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「ついにって、知ってたの? 山本君が私のこと好きなこと?」


「そりゃ、分かるだろ。見てれば分かるさ」


笑って言う直人に私はむっとする。


「生きてる時に言わなかったのは、そういうことなの。山本君が私のこと好きだから遠慮して言わなかったってこと?」


「別にそう言うわけじゃないよ。ただ言わなくてもあさみとは通じ合えているような気がしたからさ。だから言わなかっただけだよ」


そう言われて、私もそうだと思った。私もなんとなくいつも一緒で言わなくても分かるような空気みたいな、それでいてとても大事な存在。それが直人だった。でもやっぱり言葉で伝えないといけなかったのかもしれない。


「ねえ、妬かないの?」


「妬いてもしょうがないだろ。俺、幽霊なんだし」


にこにこしながら言う直人に、私はちょっとすねてみる。


「じゃあ、もし直人がまだ生きていたら、そうなった?」


「さあ、どうだろう。どっちにしろ、俺もあさみが好きだし、山本もあさみが好きなだけだろ。俺、山本だったらいいと思うんだ」


今まで笑顔だった直人の顔が急に真面目になって、私の顔を見つめた。


「何、そんな真剣な顔しちゃって」


 今度は私の方が茶化しながら笑ったけど、直人の目は笑っていなかった。


「俺、本気だよ。山本だったら、あさみをしっかり守ってくれると信じているんだ」


「そんな。直人はそばにいてくれないの」


「それができればいいけど、そうもいかないんだよ」


 直人は透けている自分の身体を見ながら、そう言った。もちろん、自分も無理難題を言っているのは、分かっている。でもようやく自分の感情に気づいて、言わなかったことを伝えられて、ほっとしたばかりだっていうのに、もう直人がいなくなってしまうのは寂しくてつらくてどうしようもなかったのだ。


「泣くな、あさみ」


 気がつくと泣いている自分に気づいた。私泣いてばかりだな。こんなんじゃ、直人成仏できないや。



「ありがとうな。そんなに想ってってくれて、俺うれしいよ」


 優しく包み込むように、直人は私の身体を抱きしめた。実体はないのに、なぜかその時だけ、直人がふんわりと私を包み込んだような気がして、私はびっくりした。


「いつもそばにいるよ。あさみが分かるように何かしらしるしを残すよ。その代り……」


「その代り?」


 私は顔を上げて、直人をまっすぐ見つめた。


「山本のことも考えて欲しい。あいつほんとにいい奴なんだよ」

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