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「私だって、いい人かどうかぐらい分かるよ」


「だったらもう泣かないで、前を向いて考えて欲しい」


 直人は私から身体を離すと、じっと私を見た。


「俺のこと想ってくれているなら、俺の心残りがなくなるように協力して欲しい」


「心残りって、私のことなの?」


「そうだ。あさみのことだ。それから山本のこともな」


「だからって、山本君のこと好きになるとは限らないよ」


 私は頬をぷうっとふくらませながら、そう言い切った。


「いいよ、それで。あさみがいつもの元気のいいあさみに戻ってくれるなら」


 直人は私からそっと離れると、とびきりの笑顔で言った。


「俺、あさみのこと大好きだからな。元気でな」


 その時パチンと何かがはじけるような音がして、私は気を失った。





気がつくと、私は保健室のベッドで寝かされていた。ベッドのそばの椅子には山本君が心配そうな顔で座っていた。


「大丈夫か、高橋?」


「私、どうしたの」


「お化け屋敷の中で倒れてたんだ」


「山本君が運んで来てくれたのよ」


保健室の先生がにっこり笑って教えてくれた。山本君はちょっと顔を赤らめていたけど、直人の言葉を思い出した。


『山本のことも考えて欲しい。あいつほんとにいい奴なんだよ』



 すぐそばに山本君がいることを考えると、顔が少し熱くなった。


『さっき、直人に告白したばかりなのに、そういうわけにはいかないもん!』


 私は思わず、掛布団を鼻のところまで、掛けなおして、あんまり山本君を見ないようにしてたら、山本君から声をかけられた。


「あのさあ、高橋」


「うん、何?」


「実は笹木のことなんだけど、前、笹木から頼まれてたものがあったんだ」


 山本君はポケットから小さなお守りを出してきた。白地に四つ葉のクローバーが縫い付けてあるかわいいものだった。


「もし、俺に何かあった時にはこのお守りを買ってきて高橋に渡して欲しいって言われていたんだ。俺忙しくて、このお守りを置いてる神社に行けなかったんだけど、昨日行ってきたんだ。これ、あいつからの贈り物だと思ってもらってくれないかなあ」


「え、ほんとに?」


 突然、直人からの贈り物だと聞いてとても驚いた。


「それからこのお守り、中にその人にとって、大事な言葉が書かれてるんだってさ」


「へえ、そうなんだ。見てみようかなあ」


 私はわざわざ山本君が買ってきてくれたお守りの中をのぞいて見た。言われると中には一枚の紙が入っていた。読んでみると一言


『素直になるように』


 と書いてあった。


「素直に?」


 一緒にのぞき込んだ山本君は不思議そうな顔を浮かべていたけど、私は分かった。きっとこれがしるしの一つなんだってことが。



『そうだね、素直に生きよう!』


 私は直人を肌に感じながら、精いっぱい生きることを誓った。


(完)


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