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みんなには、直人の彼女だなんてからかわれたけど、そんなんじゃないと思ってた。幼なじみとして友達として、私は直人と一緒にいるんだと思ってた。それなのに彼が突然この世にいなくなって、私の心は混乱した。悲しい、寂しい、つらい。止まらない涙の向こう側で、私は直人のやさしい笑顔を思い出していた。好きだったのかな……。思わず心の中でつぶやいてしまう。


気がつくと、暗幕の裏側で、私は一人涙を流していた。この三か月の間でどれだけ泣いたことだろう。もう全部泣いたから平気と思ってたけれど、また不覚にも泣いてしまうなんて。いけない、いけないそう思って、私は竿につるしたこんにゃくを、自分の手元にたぐりよせて、次なる客に備えようとしたその時、目の前に白いものがふっと現れた。



『えっ、なになに! ひょっとしてこれってほんとに幽霊が現れたの?!』


怖さで目の前ものものを直視できないでいると、私の手に白い手が重なってきた。でも重さも温かさも何も感じない。


「あさみ」


いきなり呼ばれて、とっさに見るとそこにいたのは直人だった。死んだはずの直人が白い透けた身体でそこに立っていた。


『ゆ、幽霊! 直人の幽霊』


びっくりして竿が手から離れた。竿はからんと鳴って床に落ちていったけど、私の身体は驚愕のあまりしばらく動けなかった。


「あさみ、暗いところ苦手だろ。心配だからでてきちゃった」


直人は、見慣れた笑顔をふりまきながら、照れくさそうにつぶやいた。


「でてきちゃったって、それって成仏できてないってことだよね」



私はなんだか心配になってきた。直人は昔からお人好しのところがあるのだ。自分は犠牲になっても、他の人がいいならそれでいいっていう面がだいぶあった。ひょっとしてそれが、こんな事態を引き起こしているんじゃないだろうか。


「うん、たぶんまだ心残りがあるんだと思うんだ」



なんともないといった顔をしながら、直人は私のそばに寄って来た。身体は透けてはいるけど、直人は通学の時と同じ学生服のブレザーを着ていた。私の隣まで来ると、直人は落ちた竿を指さした。


「それ、拾わなくていいの」


「う、うん」


慌てて、竿を拾うと、こんにゃくをたぐり寄せた。


「それにしても暗いの苦手なあさみが、幽霊役をやるとは思わなかったよ」


茶化すように直人が言うと、私はぎくりとした。


「知ってるの?」


「そりゃ、知ってるよ。俺幽霊になってから、あさみのそばにずっといたから」


「え、ええ? えーーっ!」


私が絶叫すると、暗幕の向こう側で怖っがっている声が聞こえてきた。


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