∬酒電の勝女 共通①
――この世界では和、洋石、茶華、酷寒、荒瓶、難極、獲時伏巣。
七つの領地が華のように連なっている。
――今から数十年前、和の領地では大酒飲みで屈強な男が猛威をふるっていた。
人を苦しめたとされる‘シュデン’という男は妖怪と呼ばれ歴史に名を残した。
のちに他の領地でからやってきた男に倒される。
いくつもの村が衰退したが、人々はそれを復興していく。
妖怪の驚異を忘れた頃、新たな問題が和の領地を襲っている。
シュデンと相打ちになった男の領地である荒瓶の王が率いる軍が侵略に来るというのだ。
■■
「失礼いたします」
私は帝から密命を受け、忍びよりも忍びながら人払いのされた部屋へ入る。
「参ったか……そなたは朱天雅芽であるな?」
――御簾越しに、高貴なる男の影が見える。
「は……まごう事なく、その者でございます」
問い掛けに間を作らず答える。
「幼き頃に一度は目にしたことがあったな」
たしかに一度、遠くから姿を拝見したことがある。
宮中の女房である母とともに奉公の手伝いをしていたからだ。
その年頃に帝王となる者や貴族の男女は必要な勉学を叩き込まれるので、休憩で窓を眺めていたのだろう。




