が増えていたのを思い出す。
「こいつの情報網はすごいからな、この町で知らないことはほぼ無いだろう」
ルージスは自慢するかのように話す。
「みなさん!全員いますか?」
そこでギルマスが出てきて、点呼を始める。
今回の討伐依頼に参加したのはAランクパーティが4つ、Bランク冒険者が2人、総勢17名での出立だった。
それぞれのパーティは馬車に乗り、俺たちはギルマスのもとへ向かった。
「今日はよろしくね」
ギルマスは俺たちに挨拶を交わして馬車に乗り込む。
そのあとを俺たちも乗り込んだ。
「では進めてください」
その合図とともに馬車は動き始める。
俺たちの最初の仕事が始まろうとしていた。
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