アーズガルドへご案内
とある暗い夜、平凡な高校生 山田瞬は偶然川で水浴びをしていたワルキューレの一人 レギンレイヴの羽衣を手にし、再び来る神話大戦 ラグナロクの戦士に選定されてしまったのであった。
「あの、困ります。」
山田瞬は困っていた。
隣にいるスタイル抜群のとても麗しい女性 レギンレイヴに。
「何を困っている?」
不思議そうにレギンレイヴは聞く。
「その戦士辞退できないですか?
僕にはその世界の行く末を決める大事な戦いに勝てませんよ!!」
「辞退は出来ない、神の決定は絶対だ。
揺るぐことはない。」
「そ、そんな!困りますよ!
僕一週間後に大事なテスト控えてるんですから!」
「安心しろ、ミッドガルド(人間の世界)からアーズガルドに貴様を転移しても時間は進まん。
世界を救って戻ってきたら今日のままだ。」
「でも‥僕には無理です!」
「む、困った主人だな‥。」
レギンレイヴが瞬相手に困っていると突如空間が歪み始めた。
「‥!?
瞬そうもしていられないみたいだ。」
異変に気付いたレギンレイヴは刀を抜き身構える。
「な、なに‥あれ?」
歪んだ空間から例えようがない異様なモノが禍々しいオーラを纏い現れた。
「さしずめ、ロキの手下だろう。
今の私でも抑えることが精一杯だ。」
「え、倒せないの?」
「あぁ、私の力の半分以上貴様に移ってしまった。
倒すのは、そう、お前になるな。」
ははっとあどけない笑いを浮かべるレギンレイヴを尻目に敵が攻撃を仕掛けてきた。
ガキィンと爪と刀がぶつかり合う重い音が空を裂いた。
ビリビリと瞬の体に迸る。
「無理だ‥倒せない‥。」
突如、死の恐怖が瞬を襲う。
冷や汗と動悸が止まない。
チッとレギンレイヴは舌打ちし、爪を刀で受けながら蹴りで先制しよろけた隙を見て素早く瞬を抱えその場を去った。
恐怖のあまりうずくまりなきじゃくる瞬を見て、レギンレイヴは申し訳ない気持ちが襲った。
「瞬、怖いか?」
無言で瞬は二回うなづく。
「すまなかった、これも神の御意志によるもの私には到底破ることはできない。」
懐から短刀を取りだしたレギンレイヴはスッと瞬に手渡した。
「この剣でわたしを刺し殺せ、さすれば契約も切れ瞬も戦士の選定から外れるだろう。」
「そ、そんな僕には殺せません!
他に別の方法が!」
「思い当たらない、姉様は自ら死んで契約をお切りになった。」
悲しげに瞳を下ろした。