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「きゃああああああ!」


突如悲鳴があがった。この声は瀬川成美の声に違いない。成美は学年の中でも美少女で通っている。しかしこんなに絶叫してくれるとは思わなかった。


ここは文化祭の催しでクラスで出すことになったお化け屋敷の中だ。私、高橋あさみは、お客を驚かすお化け役の裏方を買って出た。正直、お化け屋敷を催すと聞いた時は、嫌な感じがした。そもそも私は暗いところや心霊現象めいたものが怖くてしょうがないのだ。それなのにそんなものを催すことになるなんて……。


クラスでのお化け屋敷での役割を決めていくうちに、なぜか私がお化け役の裏方に決まってしまった。お化け役の子は数人いたけど、結構みんな張り切っていた。私はというと、ちっともやる気がないので、竿に糸をつけて、その先っぽにこんにゃくをつけたものを暗闇の中で、お客の頬にぺろんと投げつける役になった。この悲鳴も私の投げつけたこんにゃくによるものだった。ちょっとはモチベーションがあがりそうな感じになったが、暗幕の向こうからこんな声が聞こえた。



「成美ちゃん大丈夫」


「うん、大丈夫」


声の感じからして成美の彼氏の戸田和弥らしい。


「ほんとに平気」


「大丈夫。だって和弥がいてくれるから」


二人がひしと抱きしめあっている感じが暗幕の裏側から分かる。


なんだ、なんだ。結局そういうこと。私のこんにゃくの出し具合がよかったわけじゃなかったんだ。もういちゃいちゃしたいのなら、どっかよそに行って欲しいよ。顔が熱くなるのを感じながら、文句を言いたくなった。その時だった。成美がこんなことを言った。


「ここの教室の子でしょ。数ヶ月前に亡くなったのって」


「ああ、笹木直人だろ」


「夕方校舎を歩いてると、彼の幽霊がでるんだってうわさだよ。怖くない?」


「俺は幽霊を信じないから」


「でも今のつるんとした感触とか、霊気かもしれない! ど、どうしよう、ほんとにでてきたら」


「大丈夫。俺が成美ちゃんを守るから」


二人はいちゃいちゃしながら、次の通路へと進んで行ったけど、私は何とも言えない気分になった。



笹木直人は私の幼なじみで、三か月前に急性白血病という病気で、十四歳という若さで突然亡くなってしまった。本来の私なら、幽霊と聞いただけですくみあがってしまうけど、直人の幽霊だったら、平気かもと思った。怖くないよ……。直人の幽霊だったら。子供の頃からサッカーが好きで、高校に行ってもサッカーをやるんだと息まいていた直人。幼なじみだから、直人のでる試合には何度も足しげく出かけて応援した。


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